透明傘 | ナノ
7



湊さんは髪が茶髪だ。
どっちかといったら、暗めの茶色なんだけど。割と黒に近い感じの。

染めてんの?と聞いたら、地毛と言っていた。


美形は生まれつき格好いい髪色のまま生まれてくるのだろうか。
少し羨ましい。


「は?髪染めたい?馬鹿言ってんじゃねーよ。」


髪染めたいと言ってみたらそんな事を言われた。

……湊さんに言わなければ良かった。
チッと小さく舌打ちする


「…んな怒んなって。」


俺の後ろでテレビを見てる湊さん
俺の不貞腐れた様子を見て頭をわしゃわしゃしてきた。


餓鬼扱いが一番嫌い。
実際ガキだからなんだろうけど。


「いいじゃんこの黒髪。滅多にいねーだろこんな綺麗な髪持つヤツ。」

「俺自分のこの真っ黒の髪って好きじゃねぇの。」


湊さんの横にいると一目瞭然だ
俺の髪は完全に日本男児色

俺は好きなんだけどなぁ、と髪を掬う湊さん
……テレビに集中出来ねぇ。


「お前肌しっろいからな。余計に…。」

「今度日焼けサロンにでも行ってくるかな。」

「勘弁してくれ。」


冗談だっつーの。


湊さんの髪が羨ましい。
この一年でかなり思うようになっていた。


憧れ?
たぶん、それ。


「俺が好きなだけじゃダメ?」


なに言ってんだこの人。


「もーいいよ。忘れて今の。」

「双葉、俺に内緒で髪染めてきやがったら丸刈りにするからな。」


…………それは嫌だ。
チラリと後ろを見てみると本気の様子の彼

マジだこの人


「過保護すぎんだろ、湊さん。あー、もー!髪触るな!」

「はっはっは。」


頭が揺れる程わしゃわしゃされる
くぅ…!


「風呂入ってくる…。」


なんだか疲れた。
立ち上がるついでに湊さんを一発叩く


「いてっ」


仕返しだ。


バーカバーカと俺の背中に叫ぶ湊さん
……子供か。

ほんと、会社でクールと言われてるのが信じられない。



prev mokuji next
bkm