「ぅげっ」
「え?あ、虎侑サンじゃないっスか。どーも!」

正門を出た所で女の子の大群に遭遇。流石にもういないだろうと思っていた私が馬鹿だった。その中心ではちやほやされまくっている黄瀬涼太の姿がある。巻き込まれたくないと思いながら抜き足差し足忍び足、をしていたつもりだったが見事に見つかった。てかよく名前覚えてたな!取り巻きの女子その1くらいにしか覚えてないと思ってたのに。

「‥」
「無視!?ちょっ、酷くないスか!!?」
「‥」
「だから酷い!!」

うるっさいなこの金髪犬。周りの女の子の顔をよく見ろ。あの人誰?という完全私のアウェー感が凄いのだ。好奇の視線に晒すんじゃない!と大声で叫びたい気持ちを抑え、その場を去った。ああいう女子って怖いんだってこと知らない男子程ムカつくもんはないな。黄瀬涼太に声をかけられたという、たったこんだけのことがきっかけでいじめの対象にされたらどうするんだ。まあ、いじめられても返り討ちにしてやる自信あるけどね!その前に黄瀬涼太をシメてやる。

「歩くの速い!速いって!」
「‥って!いや何ついてきてんの!馬鹿なの!?」

今後のミーハー女子達の嫉妬がどのくらい凄いか考えていると、後ろから声がした。‥さっきまで女子の中心にいなかっただろうか。そしてなんでついてくる。ストーカーか何かかな?‥ってか、その制服ってことは、本当に海常高校に通ってるってことか。改めて凝視すると、顔ちっさいわ肌は綺麗だわで本当に腹立つ要素ばかりだ。女子の敵だと私の本能が告げている。きっと間違っていない。

「‥その前に、なんでこんな所にいるわけ?」

そんな私の言葉に、ああ、なんて言いながら彼は頭を掻いて笑った。‥理由くだらなさそう。

「友達に会いに来たんスよ」

意外‥全然くだらなくなかった。

「へえ。ということは帝光かあ。私も知ってる人?」
「いや、多分知らないと思うっスよ。黒子っち‥あー、黒子テツヤっていう男子バスケ部だったチームメイトで、」
「‥ああ!黒子君ってウサギと同じクラスの!」
「ウサギって?」
「ウサギも帝光が出身中学だけど。兎佐希望。知らない?」
「さあ、女の子の名前なんていちいち覚えてないっス」
「うっわ言い方‥じゃあなんで私の名前覚えてたの?」
「第1印象が悪かったからっスかね?ぐほっ!」

ドスッ。思いっきり腹に肘鉄を食らわせてやった。こいつモデルでモテるからって調子乗るなよ。っていうか女子の肘鉄でうずくまるとかひ弱すぎない?逆にびっくりする。話しに付き合うのもアホらしくなって、そのまま背を向け家へと向かった。

‥なんか後ろからついてくる音聞こえるんだけど。ちらりと後ろを盗み見れば、けろっとした顔で私の後ろを歩く黄瀬涼太がいる。どういうこと。

「‥だから、なんでついてくんの!!?」
「しょうがないじゃないっスか。黒子っちがチームメイトとこっちに行くの見たし」
「はあ?‥んで、黒子っちと会って何話すの?世間話?」
「いやー‥まあ、なんというか‥」
「?」
「黒子っち、中学3年の全中で優勝した後消えるように部活辞めたんスよ。‥その理由、ちょっと聞きたくて」

ぴたり。黄瀬涼太の言葉につられるように足が止まった。"全中で優勝した後に消える"。その言葉が心臓に突き刺さって痛い。黄瀬涼太の顔がやけにへらへらしているのが、なんだかとても気に入らなかった。

2017.03.27

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