「辰巳、その途中の計算が間違っているのだよ」
「‥ああそっか、だから合わないんだ。じゃあこれはどう思う?後ろのxに1.2を当てはめれば解けると思ったんだけど、どうも元の答えと合わないんだよね‥」
「それはだな‥」
「‥‥」

オイオイオイおーい。
なんで先に真ちゃんと来てた俺が蚊帳の外になってんだ?2人に飲み物買ってきてから、もうかれこれ2時間くらいずっとこの調子なんだけど。つか、隣同士に座ってるせいか2人の距離も近えわ。気付けよ、恥ずかしいとか特にないワケ?阿保なのかこいつら??

俺はとうとうパラパラ漫画を描いていた手を止めて、机に左肘をついた。へーェ、真ちゃんってこういう面倒見の良い一面もあんだなー。あ、つか妹いるっつってたっけ‥それと同じ感覚なんかな?いやでも、辰巳サン妹って感じでもねえか。つか、妹ちゃんと真ちゃんって似てんのかな‥いや似てたらそれはそれでスゲー嫌だわ。真ちゃんと似てたりしたら絶対占いマニアじゃん?ぷぷ‥無理無理。吹くわ。つか今吹いたわ。

「‥高尾、顔がだらしないのだよ」
「ぅ、わ‥本当だ引く‥」
「お前らのせいだろーがよ!つか、なに、なんで急に息ピッタリなんだっての」
「「はあ?」」
「ギャハハ!困惑顔までシンクロしてんじゃん!」

頭の上にクエスチョンマークを浮かべた真ちゃんと辰巳サンは、お互いの顔を見てキョトンと首を傾げた。おー、真ちゃんまあ顔はイケメンだから中々お似合いなんじゃね?てか面白すぎ!ひー腹いてーわ。

「高尾と違って辰巳は勉強に対する姿勢がなっているからな。お前に教えるよりよほど教え甲斐があるのだよ」
「んだよ寂しいこと言うなよ真ちゃんー浮気だ浮気ー」
「ていうか、なんで緑間君と高尾君友達やってるの?性格全然違うじゃない」
「ブッ!友達やってるの!?どんな日本語なのだよ!」
「俺の真似をするな高尾!!」

あーマジ面白え。つか、いつの間にか辰巳サンも敬語取れちゃってるし。初見はぜってー仲良くなれないタイプだろうなーと思ったんだけどな。分かんねーもんだぜ。意外だ。

「つーかさ、辰巳サンこそなんで秀徳なんて勉強キビシー所にきちゃったワケ?今が旬のティーンズモデルなのに、仕事今からが大変な年頃っしょ?」

そう俺が疑問をぶつければ、突然ピタッと動きを止めて、一瞬視線が真ちゃんに動いた。‥‥‥お、おお?これは、まさか‥?まさかなのか‥?あの辰巳亜樹が、真ちゃんを追いかけてきた‥とか‥?そりゃスゲーや!!思わずガタンと椅子から飛び上がると、真ちゃんに「お前は勉強云々の前に落ち着きというものを身につける必要があるのだよ馬鹿め」と言われてしまう始末だ。‥そんな堅物真ちゃんの真顔を崩して、真っ赤に染め上げてまうのは、きっと辰巳サン!アンタだけだよ!どんな青春なのだよ真ちゃん!!(大興奮)

「‥‥‥ちょっと、勝ちたい人がいて」

そして、次いで出てきた辰巳サンの言葉に、ズダダダッと足を滑らせた。そんな嘘は‥と思いきや、辰巳サンの顔‥気まずそうだったが至って真面目だった。俺の大興奮時代を返せ。

「‥勝ちたい、だと?」
「中学時代、ずっと勝てなくて、‥って言っても同じ高校に行くつもりはなかったんだけど。レベル高い学校に行けばもっと勉強できるし、全国模試とかで抜けるかもって。‥そしたら、まさか秀徳にいるなんて思ってもみなかったというか」
「人事を尽くす奴にこそ結果はついてくるものなのだよ」
「‥仲良くなれそうにないって思ってたんだけど‥‥まあ、そこそこ良いライバルになるかもしれないっていうのは思った、かな」

‥女の子ってさあ、もっと可愛いオハナシが好きなんじゃねえの?俺の前で繰り広げられているのは、真面目な顔で真面目な話をしている辰巳サンと、そんなライバルがまさか自分なんて思っていない真ちゃんの真面目な受け答えだ。今度こそ蚊帳の外じゃねーか。

「残念だがライバルに勝ててもお前は俺に勝てないのだよ」
「そんなことない。ライバルに勝てれば緑間君にも勝てるから」
「そもそも俺から勉強を教わっている時点で上下の差ははっきりしているだろう。馬鹿め」
「知ってる?生徒はそのうち先生を超えるんだよ」
「話にならんな。そもそも貴様の先生になった覚えはない」
「へああ〜〜‥」

芸能人って変な奴多いって聞くけど、実際自分がその現場を見ちまったらなんも言えねーわ‥。

「‥そしてお前は何を転んでいるんだ」
「好きですっ転んだんじゃねーよ‥」
「それより私の疑問には2人共答えるつもりないの?」

2016.08.01

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