「遅刻…パンツ…痴女…最悪…」

屋上から逃げ出すように去った後、入学式に遅刻してきたことで担任からは初日から注意を受け、まさに散々な1日を過ごしてしまった。っていうかほんとパンツトラウマ…私このパンツほんと楽で好きなのに…あのガングロめ…今度会ったら許さない…と考えていたら目の前のコイツである。っていうかこの人1年なの‥信じらんない‥

「大体なんでクラス同じ…桐皇ってバカなんじゃないの…なんでこの人と同じクラスにしたの‥されたの‥」
「ぐちぐちうっせーな、なんだよパンツ見られたぐれーで」
「名前も知らない変態にパンツ見られて私の心は折れました」
「ハッ…お前メンタル弱過ぎ」
「誰のせいだガングロ」
「テメエ」
「なに?青峰君新しい友達出来たの?」
「ちげーよこいつはパン「ちょっと待ってほんとふざけんな」…」

ガングロの後ろから突然現れた、ピンクの髪の美人に言いかけた言葉を咄嗟に止めにかかる。パンツって言おうとしたよ今。それよりこんな黒い猛獣がなんでこんな美人さんと友達なんだ。…いや待てまさか…そんなはずはない。と自己完結してじっと美人さんを見つめる。そしたら逆に見つめられた。…なんだか恥ずかしい。そしたら「やっぱそうだ!」と一言、手をぱちんと叩いてふふ、と笑った。

「未藤(びどう) 桜。出身は帝光中学校陸上部。エースランナー。中学三3年の時に50m6.2秒をたたき出した帝光始まって以来の天才」
「!」
「6.2!?」
「短距離、長距離共に記録保持者。羊の皮を被ったチーターとも呼ばれていた。未藤の"未"が、干支の羊っていう意味だから。…の、未藤桜ちゃん、でしょ?」

うわあびっくり。男子バスケの最強の影に隠れてたから、そんなに詳しく知ってる人がいたなんて知らなかった。とどのつまり、帝光中学校は男子バスケに大きな力を注いでいたのだ。帝光の部活動は全部強かったけど、"キセキの世代"なーんてのがいたおかげで、大会で勝っても勝ってもちっともお偉いさんは目を向けてくれなかったし。

「すごいね。そんなに知ってる人中学でもそんなにいないよ…」
「私も帝光中学出身なんだあ。青峰君もね」
「2人とも帝光出身なの?へー…」
「さらにびっくり!こっちの青峰君はキセキの世代の1人なんだー」
「へえ…え?ガングロはキセキの世代なんだ…まさにキセキのガングロだね…」
「ああ"?お前俺のことなめてんのか?」
「いーだ」

凄い威嚇をしてくるガングロに、私はほっぺたを引っ張って舌を出した。"キセキの世代"ね。5人くらいいるって噂だったけど、まさかこんなに身近に潜んでいたとは…にしてもどんだけ凄いんだかわかんないから「凄いねえ」なんて言えない。そもそも変態だし。

「キセキの世代だかなんだか知らないけど、私だって運動神経いい方だからなー。なめてしまっても仕方のないことかもねえ‥」
「そんなクソ生意気な事よく言えンなテメー」
「なんだったらバスケ対決してみる?」
「え」

え。2人の動きが静止したけど、なに。

「……ハ。そりゃお前無理だわ。ライオンとノミだわ。相手になんねーわ」
「う、桜ちゃんそれはさすがに無謀だよ…」
「そうかなあ?スピードなら自信あるけど」
「バーカ。ドッチボールと勘違いしてんな。そもそも俺に勝てるのは俺しかいねーの。相手になんねーよ。何度も言わせんなアホ」
「すっごい自信だね。……でもなんか可哀想。なんかあったの?」
「…うっせーよ。さつきー、あと適当にパンツの相手しとけ」
「ちょ、だい…青峰君!」
「パンツ言うな!!」

"可哀想"。そう声に出した瞬間ガングロの顔が少し歪んだ。ちらりと美人さんを見てみれば、心配そうにガングロの背中を目で追っていた。…これ、私なんか墓穴掘った感じ?

「…桜ちゃん…」
「あ…なんかごめんね、なんかいけないラインに足突っ込んだ…?」
「パンツって…?」
「や、それは………そこ?」

2016.06.05

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