始めに白の動きを止め、再不斬と一騎打ちとなったところで雷切をまとった右手をその胸へと突き立てた。同時にダンッと相手の影を踏みつけ、後ろに控えているエンスイとマキに向かって声を張り上げた。
「よしっ、この札がある限り口寄せは出来ません! この二体は私が監視しておきます!」
「サイ、次はお前の根の封印術を使う。俺に続け!」
「で、でもあの術は僕にはまだ……」
「ダンゾウがお前を買っていたのは確かだろ? もう感情を抑える必要はない!」
二人がそうだったように俺にも忍として守るべきものがある。残された首斬り包丁を振り上げ、柄を握る右手に血管が浮き出るほどの力を込める。
「ま、俺も熱くなるまで時間のかかる方だが今回は久しぶりに沸点が低かった。千の術をコピーしたコピー忍者のカカシ、これより通り名通り暴れる!」
なまえに会う前にやるべきことが出来た。穢土転生の術者にたどり着くまで、あの子は待っていてくれるだろうか。
各地で文字通り命を削り合う戦いが繰り広げられているだろうが、俺達の周りはどこか平和な空気がゆっくりと流れている。
「良い勲章の名を思いついたぞよ! 火の国木ノ葉隠れの里及び・風の国砂隠れの里及び・土の国岩隠れの里及び水の国霧隠れの里及び・雷の国雲隠れの里、忍連合軍勲章と言うのは?」
「長い! それならば忍連合軍勲章で良いではないか?」
「いや、それではあまりにも略し過ぎて威厳がないと思うが?」
「そもそも何で火の国の名が最初につくのだ? ズルいではないか!」
その理由はこうして俺達の足下で交わされる大名達の賑やかな会話に他ならない。とは言っても、それを悪いことだと言うつもりは更々ないが。
「大名達は呑気なもんだな。勲章なんてもらったところでだが」
「それが彼等の仕事だ。それに勲章を馬鹿にすんなよ? 勲章がなくなっちまったら何が名誉なのか分からなくなっちまう。その基準は誰かが決めねーとな」
とは言いつつも、ライドウの言いたいことも分からないでもない。俺だって本音を言えば大名の護衛なんかよりも向かいところがあって、探したいやつがいる。
「やはりなまえのことが気になるか?」
「……いや、」
「俺にまで強がる必要はない。お前が前線に出たがっていたことは知っている」
「今までなら風影やアスマさんのこともあって暁にいても見逃されていたが、戦争が始まっちまったことでそうも言ってられなくなったからな」
今までは周りの批難をはね除けられる材料があったから拘束ではなく保護で押し通してこられたのだ。だが、戦争を仕掛けてきた組織の一員となったらいくら今までの功績を持ち出してきたところで例え火影だったとしても庇い切れないことは火を見るより明らかであり、恐らくこれが最後のチャンスに違いない。被害が小さい間にこちら側へ引き入れることが出来れば。
「英雄とまでは言わないが、今まで敵の振りをしていただけって認識にでもならないとあいつが帰ってきても苦しむだけだ。それこそ苦しませるために連れ戻したなんて結末にはしたくない」
「それは同感だが。機会を待つしかないな」
「……ああ」