鳴門 | ナノ
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102.


後は任せたと途切れ途切れにつぶやき、前方へと傾いたなまえの全身が白煙に包まれた。

「な、何……?」
「……、嘘だろ……っ」

サクラも俺も困惑を口にしたものの、そこに込められた意味は全くと言って良いほど異なっていたに違いない。何せ、徐々に晴れていく煙の切れ間から覗く人影はなまえよりも髪が短く、背丈はいくらか高く、お互いの背中を預け合い多くの危険な任務をともにこなしてきたかつての仲間とよく似ていたのだ。時折、あの子の中にその存在を感じていたあいつの後ろ姿と。

「っ、なぜだ! なぜ、お前たちはいつもわらわの邪魔をする!? 誰よりもわらわを理解していたはずのお前が……なぜだ!」
「それが私たちの意志だから。それ以上に人繋ぎである前に木ノ葉を背負う忍として私たちは、私たちにとって大切なものを守りたいから」
「っ、おのれぇ!」

額に青筋を立てたカグヤの手のひらが彼女へと向けられ、例の槍が射出されようとした既のところで左目の瞳力が戻ったらしいサスケが一瞬で相手に接近し千鳥をまとった左手を振りかぶった。しかし、その一撃は空間を変えると同時に上空に飛んだことで躱されてしまう。

「ナルト、今度は俺が陽動をかける。こっちへ来い」
「あ、ああ」

返事はしたものの後ろ髪を引かれるように彼女を見つめなかなか動こうとしないナルトだったが、場違いなくらい穏やかな笑みを浮かべながら無言で頷いた彼女に促されると須佐能乎を発動させたサスケの後に続いた。
残された俺とオビトは未だに信じられないものを目の当たりにしているかのような気持ちで恐る恐る彼女の元へと駆け寄り。

「本当に、お前なのか……?」
「こんな時に言うのも何だけど、カカシくんもオビトもまた会えて嬉しいよ」
「だが、なまえが新たに生まれたことでお前と言う人格は昇華されたはずだ。それがなぜ今になって……」
「ここから先は自分の守りたいものは自分で守れって」
「なまえがそう言ったのか?」

胸にそっと手を当てながら頷いた彼女が嘘を言っているようには見えない。そもそも二人は人繋ぎとして一つの魂を共有しているわけで、穢土転生に似たよう術で表の人格が入れ替わったと考えればそこまで不自然なことではないのかもしれない。

「まさか、母さん。ここで!」

不意に空気が震え弾かれたように上空を見やると、黒ゼツを切り落とされたと同時に人の形から巨大なうさぎに何体もの動物が融合したかのようなひどく歪な姿に変わり果てたカグヤの姿が目に入った。

「ナルトの中にいる尾獣どもと呼応して十尾が分離しかけているんだ。サクラ、俺の両目をカカシに移植出来るか?」
「……何を考えてるの?」
「須佐能乎を使うためには両目の万華鏡写輪眼が必要だ」
「待て! オビト。それならうちはの血を継ぐお前の方が適役だ。わざわざ俺に両目を預けることは……」
「お前はあいつらの先生だろ。どっちが適役かと言うならお前以上の適役はいないはずだ」
「私もオビトに賛成。第七班の上忍師として君には最後まで彼らを導く義務がある」
「だが……」

一度適合したとは言え、二度目も上手くいくとは限らない。最悪の場合、自分だけでなくオビトまでもが視力を失うかもしれないことを考えると素直に受け入れることが出来ない。そんな俺の心情を悟ってか、くすりと彼女が小さく笑みを零した。

「とは言っても、オビトの案に賛成出来ないのは私も同じ。せっかくなまえが救った命なのに、視力を失ってしまったら意味がない」
「だが、これ以外に方法は……」
「だから、私がここにいるんだよ。第七班の上忍師として、うちは一族として二人であの子たちの未来とこの世界を守ってあげて」

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