鳴門 | ナノ
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80.


「ああ、なまえ。目が覚めたんだね。気分はどう?」
「何だか不思議な感じです。まるで長い夢でも見ていたかのような……」
「ふーん? でも、しばらくしたら治るんじゃない? 起きたばっかりだし」
「……それより、今の戦況は?」
「カブトの穢土転生と五影を中心とした忍連合軍が各地で衝突しているよ。今は向こうの方が優勢かな?」
「尾獣の回収は?」
「八尾と九尾はまだだよ。どこかに身を隠してるあいつ等を引きずり出すために今は黒ゼツが大名を探してる」
「そうですか。なら、私も動きます」
「どこに行くの?」
「少し気になることがあるので、行ってみようかと」

ぼんやりとした意識がはっきりとしてくるに連れて、外の気配が手に取るように分かる。見知った気配があちらこちらで何かとぶつかり、消耗されて行くのが。今までと明らかに違う感覚こそが彼が言っていた人繋ぎの力の完成した一部なのだろうか。

「気になること?」
「はい。ゼツさん、トビさんに伝えといてもえますか?」
「うん?」
「今から戦場に出ます。何かあれば結びの力で連絡を」
「ふーん。何かよく分かんないけど伝えとくよ」

ゼツさんの言っていることが正しいならナルトの気配を感じ取れなくて当たり前なのに、微かにだけど九尾のチャクラを感じる。そこに何があるのか、もしナルトがいるなら捕まえてしまえば良いし別の何かだったとしても代わりになるのなら確保しておくことに越したことはない。

「それじゃ、ゼツさん。よろしくお願いします」
「うん。なまえも気をつけてね?」







ダルイにはそれが暁に属する者の仕業であることしか分からなかったが、敵であるはずの者の手によって自分が助けられたことは確かだった。尾のたった一振りでここ一帯の地形を変えてしまうほどの威力だ。もし彼女、もといなまえがチャクラ糸で金角の動きを止めていなければ自分の体は粉々になっていてもおかしくなかったのだから。

「お、お前は!?」

なまえが口を開くよりも先に割り込んできた黄ツチの拳が金角の腹にめり込み、僅かではあるもののお互いに距離を取る。咄嗟のことで込めたチャクラの量が多くなかったのか、それとも元々強く縛る気がなかったのか、どちらにしても黄ツチの一撃と同時になまえの体から伸びる糸はブチブチと嫌な音を立てながら一本残らず千切れ、やがて霧散した。

「暁め……敵地のド真ん中にノコノコとやって来るとはな?」
「待ってくれ、黄ツチさん! そいつは俺のことを助けてくれたんだ!」
「何だと?」

敵じゃないのか。黄ツチがそんな目で睨みつけるが、なまえは否定も肯定もすることなくただ一瞥を投げただけだった。

「琥珀の浄瓶……私の力なら尾獣のチャクラを抑え込めます。その隙にその中に金角を封じてしまえば良い」
「ダルイを庇ってもお前は暁だ。敵の言葉など信用出来るか!」
「信用しろとなんて言ってませんよ。ただ、今は私の目的とあなた達の望みが一致しているから手を貸すと言ってるだけです。事が済んだら私を殺せば良い……出来るものならね?」
「何だと!」

共闘を申し出ている割にはずいぶんと挑発的な口振りに青筋を立てた黄ツチを制したのはダルイだった。黄ツチの前に左腕を伸ばしながら一歩前に出たダルイはじっとなまえの顔を見据えると、慎重に口を開いた。

「これ以上の被害を出さないためにも一刻も早く金角を封印したいと言うのが正直なところだ。だが、俺達は消耗し過ぎた……力を貸してくれるか?」

こちらに怯むことなく真っ直ぐに見つめ返してくるなまえが悪だとは思えなかった。先ほど助けられたこともあるが、何よりなまえから明確な敵意と言うものを感じなかったからだ。信用するなと断言している以上、事が片づけばこちらに刃を向けてくるかもしれない。だが、今言ったことは事実で、ならばなまえに歩み寄ってみようと思った。

「私がチャクラ糸で彼を人の姿に戻すと同時に動きを止めます。合図をしたら壺を開けてください。そのまま中に閉じ込めます」
「しかし、封印するためには瓢箪と同じく相手が答える必要がある」
「私に考えがあります」
「分かった。タイミングはお前に任せる」
「……なまえ」
「?」
「私の名前です」
「俺はダルイだ。頼んだぞ? なまえ!」

フッと笑みを浮かべたのは同時だった。そして、コツンと片腕をぶつけ合ったのも。

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