透明傘 | ナノ
4



「いいからされてろ。」

「…じゃ、お言葉に甘えて。」


湊さんがそんな意外そうな顔をするからなんか恥ずかしいじゃないか。
想像していた通りがっしりしている肩を掴む
松本ですらここまでしっかりとしてないと思うんだけど


「湊さん、部活なにやってたの」

「あー…中高大ってずっとバスケ部」

「へー…」


通りでがっちりしてるわけだ。
てか今も筋トレ時々やってるのみるけど、こんな体形維持できるもんなの?

湊さんの言葉に驚きつつ指圧していく
固い。大分凝ってる。


「んー…もーちょい右」

「ここ?」

「ん、そこ。」


きもちいー、と甘い声を漏らす湊さん
…エロい。やめてほしい。

言われた通りの場所をグッグッと力を押す
時々筋肉を緩ませるようにトントンと叩いたり


「いっそのこと俺の事踏んでいいよ」

「え。」

「いやMとかそういうんじゃねえから。」


あ、そう…
俺はてっきり。


「でも俺大分重いぞ?」


小さいときは親父を踏んだりしてたけど、さすがに…


「いいよ重い方が圧力くんだろ」


湊さんの言葉に本当かなあって思いながらふーんと相づちを打つ

すると湊さんもうつ伏せになって寝た
やっぱ背中広いなこいつ


「踏みまーす」

「どーぞ。」


さすがに両足はちょっとあれなので片足づつにした
指も使って凝ってるところを解す


「んー…」

「気持ちいい?」

「イイ。」


そう言いながらヘラと頬を緩めた彼
なんだか慣れない上目使いだ…


「両足でやってよ」

「えー。」

「いいから。」


湊さんの言葉に仕方なく乗っかる
両手でバランスを取りつつ踏む


「ほんとに重くねえ?」

「男にしては軽すぎ」

「筋肉なくて悪かったなバーカ」


鼻で笑われたことに少しイラッてして思いきり踏んでみた

案の定「う゛っ」と苦しそうな声を上げる湊さん


「別にマッチョよりはいいだろーが」

「細マッチョになりたい」


どうやったら筋肉つくんだ俺の腹筋
部活やってねーからこういうことになるのか。畜生。


「もうちょい下やって」

「おう。」


言われた通りの場所を少し足を下げ、少しずつ踏んでいく
なかなか上手いんじゃねえの、俺。


が。

調子のったのが失敗だった。


「のわっ!!!」

「っっぃい゛いいッッッ!!!」


バランス崩して倒れてしまった。

俺よりも数倍ひどい声をあげて苦しむ湊さん
対しておれは湊さんに馬乗りしているような状況で上半身は倒れてる

び、ビビった…


「死ぬかと思った…」

「それ俺のセリフな。」


くるりと体を反転させゲンナリした様子で俺を見上げてくる湊さん

……あ。酒の匂い。

それを感じてしまうほど距離が近かったことに気づく
近くで見ても醜いと思わないほどの整った顔

…見慣れてる。
見慣れてるはずなのに、


「うわ。」

「あ?」


思わず全力で体を起こしてしまった

…あれ?


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bkm