さて。高校生になって初めてのGW到来。とは言えどうせ部活三昧だし、休みなんてある訳がない。ストレッチして鍛えて走って、毎日その繰り返しだ。

「未藤さんって先輩達のことどう思う?」
「へ?」

そしてお昼。お弁当を食べていると、同学年の女の子達から唐突な疑問が飛び出てきて、私はもっていたお肉を地面に落としてしまった。動揺しているわけではない。唐突すぎただけだ。

「どう思うってもな‥別に、どうも?」
「え〜‥だって先輩達皆怖いじゃん‥私この間タイム全然伸びてなくてやる気あんの?って言われたもん‥」
「私もトロトロすんなって凄い怒られた‥」

うんざりとした様子で話す女の子達の食は進んでいない。確かに陸上の先輩達ってプライド高そうな感じはあったんだけど、実際過ごしてみて、やっぱりそうだったか‥と再認識してしまっていた。口を開けばよく喧嘩してるし、仲介役の水嶋キャプテンがいない時は1年に八つ当たりも多くなる。てかなんの八つ当たりだ。そして大体1年で多く当てられるのが私だ。多分気に入らないからだろう。私も気に入らない。

「あーもう君達。そんなに愚痴ってるとどんどん部活嫌になってきちゃうでしょー?これは今だけだって思っとけばいーんだって。そのうち慣れるしそのうち卒業するから」
「‥なんか未藤さんって考え方かっこいいよね。プラス思考というか」
「分かる!未藤さんみたいな人が先輩だったら厳しいこと言われても平気な気がする!」
「今が同学年だからそう感じるんじゃない?」
「「そうかも」」
「おい。素直か」
「オイ、コラ!!青峰テメエ!!」

他愛もないことを話しながら休憩時間を過ごしていると、突然後ろから大声が聞こえてきて、ついでに体育館のドアが乱暴に開く音がした。‥てか今青峰って言ってなかった?振り向くと、高身長軍団がごろごろと体育館から出てくるではないか。その前をダルそうに歩く青峰の額には青筋が浮かんでいる。全面に押し出される退屈な様子が目に見て取れた。

「お前いい加減にしろよ!来たら来たで適当な試合しやがって!ナメてんのか!あ!?」
「あんなつまんねー試合なんかやる意味ねーだろ。俺マイちゃんの写真集買って帰るわ」
「ちょっと青峰君!!」
「ふっざけんな!!!」
「若松、エエから。桃井行ってき、任せ‥‥って、自分ホンマによう会うな。ひゃー、胸糞悪いもん見せてしまってスマンな〜」
「い、‥いえ」

いやこのタイミングで話しかけるか普通!!驚いて固まっていると、青峰とばっちり目が合って舌打ちされた。こいつ信じらんない。なぜ!目が合っただけで!舌打ちをされねばならないわけ!!?しかもさっちゃんの困ったような顔、そしてチームメイトの人達のキレた顔。‥桜井君はなんで泣きそうなんだよ女子か。

「こんなとこで何やってんだよ」
「いや、お昼ですから弁当食べるよね‥」
「‥ッチ」
「また舌打ちしたな!!!」

なんにもしてないのに失礼な奴だなと、今更思うこともないけどしょうがない。そのままぐらりと体を揺らした青峰は、するりと私の真横を通り過ぎていく。‥‥違っていたらだいぶ恥ずかしいんだけど、一緒に来てほしいって言われてるみたいだったような気がする。

‥‥‥ああ!!もう!!!!

気になったが最後、とうとう私は弁当の中身を口の中に全部詰め込むと、慌てて青峰を追いかけた。

「桜ちゃん‥?」
「さっちゃんはそこで待ってて!」

何が出来るかわかんないけど!そう声に出したかったけど、青峰の歩くスピードが早いのか足が長いのか、とにかく急いでいかないと見失いそうな気がしてウインクだけをさっちゃんに向けた。てか足長いとかなんだよほんとむかつくな!

2017.04.08

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