透明傘 | ナノ
15


「トイレ?」

「おぉ、ちょっくら行ってくるわ。双葉は?」

「いい。俺ここで待ってるから。」


ラーメンを食べ終わって店を出たとき湊さんがそんなことを言ってきた。
トイレはかなり混雑していて俺は近くの壁によりかかる

ついでに荷物を持ちながら。

ってか、重っ!
こんなの持ちながら歩いてたのかあの人…!

涼しい顔してたから気づかなかった。
悪いことしたな…

と重いながら袋をガサガサさせてたら何やら視線

ふと気になって顔を上げてみるけど、通りがけの女性たちがこちらを見ていた

え、なに
怖いんだけど…。

慌てて視線を下げる

なんで俺見られてんの?
こんな格好してるから?
うわ、なんか恥ずかしい死にたい

湊さん早く来ねぇかな…
トントンと指で足を叩く

そんな時、


「ね、ね、高校生?」

「一人なの?」


へ。
二人組の女性が俺に話しかけてきた


!?


「え、あ?」


突然の事に俺は唖然としかできない
だって、知らない人だし、年上だし…


「あはは、カワイー!」

「初めて?」


いやなにがだよ。


「いや、あの俺…。」


「お姉さん達暇なんだあ。ちょっとだけでいいから買い物付き合ってくれない?あ、ランチでもいーよん。」


「えー…と?」


どっちもやだ。
てかラーメン食べました。

お姉さん達に苦笑しかでない。


いやあ、はっは。
これはアレだね。
逆ナンというやつだね!

はじめて頂きました、ありがとうございます。


「すんません、俺、連れが……。」

「連れって女?」

「いや、男……。」

「あっ、じゃあ丁度いいじゃん!その子も一緒に遊ぼうよ。ね?」


強引に俺の腕を引くお姉さん

……困った。俺はこういう経験0だからかわし方もわかんない。
湊さんはまだなのかよ…!

焦って顔を上げる

すると、ちょうどこちらに向かって歩いてくる湊さんの姿が。





パア、と明るい顔になる俺
に対してスゴい勢いで眉間に皺を寄せた湊さん


………ごめんなさい。


「あの、俺ホント…!」

「えぇ〜いいじゃん別にぃ!」


よくない。主に湊さんが。
もしかしたら俺が死ぬ

ほら見てみろ、めっちゃこっちにらんできてるよ俺悪くないのに…

ツカツカ俺に歩みよる彼

どうやら俺は見捨てないみたい。ホッ


「ねえ君たち。」

「ん?この子のおともだ…っ!?」


湊さんの顔を見てハッとした様子の彼女達

そりゃあそうだよ。


「何か用?」


目の前に俺の数倍イケメンで、年上の人が連れだったんだから。
しかも女なら一発で落ちる満面の笑顔を浮かべてる。


「あ、えっと、私たち…。」


真っ赤になって焦り始める彼女
ハハハ、なんか悔しいのは気のせいだろうか。


「…失礼ですが、おいくつですか?」

「え゛、ちょ、湊さっ……。」


断るかと思っていたのに、歳を聞くなんてどうかしてる。おかげで変な声がでちゃったじゃねーか。


「えと、19……です。」

「私も…。」


大学生なのか。ふーん。まあそうだろうな。
湊さんの表情を見てみると相変わらず笑顔
こういうの慣れてんのかなってくらい、普通。

けれども、そのあと、あー…湊さんらしい、って言葉が続いた。


「19か。悪いな、俺年下に興味ねーんだわ。」


笑顔のままニッコリ呟いた湊さん
つまり、いなくなれってこと。

………うん。怖い。


「………湊さん。」

「あー?」


俺が湊さんを呼んだときには、あの女の人たちはいなくなっていて。

今は普通の湊さんみたい。


「大人げなくない?」

「うっせーよ。」


フッ、と鼻で笑われてさりげなく荷物を持たれる
……別に俺持ったままでいいのに。


「半分持つよ。」と言ってみたけど「女じゃあるまいし持てるわ」と避けられてしまった。


いや俺だって女じゃねえんだけど


「お前な。ああいうのははっきり断れ。それかシカトしろ」

「だって俺湊さんと違って慣れてねーし。」


相手年上だったし?
断れるほどの技は習得してません。


「あー。」

「………なんだよその憐れんだ目は…!見るな!」


この野郎!
湊さんの目を必死に両手で隠すが、片手で横に逸らされる。

しかもニヤニヤしながら。


「もしかしてナンパ初めて?」

「うっせえ!」


わかってんなら聞くなよ!
流された手を引き戻し前に足を進める


「おーい、どこ行くんだよ。」

「・・・。」


場所わかんねぇんだった。



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bkm