2重労働任務

「気張って行ってこい!!」
「………」

早朝から私の足が重い。いや、重すぎる。黒のリュックサックを背に見送る人影が1つ2つ。もちろんその人は5代目火影という名の怪力鬼ばーさんとその側近であるシズネさん。あたしのお供として隣に立っているのは2個上のテンテンさんとリーさんだ。

「マトイさんとの任務は初めてですね、よろしくお願いします!」
「っていうかマトイ、さっきからすっごい顔してるけどどうしたの?」
「心底行きたくないと思ってるんですよー…」
「馬鹿者。今回は任務だろうが、私情を挟むな!」
「まあまあ綱手様…マトイもそれは分かっていると思いますから…」

はぁ…と深く溜息を吐き出すとリュックサックとは違う重みが肩を襲う。つーかあたし昨日退院したばっかですけどなにこれどんな嫌がらせですかね。これでも人の為里の為にチャクラを使い果たしたのが3日前だよ?あと1週間くらい休みほしかったんですけどー。まず何故こんなことになっているのか説明をしていいだろうか。それはもちろん2日前に自分の仕事を放り出して私の入院見舞いに来ていた風の国、砂隠れの里のお偉い様の言葉が事の発端である。

「盗賊が砂に紛れてる?」
「ああ。最近商店街や住宅に忍び込み、金目の物が盗まれるという事件が頻発していてな。里内の警備は厳重にしているんだが一向に捕まる気配がない。だが…どうやら砂に少数スパイがいるという情報があるんだ」
「はあ」
「ただそれが本当に砂の忍であるのかも分からない…逃げ足も早く他人に成りすますのを得意としているようでな。正直手の打ちようがなくて困っている」
「えー?結構簡単そーじゃないですかー。忍を1人1人調査したらどーですー?」
「砂にどれだけの忍がいると思っているんだ。それにお前なら微かな声も聞き逃すことなく相手の動きを知ることができるだろう」
「んーーーーーーーー……まあ…」
「3日程でいい。砂で盗賊の調査任務を受けてくれないか」
「いやーあたしこれでも木の葉に必要な人材というかなんというかー…3日も里を空けるとなると仕事もあるしー…綱手サンもおっけーしないと思いますよー?」
「火影から承諾を得れば問題ないんだな?」
「そーですけどー、無理無理絶対無理ー。あたしまだイビキ特上忍から請け負った仕事も残ってるしー」
「分かった」

とまあこんな感じで話しを終えて我愛羅様は病室を去った訳だが、その翌日無事に退院することができたあたしを待っていたのはにこやかな綱手サンの笑顔と砂隠れへの任務通達が綴られた一枚の紙切れだったのである。

「任務ついでに仲でも深めて来い」

余計なお世話だこら!!と、叫びつつの今の状況…と。つーか私情挟むなって言っといて綱手サンの私情バリバリ挟んでるよねこれ。

「それでは行ってきます!」
「頼むぞ。リー、テンテン」
「はい!それじゃー出発しますかー!」
「ああ……当分サヨナラ平和な木の葉……」

意気揚々とあたしの前を歩く2人の忍を視界に入れて、観念して足を踏み出した。








「そういえばマトイって我愛羅から求婚されたんだって〜?やる気なさそうな顔してやるわねー!」
「いーやいやもーほんとにそんなつもりないっていうかねー……ってどーしたんですかー?テンテンさん。そんなに目をキラキラさせて…」
「ううん、あの我愛羅がねーと思って。ねーリー?」
「そうですね。あの我愛羅君が女性を好きになるとは…時代は変わるものです」
「あんた何10年生きてるお爺さんなのよ」
「そんなに仲のいい間柄…あーそっかー、テンテンさんとリーさんって中忍試験1年遅れて受けたから我愛羅様のこと割とよく知ってるんですねー」
「まーね。…って、なんでそんなことマトイが知ってるのよ」
「情報通ですからー」
「あんたの怖いわー…で?今日は任務がてら我愛羅に会いにー!みたいな感じなの?」
「いや普通に任務「それはそうですよテンテン。好きな方が同じ里に住む僕でさえ会いたい気持ちが毎日あるんですから!遠距離と言えば尚更です!」って話し聞いてーリーさーん」

さくさくと森の中を歩きながら、テンテンさんが興味深々に我愛羅様のことを聞いてくる様子に段々と面倒くさくなってくる。しかし1番面倒なのはこの緑タイツだ。なんで我愛羅様と両想いになってる流れなんだ。

「とにかくさっさと任務終わらせて一目散に帰還しますから2人とも余計なことだけはしないでくださいねー」
「余計なことなんてしませんよ。僕等に任せてください!」
「それが怖いんですよー…」

目を輝かせるリーさんから視線を外しテンテンさんをちらりと盗み見たが、テンテンさんも割と乗り気な様子だ。あたしの味方はどこに。こうなったら何かされる前に全ての仕事をさっさと終わらせてやると意気込んだあたしは、面倒くさいという思いを投げ捨ててずんずんと歩みを速めていった。

2014.05.04

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