透明傘 | ナノ
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「……………なんでまだ寝てんだよ。」



約束通りの昼前、つまり11時に家に来てみたものの、湊さんは爆睡中。


そういや昨日も疲れてたみたいだしな…。
叩き起こそうと振り上げた足を静かに下ろす


「ん?」


ふと湊さんが抱いてる布団を見てみたら、湊さんがいつも使ってる黒い布団ではなく青い布団で。


……つまり、俺の布団。



「・・・。」


うわあ…。
ちょっと…いや、かなり引く。


いくら俺がいないからって俺の布団使うのってどーよ。



「う゛っ!」



さっき下げた足をもう一度上げて脇腹に下ろしてみた
かなり苦しげな声を上げたけど、まあいいだろう。

う゛ーん、と唸る湊さんを置いて風呂に行く


昨日途中で寝ちゃって風呂入るタイミング逃しちゃったからな









風呂上がり

頭にタオルを乗っけながら昼飯を作る
あんな変態だとは思わなかったけど、家主は家主。
作ってやらなければならない。


炒飯を適当に作り、机に並べてから変態を起こしに行く



……しっかり頭埋めやがって…。

顔を布団の中に埋めている湊さんを見てため息が漏れた



「おい湊さん起きて」

「ん゛ー」

「昼だぞ起ーきーてー。」

「った、ちょイテェ!」


布団のなかに隠れようとする湊さんに何度も蹴りを入れる
降参したのか、「起きる起きる!」と切羽詰まった声で言われた。

ガバッと布団から出た湊さんはやっぱり間抜け
寝癖がひどい。

せっかくのイケメンが。



「…あ?双葉?」

「おはよう。」


俺の姿に驚いてるのか、俺の姿を見てパチクリしてる湊さん。
ボケーと俺の顔を見てる
なんだその顔は。


「なんだよ。」

「………別に。」


決まりの悪そうな顔をしてるけど、寝癖ついてる時点で決まってないぞ。
ガジガジと頭を掻いてる姿はおっさんくさいし。


「つか、なんで俺の布団使ってんだよ。変態か。」

「……よくわかってんじゃねーか。」


うわあ。

開き直ってんのか、ニヤと笑って俺の頭をワシャワシャしてきた湊さん

引くわ…。


「おっさんになると人肌寂しくなるのよ」


自分でおっさんって認めるのか。


「だからって俺の布団を………あー、もういい。顔洗ってきて!」

「はいはい。あ、炒飯。」


湊さんのせいで炒飯冷めちゃったじゃないか。
もう。




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bkm