鳴門 | ナノ
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81.


親父の話では九尾チャクラを解放した敵が暴れ回っているはずだったんだが。ひたすら足を動かしてようやくたどり着いてみると暴れただろう形跡はあるものの、本体は何本ものチャクラ糸によってその場にガッチリと縛りつけられていた。

「まさかあの糸って……!」
「いの、何か知ってんのか?」
「ハァ……やーっと来たね。いの」
「なまえ!? なんでお前が……ってかこれは一体どう言う状況なんだ?」
「悪いけど、詳しく説明してる余裕はないの。いの、とりあえず私が合図したら心転身の術であいつの中に……後のことはシカクさん辺りから聞いてるでしょ?」

もし、あの糸が俺の影真似と同じようにお互いのチャクラ量によって威力や持続時間が変わる術だったとしたらなまえの言う通り呑気に話している場合じゃなくて当然だ。疑問が尽きることはなく警戒しておくに越したことはないが、今は横に置いておくしかない。戸惑う様子のいのと目を合わせながら無言で頷いて見せると、いのも頷き返したと同時に印を組んだ両手を前へと突き出した。

「よしっ、行くよ!」

途端、金切り声を上げ始めた糸が食い込み見えなくなるくらいまで金角の全身をきつく縛り上げると───

「糸縛りの術!」

次の瞬間、糸と一緒に赤いチャクラが一気に弾け飛んだかと思うとザーッとまるでさざ波のように霧散していき、

「いの!」
「……入った! 心転身の術、成功!」
「よしっ、ダルイさん!」
「分かってる。金角!」
「はい!」
「戻れ、いの!」

成り代わったいのが返事をしたことで金角の体はダルイ隊長が構える壺へ吸い込まれて行き、いのも絶妙なタイミングで自身の体へと戻り、トドメと言わんばかりにバタンッとダルイ隊長の手によって蓋が閉じられたことで金閣と銀角、両者の封印に成功したのだった。だが、気を抜くにはまだ早い。

「影真似の術!」
「……!」
「ちょ、ちょっとシカマル! いきなり何して……」

素早く伸ばした影でなまえを捕えた途端いのから非難の声を投げかけられたが、一瞬の隙を狙うならここしかなかったのだ。

「お前がいきなり心変わりしてこちら側につくとは思えねーからな。目的が何にしろ捕まえちまえば何も出来ねーだろ!」
「勘の良さは相変わらずだね。真っ先に動くとしたらあなただと思ってたよ、シカマル」

自分のことも俺のことも正しく認識しているのに、どうにも拭い切れないこの違和感は何だ。一際強く思うのは不自然なほどの敵意のなさだ。葛藤を抱えながらも暁として俺達に向けようとしていた今までのなまえとは対照的に目の前のこいつからは何も感じない。ひどく穏やかで、まるで凪いだ海のような。

「お前……誰だ?」
「誰って、なまえだよ。あなた達がそう呼んだんでしょう?」
「惚けんな! もしかしてお前はあの時の……」
「どの時のことを話してるのか知らないけど、あなたの疑問を一つ一つ解消してあげられるほど暇でもないの。とりあえずダルイさん、その忍具二つともこちらへ渡してもらえますか?」
「何だと?」
「やっぱりか! クソッ……」
「やっぱりってどう言うこと?」
「こいつの目的は最初から九尾のチャクラだったってことだ! 手っ取り早く封印出来る忍具を持っていたからこちら側に手を貸したんだろ。封印して無力化しちまえば楽に運べるからな?」

ニィッとなまえの口角が上がる。

「当たり。ナルトが見つかるまでまだ時間がかかりそうだし、見つかっても簡単に捕まるとも思えないしね? 今更尾獣が揃わなくて計画が進みませんでしたーなんてなっても困るし、とりあえずの代替え品ってところかな」
「そう思い通りに事が運ぶと思うなよ!」
「そっちこそ。ごめんね? シカマル」

瞬間、ぷちんっと縛っていたはずの影が呆気なく切られた。

「なっ!?」
「シカクさんから聞いていなかった? 裁切りって言うの。それと……水遁・滝壺の術!」
「! うっ……」
「アスマーーーッ」

自身を中心に勢いよく湧き出した大量の水が瞬く間に俺達を押し流して行く。壺を守るようにして立っていたダルイ隊長も、背後から迫っていたアスマでさえも。

「そう何度も後ろは取らせませんよ?」
「チッ……火遁・灰積焼!」
「水遁・水龍弾の術」
「……滝壺の術で十分な水量を満たし、水龍弾に繋げる。中忍試験の時から思っていたが術の連携の巧さは相変わらずだな」
「……」
「あの時、お前が庇ってくれなかったら俺もお前達の側に立ってこいつ等と戦わされていたかもしれない。だからこそお前には感謝してもし足りない。俺は一生を懸けて借りを返して行くつもりだ」
「そんなこと誰も頼んでいませんよ。運良く拾った命なら自分のために使えば良い」
「そう言うわけにも行かねーのさ。ゲンマにも大口叩いて来ちまったからよ」
「っ、……ゲンマ……?」
「!」

なまえのまとう雰囲気が揺らいだような気がした。紛れもなく俺達の知るなまえだと直感で分かる。

「口寄せの術……」

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