「‥で、第1ピリオドと第3ピリオドは赤ペン、第2ピリオドと第4ピリオドは黒で記入‥」

結構本気で教えられてるんだけども。ていうか、ファウルにプレイヤーとかコーチとかチームとか、色々あるんだな。教えられれば教えられる程分かんないことだらけだ。‥いやだから、なんで。入る気ないんだって、一体何回言ったらいいんだろうか‥。

「おいサボんな!!休憩まだだぞ!!」

お昼休憩まであとどのくらいあるのかな。そんなことを考えながら時計を見ると、既に13時なんてとっくの昔に過ぎていた。きっと皆お腹だって空いているに違いない。‥なのに、止まる様子も、止まろうとする様子もない。この間あれだけ泣き言を言っていた同学年の男の子達も、必死という言葉通りに頑張っている。辞めるかと思ってたけど、‥そうじゃないらしい。

「あと1セット終わったら昼休憩ー!」
「まじかよ、あと1セットなげえよ〜‥!!」
「うっさいんだけど〜‥!!早くローテ回してくんない!?」
「うっせー対して動いてねー癖に!!」
「はあ〜?誰のこと言ってんの!?捻り潰すよ!?」
「お前は誰にどういう物言いしてんだコラ!」

いつの間にか戦場と化しているコート内で、またしても喧嘩になりそうな空気。あーもう、さっきからなにやってんだ‥。そんな体力あるならもっと動きなよっていうのを、なんとか飲み込んだ。ばたばたぎゃあぎゃあと、他の高校の人達がいるのにも関わらずなのだから本当に呆れてしまう。私は止めないからね、絶対止めない。そういうのはそっち側でやってください。

「‥先生、お昼の準備してきていいですか」
「おー‥ったくあいつら何やってんだ‥」
「お腹空いてるだけだと思いますけど。もう15時前ですよ‥」
「あーまあそれもそうだな」
「無理をしても上手くなりませんし、一旦切り上げた方が」
「お前は先に昼の準備に行ってろ。またスコアは後で教えてやるから。‥おいコラァ!!モタモタしてんな!!」

教師がなんて言葉遣いをしているんだ。背中をぽんと押されて、そのままスコアノート片手に体育館から出る。くるりと後ろを振り向いて中を覗き込むと、煩い輪の中に先生が入っていったのが見えた。他校生、めちゃくちゃ見てるけど恥ずかしくないのかな。‥そんなに怒るくらい頑張って、そんなにバスケって楽しいのかな、ずっと体操をしてた私でもはまれたりとか、‥‥いやいや、変なことを考えるのはやめよう。洗脳される。‥いや、洗脳されてる?













「‥陽泉って今まで女子マネいたっけか?」
「顧問の圧すごいからいないとか言ってたよな?今年はちげーのかな‥つーか、」
「結構可愛いよな〜‥強豪に可愛いマネとか漫画かよ‥」
「今回の合宿の飯も担当してるらしいぜ」
「出来るマネとかクソ羨ましい‥うお!?」

あーまじでめっちゃ煩いんだけど。食事時くらい静かに食べれないわけ?後ろの他校生の声に、思い切り自分の目の前の机を下から蹴り上げた。ガン!と良い音がして、目の前で食事を取っていたチームメイトの皿が揺れて、味噌汁が溢れた。あ〜やば、ごめ〜ん。でもさ、怒るなら後ろの奴らにしてよ。俺悪くないし。不快だったから静かにさせただけだし。何が悪いの?

「紫原君行儀悪いです。何やってるんですか」
「うるっさいなあ、真梨ちんも自覚持ちなよ。ずっと雅子ちんにくっついててよね」
「はあ?なんでですか‥いやですけど‥」

真梨ちんがじろじろ見られてるのあんまり気持ち良くない。だったら隣に座ってよって先にいたメンバーを追い出して無理矢理座らせると、不服そうな顔と、私まだやることあるんですけどという声が。取り分けたりする為に食堂にいる彼女は、食事の時は一回り以上も違う雅子ちんや他校の先生と一緒らしい。別に俺らと一緒でもよくない?

「紫原が珍しく懐いてるんだよなあ‥戌飼も中々態度悪いのに」
「福井先輩、失礼ですよ」
「これ真梨ちんが作ったやつ?ちょ〜うまい」
「‥どうも」

ちょっとだけ分かってきたこと。真梨ちんは料理を褒められるのが少し嬉しい。多分だいぶ嬉しいけど、あんまり顔には出さないようにしてる。無言でじっと隣に居させるのはなんだか可哀想だから、俺のお皿にあったミニトマトを柔らかそうな口の中へと押し込んだ。‥なんだよ、だからじろじろ見んなっつーの。

2018.03.31

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