愛しい貴方に愛を込めて



「寒いね、」

隣を歩いていた名前ちゃんがハァと白い息を手に吹きかけていて、そわそわしながらその光景を見ていた。

お正月。
数え年で十七になった俺や一つ下の炭治郎、伊之助と共にお節を食べたりしたあの頃。懐かしいなと思いを馳せながら今はあの頃の面影もない気温に参ってしまう。ミンミンジリジリ、普通の人はなんとも思わないだろう音も耳を劈くように聞こえてたまらない。

九月三日。これは俺の産まれた日、だと思う。その事を口にしたら名前ちゃんや炭治郎たちが「おめでとう」と言ってくれて胸が擽ったく、あまりにも幸せでその日をるんるんで過ごしたのを覚えている。大好きな彼女の名前ちゃんや大事な家族みたいな仲間の炭治郎や伊之助。蝶屋敷のみんなも会うと口々に「おめでとう」と嘘のない音で紡いでくれた。

九月七日。今日。
あの誕生日から四日ほど過ぎた頃、任務終わりの名前ちゃんを連れていつもの花畑へと腰を下ろす。場所も時間帯も同じなのに一人で花を摘みに来るのとは大違いだ。名前ちゃんがいるだけでこの場所が天国に思えてくるし、えっさほいさとちまちま作った色とりどりの花冠を乗せた名前ちゃんは天の使いかと思える。天使過ぎない??

「善逸、あのさ」
「なぁに〜?」
「これはい。どうぞ。」

名前ちゃんは花冠を頭に乗せたままこちらへ箱を渡してきた。目線でこれは?と訴えてみたけれど、ニコニコしているだけで……ウッ……可愛すぎて心臓がまろびでるかとおもった……

「善逸へのお誕生日の贈り物。」
「俺、への?」
「うん、そうだよ。それは善逸に。」

自慢ではないが俺は今まで女の子に何か、物を貰った記憶が無い。あげた記憶はたくさんあるしそれを思い出すと必ずと言っていいほど苦い思い出と騙している女の子たちの音も思い出す。良いように騙されて貢がされたあの頃の事を。
でも今はどうだろう?こんな情けない俺を好きだと言ってくれて、炭治郎のような優しい音を向けてくれる女の子がいる。名前ちゃんは俺が名前ちゃんに貢ぐことを良しとしないし、甘味処へ行っても後からお金を袖の中へと無理矢理突っ込んでくる。欲しいものも自分で買えると言って買ってしまうし、贈り物をしたらありがとうと言ってはくれるけれどどことなく申し訳なさそうにしている。俺がお金を使うことに抵抗があるのか、今までの女の子とは真逆なほど違っていた。

「善逸、善逸が今までどんな生活をしていたかとかなんとなくしかわからないけれど、私は善逸が好きだから、大丈夫だよ。」

遅れちゃったけれど、お誕生日おめでとうございます。産まれてきてくれてありがとう。

「も〜……狡いなぁ、名前ちゃん……っ」

名前ちゃんを引き寄せて抱きしめる。力が強いとか色々聞こえるけれど絶対緩めないから。

「ありがとう、名前ちゃん。俺も名前ちゃんもことが大好きだよ。」

ソッとこめかみに唇を寄せた。

fin


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