鳴門 | ナノ
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100.


新たな空間を開いた瞬間、こちら側へ溢れ出してきた大量の酸をかぶったベストの袖を咄嗟にやぶり捨てた。背中と比べて生地が薄かった分、いくらか肌を焼かれてしまったが、この程度なら百豪のチャクラを使わなくても問題ない。

「お前は医療忍者だろ? 傷を治すまで少し待つ」
「そんなの良いです。ナルトがくれたチャンスをつぶすわけにはいかないもの」
「なぜ傷を? 少しでも……」
「チャクラは限られているでしょ。それより次です!」
「……躓きそうなら助けたくなる、か。ああ、次だ!」

オビトの肩に再び手を置き百豪のチャクラを送り込もうとしたその時、目の前の景色が不自然に歪んだ。

「トビさん! サクラ!」
「なまえ!? どうやってここに」
「トビさんのチャクラをたどって。それより今の状況は?」
「神威でしらみつぶしに空間をつなげ、カグヤに飛ばされたサスケを探しているところだ」
「なるほど。それなら私の能力が役に立ちそうですね」
「何をするつもりだ?」
「結びの力でサスケを見つけてからトビさんの写輪眼と共鳴してつなげる空間を限定させます」
「だが、結びの力は前もって相手とチャクラを結んでおく必要がある。お前はサスケとは……」
「確かにサスケ自身のチャクラをたどることは出来なくても、サスケの両目に移植されたイタチさんの目を介してならチャクラをたどれるはずです。闇雲に空間をつなげるよりもその方が二人の負担も減らせる……お願いします。私に託してください!」
「……分かった。なまえ、俺たちに力を貸してくれ!」

恐らく十秒にも満たない。けれど、やけに長く感じた間の後、無言で頷き合うとなまえも私と同じようにオビトの背後に立ち、その肩へ自身の右手を置いた。

「サクラ、頼りにしてるからね」
「え……?」
「サスケを見つけることが出来ても、私には空間同士をつなげられるだけのチャクラを持ち合わせていない。でも、サクラには百豪のチャクラがある。三人でなら必ずサスケを連れ戻せる! 誰が欠けても駄目。そうでしょ?」
「なまえ……うん!」

なまえはいつだって少ない言葉で私の背中を押してくれる。どんどん先へ行ってしまう二人の背中を見て立ち尽くすしかない私の方を振り返り、優しく微笑みながら手を差し伸べてくれるのだ。
込み上げてくるものを歯を食いしばってどうにか飲み込んでいる間になまえは目を閉じて早くもサスケを探し始めているようだった。

「見つけた! トビさん、サクラ、空間をつなげる準備を!」
「ああ!」
「任せて!」

しばらくして弾かれたように目を開けたなまえの合図でオビトは写輪眼を発動させ、私も百豪のチャクラを送り込み始める。すると、さっきと同じように空間が開き、果てしなく広がる砂漠に探し求めていた人影が見えた。

「サスケくん!」
「ここか!」
「サスケくん、こっち! 早く!」

サスケくんも私たちの存在に気づいたと同時にこちらへ向かって走り出したものの、やはり二つの空間をつなげておくにはそれ相応のチャクラと気力が必要なわけで。
オビトの両目が激しい痛みに見舞われたように私もチャクラが底を突き自分の意思とは裏腹にふらりと体が傾き、つながったはずの空間が非情にもゆっくりと閉じていってしまう。

「クソ……ッ」
「そんな……」

せっかくなまえが力を貸してくれたのに。自身の無力さを痛感し、最早踏ん張る気力さえも失った次の瞬間、信じられないことが起こった。

「サスケ、くん……?」
「どうやって……」
「これが俺の能力だ。俺と離れた空間とを一瞬で入れ替える……距離は決まっているが、おかげで届いた」

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