鳴門 | ナノ
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95.


「ゴホッ、ゴホッ」
「トビさん!」

激しく咳き込むオビトの身を案じる声が聞こえたかと思うと、ゲンマに支えられながらこちらへ駆け寄ってくるなまえの姿が視界に飛び込んできた。

「なまえ? なぜ……」
「確かにあなたの目的の協力は出来ないけど、今までの恩までなかったことにするつもりはないんです。とにかく、この戦いが終わるまで私があなたの命を預かります。繋ぎの力なら尾獣を抜かれててもしばらくは持ちます」
「その必要はないよ。十尾の人柱力は尾獣を死ぬことはないみたいだからね」
「……ほ、本当ですか?」
「ああ。俺の中の九尾が教えてくれたんだ」

先生がにっこりと微笑みかけると、なまえは良かったぁ……と深いため息をつきながらその場にへたり込んでしまった。神威の時空間から左目を通して見ていたが、あれだけ繋ぎの力を多用していれば限界を迎えるのも無理もない。むしろゲンマの手を借りたとは言え、気力だけでここまでたどり着いたことを褒めるべきだろう。

「君が今世の人繋ぎだね?」
「え? あ……はい。不知火なまえと言います」
「不知火?」
「あー、妹です。俺の」

気恥ずかしさからか、心なしか口ごもったゲンマの一言に先生は目を瞬かせた。大方、ゲンマが見ず知らずの子どもを妹として引き取ったことに驚いているのだろう。何せ、情に厚い一面があるとは言え、自ら進んで面倒ごとを抱え込むイメージのないコイツの選択には周りも呆気に取られたくらいだ。

「そうか……ナルトやオビトの心の中を見て、君にお礼を言いたいと思っていたんだ。オビトの傍にいてくれてありがとう」
「い、いえ! むしろ感謝しているのは私の方です。トビさんが人繋ぎのことや繋ぎの力の使い方を教えてくれたから、私は大切なもののために戦える。他に優先したいものがあったから敵対しちゃったけど、トビさんも大切であることには変わらないんです」

時折詰まりつつも自身の心内を口にするなまえの言葉に耳を傾ける先生はゲンマから妹の存在を打ち明けられた時と同じような顔つきになったかと思うと、嬉しさを前面に押し出した笑みへと変わりゲンマの方へ振り向いた。

「血の繋がりがなくてもここまで似るのは君たちが心から信頼し合ってるからかもしれないね。なまえみたいな子が妹で、君も誇らしいんじゃない?」
「ここで頷いたらシスコンだっつって揶揄うんでしょ……ったく。それに、胸を張ってあんたの言葉を受け入れられるほどなまえに兄貴らしいことなんて出来てないんですよ。それこそ、聞けば聞くほどオビトの方がよっぽど──」
「君がそんなことを言う時が来るなんてね。ん! 思ったよりずっと兄らしくて安心した」
「割り込んで悪いけど、ナルトたちのことも心配だし俺は行くよ。先生、オビトを見張っててください」

遠くの方でナルトの術が炸裂した音が聞こえ、弱り切ったオビトを置いていくのも気が引けるが全てが終わったわけじゃない今の状況でいつまでもここにいるわけにもいかない。

「なまえ、お前もここにいろ。ゲンマ、なまえを頼むぞ」

それぞれが頷いたことを視界の端で確認し踵を返そうとしたところで今にも消え入りそうな声に呼び止められ、再び視線をオビトへと戻した。

「この術はかつて俺が利用しようとした男が俺を裏切った手段だ。自分が同じことをするとは思いもよらなかったがな」

暁のリーダーとして木ノ葉の里を襲い、最期はナルトと心を通わせることでオビトと袂を分かったペインが多くの人を蘇生するために自らの命と引き換えに使用した術。つまり、それを使えばオビトは。

「受け継がれた人の想いがいつしか強い力となる……長門が裏切った理由も今なら分かる気がするよ。俺は長門やナルトの師であり、あなたを火影として育てた自来也に負けたとも言える。先生の弟子であったにも関わらず夢を諦らめ、繋ぐべき想いを切った俺はリンに合わせる顔がないな」
「……本当に良いのか? 生きて償うことも出来るんだぞ」

首を横に振ったオビトの意思は固く、ならば俺たちに出来ることは彼の選択を尊重し最期を見届けてやることくらいだろう。
印を組んだオビトがなけなしのチャクラを込めようとした瞬間、地中から突然現れた黒い手がその体をきつく押さえ込んだ。

「悪イナ、オビト。俺ハコノタメニイタヨウナモノナンダヨ」
「黒ゼツ! ぐっ……なまえを、 なまえを俺から離せ!」

黒ゼツの体が血管のように細かく枝分かれしオビトの全身を絡め取っていく中、辛うじて絞り出されただろう声にいち早く反応したのはゲンマだった。地面を蹴り上げ、オビトの傍に膝をついてたために同じく飲み込まれそうになっているなまえを抱え込むと尻もちをつくようにその場から飛び退いたのだ。
ブチブチと耳障りな音を立てながら千切れるそれを見やり、オビトの忠告やゲンマが動き出すのがあと少しでも遅かったらと考えると、背中冷や汗が伝った。

「なまえハ逃シタカ……マア、計画デハモット後ノツモリダッタカラ問題ナイダロウ。サア、オビト!」

外道・輪廻転生の術、とオビトの声に黒ゼツのそれが被さった次の瞬間、遠くの方で起こった爆発による振動がこちらまで伝播し、足元をグラグラと揺らした。

「何をした!?」
「マダラが……生き返ってしまった……」
「コレデオ前ハ用済ミダ。最後ニ左目ハ返シテモラウ」

黒ゼツの手が輪廻眼へ届く既のところで先生とともに防ぎはしたものの、半身を自身の体で塗りつぶした黒ゼツはオビトごと素早く飛び退き、俺たちと距離を開ける。

「コイツモ俺ガトリ憑イテル間、少シハ長持チスルダロウ」
「……君は何者だい? 人ではないね」
「俺ハマダラノ意思ソノモノダ。邪魔ヲスル者ハ排除スル」
「黒ゼツ、お前のことは捕らえたと聞いていたが……」
「コイツモオ前タチモマダラノ計画ヲ甘ク見スギダ。俺ノコトモナ」
「でも、融合するのも地中を伝って自由に移動するのも本来は白ゼツの能力のはず」
「俺タチハ場面ニ合ワセテ役割リヲ分担シテイタニスギナイ。ソモソモ、元ハ一ツノ体ダッタノニナゼ俺ニハ使エナイト? オビトガ死ヌマデノ間、コノ体ヲ使ッテオ前タチト戦ウ。最期クライ役ニ立ッテモラワネバ」

そう言うや否や、黒ゼツに覆われていない側のオビトの半身がボコボコと大きく歪み始め、そこから巨大な石像が生み出された。尾獣を取り込み、十尾になったはずの外道魔像だ。

「カカシ、行けるかい!?」
「やってみます! ゲンマ、なまえを頼むぞ──神威!」

黒ゼツの侵食から自力で抜け出せなかったことからも分かるように今のなまえには戦うどころか、相手の攻撃を回避する体力すら残っていない。そんな状態で一人にするわけにもいかず、ゲンマに傍から離れないよう念を押し、外道魔像に焦点を合わせ万華鏡写輪眼を発動した。だが──

「やったかい!?」
「……どうやら失敗したようです」
「アトハコイツノ左目ヲ頂クダケ──! チッ、マダ抵抗スルツモリカ。コノ目モアルベキ場所ヘ戻ル時ガ来タノダ。オ前ガ持ッテテ良イ代物デハナイ!」
「そうはさせない……右目はすでに隠し終え、左目は今ここでカカシにつぶさせる!」
「残念ダッタナ。右目ハ白ゼツガ見ツケ、スデニマダラ様ニ渡ッタ。死ニゾコナイガ邪魔ヲスルナ!」
「なら、さっさと離れろ。俺が死んでから輪廻眼を取れば良いだろ」
「離レタ途端、俺ハコイツラニ命ヲ取ラレルダロウ。暁デノ俺ノ役割リヲ忘レタカ? コイツラノ力モ分析済ミダ!」

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