誤算、伝染中 | ナノ
13




ばっ、

ばっ、


ば!!!!!!?



「馬鹿じゃねえの!!!!」


気づいたら頭より先に体が動いていた
バーンと思い切り千歳を突き飛ばしながら立ち上がる
全身から汗が吹き出してんじゃないかって思うほど、
熱い、熱い、熱い!!


なんでこいつキスなんてしてきたんだよ!!!?


ソファに突き飛ばされた千歳が倒れた状態のまま俺を見上げて笑った


「真っ赤だな」

「そりゃあ、キスを突然されたら誰だってな!」

「突然じゃなかったらそこまでなんねえの?」


腕を掴まれ嫌な予感がした。
俺を引っ張って、身体を起こそうとする千歳。対して俺は引っ張られたことによって千歳に近づいていくことになる。意地の悪い表情を浮かべてる奴の顔が近づいてきて俺はパニックに陥った。


う、


「うわぁああああッッッ!!!!」


とにかく俺は必死だった。
また唇を奪われて堪るかと、必死になって叫んだ。意味ないけど。

その中で、偶然視界に入ったコーヒーカップ
さっき千歳がのんでいたもの。


気づけば俺は、掴まれていない方の手でそれを掴み、

千歳の顔面に向かって思いっきりコーヒーをかけていた。



「・・・。」



ビシャァッと完全にコーヒーを浴びた千歳。
イケメンの顔面がコーヒーまみれになり、部屋がコーヒーの匂いで満たされる。

俺は何にも悪くねえ!!!


「ざまあみろ!」


シャツにコーヒーの水滴がボタボタと垂れている千歳に向かってそう吐き捨てた
そのままダッシュで千歳から逃げるようにして生徒会室から出る


あ、あ、あの野郎・・・!!
いくら俺があいつに対して反応が鈍いからってあんなことを!!

あんな!!
キスなんか!!!
幼馴染に!!

ダッシュをしてるつもりだけれど、足を怪我してるから間抜けな感じになっている俺。しかももともと足も遅いから余計奇妙な動きになっている

でもまああいつにはコーヒーをかけてやったし、なかなか生徒会室から出られないだろう。ざまあ。俺にキスなんかしてくるからだボケ。


とか言ってるけど、俺前に喜びの余り真澄にめっちゃキスしたっけな・・・。
そうか、真澄はこんな気持ちだったのか
する側からしたらキスしたところでなんも思わないけど、されるとなると違うんだな。そりゃ怒るよ…。俺の場合おでこと頬っぺただったけど

あの時唇にキスしなくてよかった。まじで犯されてたかもしれない。むしろ殺されてたかも。


「最悪・・・」


今日の生徒会俺どんな顔してあいつに会えばいいんだ。

なるべく会いたくないんですけど。
そんなわけにはいかない。



そんでもって、放課後。



生徒会室に入った真澄は眉を寄せた


「なんかコーヒーくさくない?やたら」

「い、いつもこんなもんだろ」


俺がやったなんて言えないので、適当に誤魔化した。
たしかにすげー、コーヒーくさい。あいつちゃんと掃除したのかよ

ソファの方に行ってみると、コーヒーの痕跡はなかった。
えぇ・・・、どうしよう、このソファにコーヒーしみちゃってたら・・・。
本革じゃん、ちゃんと拭いたかなあいつ。


でも、まあ、俺の知ったことじゃねーか。
あいつが悪いんだし。


「うわ」


そんな時、真澄が驚いた声を出した
ゴミ箱の前で固まっている。


なんだ。


「ゴミ箱になんか入ってたの?」


真澄の背後からゴミ箱を覗く
が、その中身を見てヒョェッてなった。


「誰のワイシャツ?これ・・・」

「さ、さあ…」


まさかの、コーヒーまみれのシャツがゴミ箱に捨てられていた。
誰の?って聞かれて知らん、って言ったけど誰だかわかる。千歳のだ。

あ、あいつシャツ捨てたのかよ…!確かにそういうことしそうだけど!
ってことは、あいつ上裸で廊下でたわけ?あ、Tシャツ着てるか。


「大きさ的に有岡さんじゃないよね?紫乃さんか会長?なんでこんなコーヒー・・・」

「うーん、知らない。」

「知らねーはないだろ」


「ギャアアアアッッ!!」


耳元で突然千歳の声がして真澄に抱き付いた。
ゴンッ、て真澄の頭に腕がぶつかった気がしたけどそれどころではない。いつのまに千歳いたんだ、俺を殺すつもりかこいつ


「ちょっと、涼・・・」

「ご、ごめんよ!千歳が、ち、ち、」


ウワァアアア近づくなぁあああ!!!
思いのほか千歳にキスされたのがショックだったらしい俺。
当時の事がフラッシュバックして、あの柔らかい唇とコーヒーの香りを思い出してしまう。
もう俺チョコフロランタン食べれねえよ!!


「はあ?なにお前。面白すぎだろ」

「あああああっちいけ馬鹿ー!!」


俺の反応が相当面白いらしく、千歳が軽快に笑ってる。むかつく!!俺はこんななのに楽しそうな顔しやがって!!

真澄の胸に顔を埋めて必死に千歳を視界から抹消する
とにかくコーヒーの匂いはしばらくかぎたくない、思い出す。
真澄の匂いをとにかく肺に取り込んだ


「・・・なにかあったんですか」


俺の頭を撫でながら、静かな声でそう千歳にきいた真澄

何か。
いや、その内容も言って欲しくない。

だってバレたくないだろ、キスしたとかそんなん。


「別に、キ「言うな、殺すぞ」


すんなり答えようとした千歳の胸倉を思いっきり掴んだ
頭おかしいんじゃねえかこいつ、普通言わねーからそういうのぶっ飛ばすぞ


「へえ、俺を?」


千歳の胸倉にある手を掴みながら、千歳が挑戦的な笑みを浮かべて俺を見下ろしてきた
バッチリ目が合ってしまって、視線の逃げ場を失う。しかも、手。

手、

握られ、


ウッッ


「触るな変態!!」


顔に熱が集まってきたのがわかったから、慌てて手を振りほどいた
千歳から距離を取るようにして、窓側へと逃げる

そんな俺を見て、千歳はやっぱり可笑しそうに笑っていた。

まっ・・・・・じで・・・・
むかつくなこいつ・・・・。

こいつにとっちゃキスなんて大したことじゃねーんだよな。
俺がこういう反応するの見て楽しんでる。完全に。
俺も意識しなければいいんだよな、しょせんキス。挨拶だと思えばなんてことない。

俺だって有頂天になった時真澄とキスできるもん。
しょせんそんなレベルだ、狼狽えるな、俺。




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bkm