鳴門 | ナノ
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82.


「あそこか」

口寄せした外道魔像に邪魔な奴らを一掃させつつ辺りを見渡していると、目当ての忍具の傍で立ち尽くすなまえの姿が目に留まった。
まとう雰囲気が不安定に揺れている。覚醒して間もないこともあり、微かに残っているなまえ自身の意識と人繋ぎの自我がせめぎ合っていると言ったところか。それとも何かをきっかけに人繋ぎの自我に融け込んだはずのなまえの意識が表層に引きずり出されたか。

(まあ、どちらにしろ関係ないことだが)

ズズズ……と時空間を渡り忍具の目の前に降り立つと同時になまえの肩に右手を乗せると、ハッとした様子でこちらを振り返った。

「マダラさん……」
「お前は紅葫蘆を回収しろ」

なまえが口を開くよりも早く二人の忍がクナイを構えながら飛びかかってくる。
横に飛び退きながら相手の首裏に手刀を落とし、チャクラ糸で紅葫蘆を自らの手元に引き寄せるなまえを視界の隅に捉えつつ、もう一方の忍を透過させすっかり無防備になった琥珀の浄瓶に手をかけた。

「その忍具は渡さねーよ!」
「欲しいのはこの中のものだ。そんな欲しければ忍具は後で返してやる─────! 連合にも鋭いのが多少はいるようだな」

これは奈良一族の影縛りの術だったか。

「最前線で利用するだけ利用した後、封印したデカイのごと金角・銀角の九尾チャクラを回収する……なまえがやろうとしていたことだ。さしずめお前はなまえが失敗した時の保険と言ったところだろ?」
「……お前、敵にしておくには惜しい男だな」

なまえの行動が前提にあるとは言え、混戦を極めるこの状況下で良くもそこまで頭が回るものだと敵ながら感心する。だが、俺の動きを封じるだけに留まっているようでは所詮は平和ボケした木ノ葉の忍でしかない。

「やれ! なまえ」
「チッ……おい、なまえ! お前、まだ迷ってんじゃねーのか!? これ以上堕ちたらゲンマ先輩とも会えなくなる……お前だって自分の望みが何なのか、本当はもう分かってんだろ?」
「無駄だ。お前や俺が言ってどうにかなるくらいなら初めからこんなことになっちゃいないさ。そうだろ? なまえ」
「、……っ」
「けどな、さっきも言ったようにアイツとの約束もあるからよ。だから、お前のことは力づくでもこっち側に引き戻してやる!」
「……っ、私の望みは人繋ぎの意志を全うすること。木ノ葉に戻ることでも、あなた達と一緒にいることでもない!」
「フン、それで良い」

俺の影を踏みつけるように間に割って入ったなまえは裁切りを発動させたかと思うと、続けざまに一気にチャクラを練り上げた。そして───

「水遁・爆水衝波!」

一際高く打ち上げられた水の壁が奴らの視界を遮り俺たちの姿を覆い隠した瞬間、外道魔像と共にこの場から離れたのだった。

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