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83.悲劇の溝


「具合、どうですか?」
「ゲンマか。ま! ぼちぼちってところかな……そんなことより、わざわざ見舞いに来たってことは何か用があるんでしょ?」
「まあ……療養中のところ悪いですけど、一つ頼まれてくれませんか?」

風影の奪還任務の後チャクラ切れで病院に担ぎ込まれたカカシさんの元を訪れたは良いものの、どう切り出すべきか迷っていたからちょうど良い。ベッド脇まで歩み寄り、ひと振りの千本を差し出した。

「これは?」
「なまえが昔使っていたものです。たったの一滴で良い……それでアイツの血を採ってきてほしいんです」
「……一体何を考えてる? こんなもの出してきて、納得のいくそれなりの理由があるんだろうな」

眠たげな目が途端に鋭さを帯びてこちらをまっすぐに射抜く。やはり訳も聞かずに頷いてくれるはずもないかと、溜め息を一つ零しやけに重たく感じる口を開いた。

「別に諦めたわけじゃない。俺は最後までアイツの説得を続けるつもりです……でも、どうにもならない時もあるでしょ」

どんなに前向きな言葉を口にしていても結局は最悪の結末を想定して動く俺も、たった一言で全てを察してしまうカカシさんも、忍の世界に長いこと身を置き過ぎたのかもしれない。俺たちは現実が目を背けたくなるくらい残酷であることを嫌というほど経験してきた。

「もし、そうなったら俺の手で終わらせたい。誰にも邪魔されたくないんですよ」

分かったよ。だからそんな顔するな、と困ったふうに笑うカカシさんはそれ以上追及することなく俺の頼みを引き受けてくれた。
そうやって、兄の役目を散々口にしておきながら信じてやらなければならない存在を自らの手にかける準備を進めていく。







「白ゼツがばら撒かれた以上、敵意を感知できるナルトが出て来ざるを得なくなった。そうなったらキラービーだけを隠し続けるとは考えにくい。お前はそこを狙え」
「……」
「いい加減覚悟を決めろ……と言ったところでどっちつかずなのが人繋ぎというものだ。ならば暁側で動き続けることで無理やりにでも気持ちに整理をつけろ。月の眼計画がお前の目的に通じることは変わりないんだからな」

ナルトやキラービーの気配をたどりながら、僅かな月明かりを頼りに森の中を駆け抜ける。
おそらく結界を破っただろう瞬間は二人の位置を確かに捉えていたのに、ナルトの気配だけがあっという間に各地へ散らばっていった。影分身だ。分身の術と違い、チャクラを均等に振り分ける影分身の術では本体を見つけるのも一筋縄ではいかないだろう。

(最後は勘に頼ることになっちゃうか)

それなら、ここから一番近い戦場へ。
集まっている人数も特に多いみたいだから戦況を確かめるにもちょうど良いかもしれない。自分の中でそう結論づけて、一気にスピードを上げた。

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