鳴門 | ナノ
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93.


神威の時空間から戻ってくるやいなや十尾を取り込み、人柱力となったトビさんの結界が私たちの逃げ道を塞ぐ。無限月読に備えてか新たに口寄せされた神樹の芽から四つの蕾がほころび、それぞれが高濃度のチャクラを溜め始めた。

「こうなったら飛雷神で結界の外へ飛ばすしかない! 四代目、二ついけるか?」
「マーキングが出来ない以上、一つが限界です。別の方法を試します」
「木ごと外へ飛ばすつもりだろうが、させると思うか? 結局、あんたは誰も救えない」

(もう一度、繋ぎの力で結界を……)

完全に打ち消すことが出来なくても、零れた分は二代目が言うように飛雷神の術で結界の外へ飛ばしてしまえば良い。人繋ぎの宿命に縛られていてある程度の無理は利くはずだからと再びチャクラを込め始めた次の瞬間、まるで心臓をわし掴みにされたかのような激しい痛みが全身を襲った。

「! うっ、ぐ……っ」
「繋ぎの者よ。いくらワシらと寿命の概念が異なるとは言え、あまり無茶を重ねるな。簡単には死なないと言うだけでそれに値するだけの苦痛がなくなるわけではないのだからな」
「なまえ、ここは俺に任せてくれ。父ちゃん、俺に考えがあるんだ! 拳を合わせてくれっか?」
「ナルト、お前の母も己の部下も守れなかったそいつに出来ることなどない。明日が何の日か知ってるな? ミナトとクシナの命日だ。所詮、この世は死ねば終わりだ」
「なら明日は俺の生まれた日だ。終わりじゃねえ、俺がこの世にいる!」

拳を合わせたそれぞれが九尾のチャクラと一体化したかと思うと、皆の体が再びチャクラの衣に包まれていく。しかも、さっきよりも力強く、大きく。

「行くぜ、父ちゃん!」
「ああ!」

目を開けていられないほどの衝撃が目前まで迫る中、ふと覚えのある浮遊感に包まれた。瞬く間に神樹が遠ざかっていき、一斉に放たれた尾獣玉が爆発を起こし、結界を大きく歪ませたころには一人残らず外側へ脱出することに成功していたようだった。
あの感覚は紛れもなく飛雷神の術で、けれどナルトが使えるはずもないから四代目の仕業なのだろう。前もって分け与えてあったナルトのチャクラを介して四代目が術を使ったと言ったところだろうか。

「いくら足掻こうと、お前たちの行き着く先は変わらないと言うのにな」

結界が消えると、淡々と印を組むトビさんの背中から取り込まれたはずの十尾が吐き出され、背後の神樹を飲み込みながら瞬く間に成長していく。やがて、一本の大木と化したそこから伸びた無数の枝が何かを求めるように不自然な動きを見せ始めたところでゾク……ッと悪寒が背中を駆け上った。

「ゲンマ、私から離れないで」

ギシギシと激痛を訴えながら軋む体に鞭打ち、チャクラを練り上げる。

「なまえ? 一体何を……」
「こいつ、チャクラを一気に吸収しちまうぞ! 逃げないと死ぬ!」
「一人一人確実に生きてる俺たちを狙ってくる!」
「なっ!?」
「あれは九尾のチャクラじゃどうにもならない。早く手を打たないとこのままじゃ全滅する!」

十尾を下地にしているのなら、繋ぎの力で対抗出来るはず。

「糸分身の術」

今のチャクラ量でどこまで持つか分からないけれどこの状況で出し惜しみしていても仕方がないと、繋ぎの力そのもので生成した分身を可能な限り召喚し、神樹へと向かわせる。人を感知するなりさらに細かく分岐する枝の根元へたどり着いた分身体を起爆させるように糸縛りの術を発動させると、予想どおり神樹はその動きを鈍くさせた。

「後ろは私が死守します! 皆さんは前だけを見てあれから離れることだけを考えてください」
「なまえ、なぜ足掻く? お前たちは十分耐え忍んだだろう。抵抗しないなら殺しはしない。後悔したくなくば、もう何もしないことだ」
「何もしなければ、助かるってことか……」
「そうだ。もう死に怯え、耐え忍ぶこともない。夢の中へ行ける」
「ここで諦めたら今までの犠牲が無駄になる! それに、意志を失くしてまで生かされるなんて私は御免です!」
「繋ぎの者の言うとおりだ。幻術の中に落ちれば死人も同然ぞ!」

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