透明傘 | ナノ
5


あれ

なんか
体が

あつ…


「双葉?」

「!」


湊さんの怪訝そうな声に慌てて現実に戻る

あ…………


「い、や。なんでもねえよ。」


ドクドク煩い心臓をなるべく意識しないように体を起こす

なんだこれ
なんだこれ

まるでマラソンをしたときのような鼓動の早さに自分でもびっくりする

え、まじでなにこれ。


「…、湊さんは大丈夫?」


落ち着かない心臓で湊さんに問う
頭まで熱い


「あー、感想を言うと骨折れるかとおもった」


内心焦ってる俺とは裏腹に、いつも通りの湊さんが腰を押さえながら立ち上がる。

けれど、俺がのっかてて退けないらしく動きが止まった


「どいてえー」

「あ、ご、ごめん」


あからさまにどいちゃう俺。
なんかおかしい。

てか、なんなんだ。びっくりしたにいてはうるせえなこの心臓
フゥと息を吐くけど治まりそうにない。


「いや、なに真に受けてんだおまえ。」


そんな俺を驚愕したように見つめる湊さん。
んだよ。素直に謝った俺が珍しいってか

つか、今はあまりみないでほしい。


「…俺もう肩揉みしない」

「…えぇえ…」


そう言いながらそっぽ向いたら至極残念そうな声を上げられた。
そんな声を上げられたって俺の気持ちは変わらねえよ


「風呂入ってくる」


あー。
俺、なに、ほんと、どうしたんだよ…

頭をガシガシしてみるも、なんの変化なし
逃げるように慌てて風呂に逃げた。

そんな俺に「いってらー」と声をかける湊さん
プシュッて音がしたからまた新しい缶を開けたのだろう

………どんだけ飲む気なんだ

文句をつけようと思ったけれど、
振り向くことができずに終わる

なんか、湊さんを直視できないような気がしたから。


顔が近づいたことなんてしょっちゅうなのに、

体が密着したことなんてしょっちゅうなのに、

とっさに腰を支えてくれていた湊さんの手の感覚が、なかなか抜けない。


………なんか俺変かも。




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bkm