「烏野の女子は、潔子さん筆頭にレベルが高い。いや分かってはいたことだ。だが俺は、知里さんと出会ってそれを再認識した!!」
「ノヤっさん‥!!!!」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと食べろよー西谷、田中ー。片付けできないだろー」

本日5月5日、夕食時。初日から飯の手伝いをしてくれている同じクラスの知里は、なんだかんだ全日程時間を割いて来てくれていた。もちろん最終日の明日も来てくれる予定である。煩い馬鹿2人を牽制しつつ台所に目をやると、清水と知里が楽しそうに皿洗いしていた。そこだけ花園である。禁断とは言わないが、良い匂いがしそうだ。食的な意味ではない。

「清水ー、知里ー、先生から超人気プリンの差し入れあるべー」
「知里さん、こっちももう終わるから先に貰ってきていいよ」
「し、清水さんと一緒に食べるから!!」
「‥というわけで菅原、私達後で貰いに行く」
「なんだよー、2人共すげー仲良くなってさー。スガさん寂しいべー」
「じゃあ菅原君も後で一緒に食べようよ」
「まじで?じゃあそうする」
「グッフォ」

やべ、米が喉の奥に詰まった。

「え、どうしたの澤村‥」
「い、いや‥スマンなんでもない‥」

物凄くナチュラルに花園へ入って行ったスガに、なんとなく視線を寄せる。流石というべきか、なんというべきか。そして、極自然に知里の隣に行くという‥‥何度も言わせてほしい。流石スガである。3人纏まっていると、なんだかスガが知里達と同性に見えてくるような気がするのは俺だけだろうか。

「あ、ちょっと待って、東峰君食べ終わったみたいだからお皿下げてくるね」
「えっ」

おお、スガのキョトン顔が炸裂している。そういえば、合宿中何かと知里は旭と喋ってるよなあ。休憩中とか、なんなら旭がちょっと突き指して困ってる時とか、マジでよく見てる。しかも、旭も満更でもないし。‥‥‥んん?なんだ、それはもしかしたら好意の表れではないのか、しかもお互いに。そう考えた所でスガのことを思い出し、考えるのをやめた。

「東峰君、お皿片付けても大丈夫?」
「え、いいよ、俺自分でやれるから。それより先生がプリンあるって言ってたよ」
「う、うん、菅原君からさっき聞いた。後で清水さんと菅原君と一緒に食べるつもりだから」
「あ、そっか‥」

おいおい旭、あからさまにシュンってして見えるんだが?そんな光景を見ているであろうスガへと視線を向けてみると、なんてことはない、清水と話し込んでいた。あまり心配する必要もない‥‥か。多分だけど。

「明日、練習試合なんだよね?私他校との試合とか見るの初めてだから楽しみ!相手ってどこの高校なの?常波とか?」
「東京の音駒高校って学校だよ」
「東京!ひえ〜‥凄いね‥東京からわざわざ来てくださるのですか‥」
「俺達も吃驚したよ。それに、音駒とは昔よく練習試合してたみたいだし、久しぶりの再戦なんだ。まあ、とは言え、俺達は初めて音駒と練習試合するんだけどね」
「へえ〜」

旭の食器を下げに行った筈の知里は、その旭と楽しそうに会話を続けている。これは、俺はこれからどういう気持ちで過ごせばいいんだろうか。スガが知里のことを好きなのは知っている。が、見た感じ知里が旭に惹かれているのもなんとなく分かるし、旭もやはり、‥うん。

「まあ、俺はなるようになるのを静かに見守るしかないよなあ‥」

色恋沙汰なんて、他人が口出すことでもないしな。とりあえず、俺は先にプリンを食べよう。

2017.02.19

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