「えっと‥ふ、2人でってこと‥だよね‥?」
「次の休み、‥だいぶ先になっちゃうかもしれないんだけど、2人で」

待って。東峰君顔がめちゃくちゃ赤いんだけど‥どうしよう私も緊張移る!!!拭いたタオルをぎゅうっと握ると、声が出ない代わりに首を縦に何度も動かした。伝わるだろうか。恥ずかしいけど、とても行きたいという気持ちが。

「本当‥?無理してない‥?」
「う、ううん!!?ちが、あの、‥嬉しい、嬉しいの、誘ってもらえて‥?」
「‥えっ、嘘、本当‥?」
「わ!私でよければ是非お願いしますっ!」

がばりと頭を下げること数分、何も言ってこない東峰君に困惑してちらりと上を見上げてみると、顔を片手で隠して固まっていた。ど、どうしたんだろうか‥何か私の返答が不味かっただろうかと思ったのも束の間、べしりと両手で自分の頬っぺたを叩いた東峰君は、肺に空気をいっぱい入れて大きく深呼吸をした。

「フーーーッ!!」
「えっ」
「いや、ごめん!断られたらどうしようと思ってたから‥嬉しかったんだ、緊張した‥!」

緊張した、と言いながら今度は心臓を押さえている東峰君だけど、私も相当緊張していたのは知っているのだろうか。東峰君が顔を赤いとは思ったけど、多分私も相当赤いと思う。そうしてぱちりと目が合って、びくりと肩を跳ねさせた。とても優しい顔だ。‥ねえ、なんでそんな顔を向けるの?私馬鹿だから凄い勘違いをしてしまいそうなんだけど。

「じゃあ‥その、連絡取りたいから‥‥番号交換してもいいかな?」

悪魔でも相手に気を使うスタンスは変わらないらしい。その言葉を聞いて断ると思っているのだろうか。というか、私が東峰君の番号を受け取ってもいいのかな。でも交換しないと連絡できないもんねと理由付けして、私はポケットからiPhoneを取り出した。‥番号を交換した後に気付いたのだが、東峰君はあ行の1番最初だから電話帳を開くと必ず最初に目が付くのだ。ひい‥毎回ニヤニヤしそうで怖い。












「えーっ!?でで電話番号交換した!?来海やるじゃーーん!!」
「まっ‥待ってだから声大きいよ!」

予約した時間を過ぎるまであと30分。男子組は皆こぞってお手洗いへ。潔子ちゃんは電話の為に少し外へ出ている。どうやら飲み物を足しに帰ってきた私の(顔の)様子がおかしかったのが琴ちゃんにバレていたらしく、皆がいないのをいいことに事情聴取をされ、‥つまり全てを話してしまったのだ。いや別に悪いことをしていたわけじゃないのは分かっている‥のだけれど、いかんせん恥ずかしい。

「てかさー、なんか東峰君って来海のこと好きなんじゃない?」
「へっ!!!?!」
「だって東峰君から誘ってきたし、番号もそうでしょ?誘うってことはそれなりに気持ちがあるからだろうし、東峰君がチャラそうには見えないんだよな〜。‥って考えるとさあ、来海のこと本気なんじゃないかと思うんだよねえ‥」
「え‥いや‥それはどうなんでしょう‥‥?自惚れるのはいけないと思うんです‥ほら、私別にフツーだから‥」
「フツーってなに?」
「え?」
「関係ないんだって、フツーとかフツーじゃないとか。好きだったら可愛く見えるもんだし、かっこよく見えるもんだよ。私別に東峰君がかっこよくは見えないけど、あんたがそんなに真っ赤になってるってことは、東峰君がかっこよく見えるってことでしょ?」

なんだか物凄く核心を突かれているようでぐっと言葉に詰まる。っていうか、私顔赤いのか!!驚いて頬っぺたを両手で抓ると、琴ちゃんに笑われた。

「‥なんか、羨ましいな。来海どんどん可愛くなってくね」
「ほ、ほんと‥?嬉しいけど‥でも琴ちゃんはずっと素敵だよ。こちらこそ羨ましいよ‥」
「そう?ありがと」

にひ、といたずらっ子みたいに笑った琴ちゃんは、でもなあ‥と言葉を濁したまま黙ってしまった。机に肘をついてジュースを啜る横顔が同年代の女の子とは思えなくて、私も思わず溜息を吐いてしまう。綺麗になりたいなあ‥と思うのが東峰君のせいだとしたら、やはりこれは恋だ。しかも相当重症かもしれない。

2017.07.09

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