鳴門 | ナノ
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77.傲慢な月は静かに笑う


「トビ……いや、今はマダラと名乗っているとか?」
「ここがよく分かったな」
「スパイとして国から国へ渡り歩き、暁の一員でもあった僕の情報量を舐めない方が良い」
「サソリのスパイの一員だったな。お前は暁の裏切り者だ」

結んだマダラさんのチャクラを頼りにアジまで戻ってくると、見慣れない格好をした男がまるで盾にするかのようにいくつもの棺を口寄せしていたところだった。

「これは、穢土転生!」
「二代目火影と大蛇丸様しか使えなかった禁術だが、僕で三人目。そして今はその二名をも超えている。これは君へのパフォーマンス……僕の力を信用してもらうためのね」

声が聞こえる距離まで近づいてそっと息を潜めた。声と口調、そしてフードから覗く丸い縁の眼鏡からあの男はカブトさんだろうか。中忍試験の時に会ったきりだから定かじゃないけれど、大蛇丸を様と呼んでいることから恐らく間違っていない。

「安心してください。僕はここへ戦いに来たんじゃない」
「何が目的だ?」
「君と手を組みたい」
「手を組みたいだと……お前と組んで俺に何の得がある?」
「近々戦争を起こすそうだね? その戦力を提供しようってことさ。ここにあるイタチ、サソリ、デイダラ、角都、そして長門……どれも強者揃いだ。それに僕の持っている駒はこれだけじゃない」
「見返りは?」
「うちはサスケ」
「あなたが何を企んでいるか知らないけど、サスケに手出しはさせないよ」

背後から迫り、クナイの切っ先を向けてもカブトさんは大して驚いた様子もなくこちらに一瞥をくれただけだった。マダラさんはともかく、この人も私の気配に気づいていても尚、話を進めていたのだろうか。

「やあ、中忍試験の時以来かな? 僕は君にも興味がある。何せ、人繋ぎに出くわすなんて機会そうそうあるものじゃないからね」

ニヤッと口角を釣り上げたカブトさんはマダラさんへ視線を戻すと、パンッと手の平を合わせてチャクラを練り上げる。新たに地中から這い出してきた棺に誰が収められているのか、こちらか確認することは出来ない。けれど、それを見たマダラさんの反応から彼にとって不利に作用する人物だったことは確かなのだろう。

「貴様、それをどこで手に入れた?」
「色々とね。安心して良いよ、これは誰にも喋っていない」
「……フンッ。薬師カブト、お前がここまでの器になるとは思ってもみなかった。なまえ、下がれ」
「マダラさん……?」
「良いだろう、手を組んでやる……だが、なまえは渡さない。それとサスケを渡すのは戦争の成果を上げてからだ。それまではサスケには会わせない。それから監視もつけさせてもらう」
「人繋ぎが手に入らないのは残念だけど物分かりの良い方だ。流石はうちはマダラ、器が違う」
「生意気な奴だ……お前の持つ戦力を確認してから作戦を練り直す。ついて来い」

なまえ、後で話がある。とマダラさんに言外に待機を命じられてしまえば私は大人しく頷くしかない。サスケのことも、マダラさんが簡単に手放すはずがないと今は彼を信じるしかないのだから。

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