鳴門 | ナノ
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101.


上空で繰り広げられるナルトとカグヤの戦いにはつけ入る隙がなく、ただ見ていることしか出来ない自分がひどく腹立たしい。サクラとオビトはサスケを連れ戻すために命を賭けていると言うのに俺はあいつらの師として大したことをしてやれず、オビトやリンに対しても同じだ。エリートぶって口先だけの失敗ばかりを繰り返してきた。

「まだまだ! 絶対負けるわけにはいかねえんだ!」

底なし沼に足を取られたかのようにどこまでも沈んでいく思考を引き上げたのは、ナルトの一声だった。
何体もの分身を消されようとも諦めることなく向かっていくナルトを前にして何を感傷に浸っていると言うのだ。今の俺にもまだ出来ることはあるはずだと自身へ喝を入れたその時、目の前に出現した神威の空間からオビトとサクラとサスケ、そして無限月読に飲まれたはずのなまえが姿を現した。

「なまえ、お前も来てくれたんだな!」
「皆が戦ってるのに、私だけ呑気に眠ってるわけにもいかないでしょ?」
「ヘヘッ、サクラちゃんとオビトもありがとな! サスケもちゃんと礼言ったか?」
「このウスラトンカチが。くだらないこと言ってないで敵に集中しろ!」
「母さん、あいつらだけじゃなく繋ぎの者まで揃ったならもうチャクラを出し惜しみしてる場合じゃないよ」
「分かっている」

再会の喜びも束の間、カグヤの輪廻眼が見開かれたかと思うと空間が一変した。極端に重力が増した所為で動きが鈍くなり、尖った地面が体の至るところにくい込む。

「これじゃ浮けねぇ……」
「今度は超重力の空間か。だが、条件は奴も同じ……」

徐に持ち上がったカグヤの両手のひらから、ナルトの分身を粉々に砕いたのと同じ槍が射出された。

「サスケ、躱せ!」
「ぐっ……!」
「重さで狙いが狂うかい?」
「今ので調節した。次は当たる」

一撃目は体勢を崩しながらもどうにか躱すことが出来たが、二撃目は恐らくまともに食らってしまう。
ならば、俺にもまだ出来ることはある。二人の盾になることくらいなら写輪眼を失った今の俺にでも出来るだろう。間に合ってくれと咄嗟に伸ばした俺たちの手にひどく懐かしい手が重なったような気がした。

「リン……?」

それが俺の思いすごしだったとしても、構わない。俺もオビトも間に合ったのだから。

「ありがとう。リン」

俺もオビトもそっちへ行くから、そうしたらあいつも交えて四人でゆっくり話をしよう。人繋ぎの因果を断ち切ってやるとなまえと約束したにも関わらず先に逝ってしまうことは心苦しいが、後のことはあいつらに任せることにしようと着実に迫ってくるそれに覚悟を決めたはずだったのだが。

「オビト、お前……」
「カカシ、お前は当分こっちにいろ。すぐに来るんじゃねえぞ」

それが貫いたのはオビトの腹だけ。もう一本の槍を神威の瞳力で時空間へ飛ばしたのだ。

「どうしてだ!?  互いに覚悟はもう……お前の力はまだ必要だ。なぜ、役にも立たない俺のために……!」
「フン、どっちつかずのクズにはお似合いの最期だな。敵、味方、双方から忌み嫌われ悲しんでくれる仲間も肉親もいない。そいつは独り。何も残らない。大切な人を亡くし、夢を叶えることも出来ずに利用された挙句、最後にウロウロと失敗だらけのマヌケが無様に死ぬだけのことだ」
「死なせない……!」

静かな、しかし有無を言わせない声色でそう言い切ったなまえは不自然なくらい疲弊していた。全くの無傷だったわけではないが新たな空間へ飛ばされるまではある程度余裕を見せていたと言うのに、この短い間に一体何が起こったと言うのか。そして、それと同じくらい不自然なのはカグヤの一撃を食らったはずのオビトの体がいつまでも崩れることなく元の形を保っていると言うことだ。

「トビさんの写輪眼と共鳴した時、ついでに仕込ませてもらいました。特殊な条件下でしか使えない代わりに体の外側には結界忍術を、内側には封印術をそれぞれ発動してたった一度だけ確定した死の運命を捻じ曲げてくれる」

その言葉が合図だったかのようにオビトの腹に見覚えのある術式が広がったかと思うと、バキバキと耳障りな音を立てながらそこに深々と食い込んだままの杭が粉々に砕け散った。

「約束は果たしたよ。後は任せたからね」

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