透明傘 | ナノ
2


朝5時半


いつも以上に薄暗い朝
その理由は雨が降っているからで。

おかげで耳障りな音に目が覚めてしまった


今日も俺の嫌いな天気みたい。


「あれ……起きんの早いな。」


キッチンに立ってボーと外を眺めていたら、少し掠れている聞きなれた声が響いた。
チラリとそちらの方に目をやると、だらしない格好で欠伸をしているこの家の主がいて。


「………はよ。」

「おはよーさん。」


無愛想な俺の挨拶に、家主である湊さんが眠そうな顔で返す。
寝起きだからか微笑んでもやっぱりなんか、パッとしない。


つか、眠そう。
絶対仕事疲れだ。


「昨日何時に寝たの?」

「2時。」


2時だと…?
実質三時間くらいしか寝れてないじゃんか。

湊さんの返事に色々言いたいことはあるが、それを飲み込む。


「…仕事はほどほどにしろよ。」

「はいはい。」


俺より9歳年上の湊さん
ちなみに俺の従兄弟

訳あって、この人の家に居候させてもらっている。


「あ、そうだ。」


数十分後、顔を洗ってさっぱりした様子の湊さんがキッチンにやってきた。
俺の従兄弟のはずなのに、超美形なのがむかつく。
何故こうも似てないのだろう。


「なに。」

「今日の朝飯なにかなって思って。」

「…普通だけど。」


大抵俺が家事をやってる。
湊さんは無理すんなと言うけど、こういう事は居候してる俺がやるのが普通だと思うし。


「美味そう」、と言って鼻唄を歌いながらまた洗面所に行った湊さんは26歳とは思えない。若いっていうか残念というか。何かパッとしない。


「今日、送ってってやろうか。」


朝御飯を食べているとき、湊さんが何気なく言ってきた。


「いいよ、別に。」


雨の日だから、気を使ってんのかな。
あれから一年経ったのに。


「ついでだし乗ってけ。」


ごちそうさま、と言って俺の頭をワシャワシャしながら立ち上がった、彼の有無を言わせない態度

スーツを着ている湊さんはやっぱり大人に見える
なんか悔しいというか…まあ、イケメンだし。


「…じゃあ、よろしく。」

「おう。」


雨の日は甘えさせてもらおう。
湊さんにお願いした。




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bkm