風影直々の任務でございますか?

「美味いか?」
「むごっ」

我愛羅様、つい先日会った時よりも格段に積極的なんですけど。おい誰だ我愛羅様が奥手だとかほざいてた奴は(情報源は主に噂である)。あたしの目が覚めて帰るかと思いきや、足元に置いていた袋をガサガサしだして中身を取り出し、口元にきな粉餅をぶっさしたフォークを(強く)当てて無理矢理食べさせたんだよこの人。口開けるしかないじゃん。っていうかこれ、超有名店のきな粉餅だよね。うっま!‥じゃなくて!

「むやみに押し付けないでくださいよ、我愛羅様の容赦ない押し付け攻撃により口の周りきな粉だらけなんですよーほらほら」
「…すまない。こういうことは勝手が分からなくてな」
「…」

あれか、積極的じゃなくてただ強引っていうんだなこれは。むぐむぐと頬張っていると、ご丁寧に我愛羅様の指があたしの口元を拭ってくれた。あたしは子供ですか?いや子供ですけどそんな歳じゃないよ。

「仕事あるんじゃないんですかー?こんな所でのんびりしてたら風影としての威厳を損ないますよー」
「問題ない。全てカンクロウに任せてきた」
「…風影という名の鬼ですねー」

カンクローってあれか、前に1回会った顔にラクガキの施された目の前の人物の兄貴…っていうか兄貴威厳無‥。ぼんやりと顔を思い浮かべながらなんとも可哀想な立ち位置にいる兄貴だと苦笑いをしていると、少し気まずそうな音をたてて病室のドアが開く。耐えるのが辛い空気から逃れられるぞとばっとドアへ視線を寄せると、何故か私以上に気まずそうな2人の忍がいた。

「冗談かもと思ってたら全然冗談じゃねえのかよ…」
「えーっと…我愛羅さん、すぐ退室するからごめんなさいね。マトイ、これ見舞い品」
「サクラさん、シカマルさんー!!」

幸運の助け舟!とばかりにサクラさんからフルーツの入った籠を受け取り、後ろの棚の上へ置くと逃がさないようにサクラさんの腕でも袖でもなんでもいいから掴もうとしたが、それと同時にサクラさんはささっとあたしから離れていった。

「じゃ、俺等はこれで」
「悪いな」
「いやなんで我愛羅様が返事すんですか!っていうか2人共そんなさっさと帰らなくてもいいじゃないっすかー!!」
「我愛羅との時間を邪魔するわけにゃいかねーだろ」
「そうそう。それに中々いい感じの雰囲気見せられたらねえ…」
「いやもー全然邪魔じゃないしー…ってどこが!?」
「どこがって…とにかく私達はお邪魔でしょ?我愛羅さん」
「悪いな」
「まてコラー!あたしの意見も大事にしましょうよホントなんなの!?」

あたしの叫びも虚しく、会話もそこそこに颯爽と部屋から出て行ったサクラさんとシカマルさん。サクラさんなんて可愛くウィンクしてたし、おいシカマルさんめんどくせーじゃないっつーの。あたしが一番面倒だっつーの。つーかどこがいい感じの雰囲気だったか教えてもらってもいいですか。サクラさんの何かを掴もうとしていたあたしの手が行き場を失くして彷徨っていると、突然我愛羅様が真面目に言葉を切り出した。

「それより、マトイが倒れた理由を聞いたが…お前、木の葉の里で特殊な術を扱う忍らしいな。その力を使い過ぎたのだとか」
「また綱手サン情報ですかー?」
「ああ。だが、噂は聞いていた。広い範囲内の"声"を盗み聞ける忍がいるということは…それがマトイだとは知らなかったが」
「まどろっこしいですよー何が言いたいんですかー」
「数日でいい。少し砂にも力を貸してくれないか?」
「はあ………は!?」

なんだ急に!!あ、もしかしてあたしを嫁に欲しがってた理由ってこういうこと?だったら最初からそう言ってくれればいいのになんてめんど「今マトイが考えていることは全くもって違うからな。お前のことは本気で嫁に欲しいと思っている。それとはまた別問題だ」…。

人の心を読みやがって…ひくりと口元を歪ませるるも、とりあえず落ち着いて我愛羅様の話を聞くことにして、あたしは面倒くさ気に背を猫背に丸めた。

2014.05.01

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