「おっ、亜樹ちゃん〜今日は社長出勤?プリントなら真ちゃんが机に入れてくれてたぜ〜?ほんと亜樹ちゃんには甘いんだから〜高尾君ジェラシ〜」
「くだらないことを言うな。斜め後ろの席だからだ。渋々なのだよ」
「斜め後ろとか中途半端じゃね?ツンデレはほんとにイデデッッ!!」

朝の仕事があった為、お昼休み途中で学校に来たが、その私の机で何故か楽しそうにしていたのは高尾君だった。まず人の机で何をしているのか。座れないんですけど。とりあえず邪魔だとばかりに机に鞄を置いてみたが、どく気はなさそうだ。緑間君の長い足が高尾君の足を踏みつけている。

「高尾君どいて。座れない」
「ん?膝の上に座っちゃう?全然俺はオッケー」
「高尾いい加減にするのだよ」
「だからそこでなんで真ちゃんが出てくんだって。それホント謎だから」

そう言いながら渋々どいた高尾君に代わって席につくと、引き出しからプリントを出す。‥今日小テストあったのか。後で先生の所に行こう。

「あっそーだ!」

突然思い付いたようにポケットから携帯を取り出した高尾君に、来たばっかりなのにまたなんか変なこと提案したりしないよね、とぼんやり考える。机の上を片付けていると、緑間君とぱちりと目が合った。‥そういえば、ちゃんと会って話すのって久しぶりかも。

「なんだ」
「え?」
「俺の顔に何かついているのか」
「そうじゃなくて。‥ちゃんと会って話すの久しぶりだなって」
「ああ‥そうだな。仕事か」
「う「あ、亜樹ほんとに来てるやん。ナイスいい仕事高尾君〜」‥はあ」

間を割って入って来た人物に、無意識の溜息。高尾君、「あっそーだ!」の時、八雲さんにメールしていたのか。何故。そう考えていた所で彼女はにこやかに笑った。

「はい!どうぞ〜!」

ぱさりと手渡される謎のB4チラシ。疑問を感じて見てみれば、東京都男子バスケットボールインターハイ予選と記載がしてある。東京都男子バスケットボールって‥え?どういうこと?これを私に渡してどうしてほしいのか。事務所のコルクボードにでも貼れってか?バカじゃないの。

「‥で、なに?コレ」
「一緒に見に行かん?って聞いとるっちゃけど。この間随分と試合真面目に見とったから行きたいんやないかな〜と思って」
「試合?試合‥‥これ、緑間君達出るの?」
「出るに決まっているだろう」
「おっ亜樹ちゃん食いつきい〜ね〜」
「そうなんだ‥」

ちょっと行きたい。かもしれない。日付けを確認すると、5月17日の日曜日。すぐGWも始まるから、その約2週間後。いやこれは‥確か仕事がある日だ。早く終われば行けるだろうか。でも、行ったら行ったですごく目立つかもしれない‥。

「"仕事の後に行くと目立つ"とか考えとるそこの女の子ー。私に良い案ありまーす」
「?」
「マジ2人が応援に来てくれたらやる気すげー出るよなあ。なあ真ちゃんもそうだろー?」
「俺はいつも通りに人事を尽くすだけなのだよ」
「「ないわー。ホント素直じゃないわー」」

なんでこの2人ハモってるんだ。前から思ってたんだけど、なんかノリというか、やっぱり似てるんだよね。八雲さんと高尾君。ちらりと緑間君を見ると、堅物な顔が少しだけ緩んでいる‥気がする。5月17日かあ。‥今から仕事ずらせたりしないかな。って、こんなこと考えるなんて駄目だ。とにかく、今決まっている仕事はちゃんと最善を尽くそう。

‥っていうか、八雲さんの案とかちょっと怖くて聞けない。

2017.04.02

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