赤葦君から告白された。‥あれはされたのだ。告白を。好きって言われて、付き合わない?って言われて、私も実は好きだったんですって答えて。そして、‥道端でキスをされた。というより、まあ合意の上だからキスをした、だ。

「別に、‥一緒に寝ればいいんじゃないの」
「だ!!大丈夫っス!!お気になさらず!!」
「ぶふ、そうっスか?俺はむしろ一緒に寝たい気持ちがあるんだけど」

そうして私は知らなかった。赤葦君がこんなにグイグイ来る系男子だったということを。人のイメージとは凄いもので、赤葦君の勝手なイメージからいくと、紳士で、レディファーストで、「嫌なことは絶対しないよ」タイプかなって。意地悪だけれど、最近よく聞く草食系男子かと思っていたから。いやでも、そうじゃなかったから嫌いだ、と言うわけではないしやっぱり好きなものは好き。‥いやでも、やはり今日の今日で同じお布団はちょっとと思ってしまうのは決して私だけではない筈だ。

「何かする予定はないんだけど、ダメ?」
「何かする予定があったんですか!?あの、まだ色々慣れてなくって、緊張しすぎて、寝相とか悪かったら嫌だし‥!!」
「小鳥さん、一緒に生活始めてどのくらい経つか知ってる?もうすぐ1ヶ月だよ。寝相とかそんなの、気になったことないんだけど」
「見てたの‥?」
「ねえ、ダメ?」

その言い方は狡い。確かに最近、マシロが赤葦君のお部屋で遊びまわっているのは気になっていたし(寝るのは私の隣だけど)、若干の疎外感があったのも否めないけれど、誘われたからって同じ布団で寝るなんて。でも既に私の手首は赤葦君の掌の中だし、今いる場所も赤葦君のお部屋なんだけど。‥冷静に考えてシングルベッド狭いよねっていうことで無理矢理頭をいっぱいにさせている。

「‥折角恋人になったのに別々の部屋で寝るって寂しいんだけど」
「で、でも‥」
「はい」
「にゃあ」

ばさりと薄い掛け布団を広げられて、とりあえず横になりなよってぽんぽんと横を叩かれる。立ち尽くすことしかできない私に選択肢はもう殆ど残っていなくて、マシロに踵を押されながら恐る恐るとベッドの上へ。心臓ほんとに煩いから黙ってほしい。

「折れるの遅すぎ」
「だ、って‥」
「そんな顔しないでよ。虐めたくなるから」

ゆっくり横になろうとした瞬間にそんなことを言われてビタッと動きが止まってしまったけれど、それを察してぼすっと布団にうめられた。私の横にある赤葦君の顔がゆるりと笑っているが、するりと親指が唇に触れて思わずガチガチに閉じてしまった。‥なんでこんな、慣れてそうなことするんだ。

「にゃあ〜!」
「ちょっと‥マシロ、わざわざ間に入ってくるのやめてくれる」

私と赤葦君の間に入ってきて、肉球でぷにぷにと赤葦君の頬っぺたを押し返すマシロの存在にほっと一息ついた。赤葦君は不服そうだったけれど、よかった、少しは緊張が解れそうだ‥。やっぱり君は私が大好きなんだな。そうしてごろごろと鳴いた後、くるりとこちらを向いたマシロは私のお腹辺りで丸まって落ち着いた。

「‥火事の時から思ってたけど、マシロって小鳥さんのこと大好きだよね」
「まあ、捨て猫で小っちゃかったから‥親だと思ってるのかも」
「マシロの気持ちが分かる気がするよ」
「?どういう意味?」
「俺も小鳥さんのことが好きだからでしょ」

手入れをしたばかりの毛並みを撫でながら、赤葦君はゆるゆると頬っぺたを崩していく。少しだけ目元がとろりとしてきているから眠いんだろうけれど、他愛もない話しがずっと止まらなかった。寝てもいいよって言ってるのに、もうちょっとだけって言いながらマシロを撫でていた手を止めて私の目元に触れる。煩い心臓の音はいつの間にか心地の良い振動になっていた。

2017.11.09

prev | list | next