誤算、伝染中 | ナノ
09



侑くんに心配されたことが嬉しくて嬉しくて口を抑えて悶える

け、怪我して良かったー!
しかもなんか今日侑くんといっぱい喋れてない俺!!?朝に続いて放課後まで!最高にハッピー!!

本当に嬉しくてまた大好きと言いそうになる。でも口に出したらまた気持ち悪いって言われちゃうから言わない!


「どーぞ、侑くん!」


一応他のメンバーに気を使って小声で侑くんを室内に入れる

侑くんは非常に嫌そうな顔をしていたけど入ってしまったからには、といったかんじで渋々足を踏み入れた

案の定先に説明が始まってしまっていて、お話途中の真澄と目があった。
べ、別に怖くねーし。侑くんの方が優先度高いし!


「侑介〜」


小鳥遊が侑くんに手を振りながらこっち側にそっと寄ってきた。んだよくんじゃねーよ。

侑くんの腕をギュッと握りながら小鳥遊を睨む。すぐに腕は侑くんに剥がされたんだけど。
あぁ…せっかく俺を支えてくれていた腕がぁ…!


「あんな入るの嫌がってたのに、結局来たのね」

「…うるせーな」
「そうだそうだうるせーぞ小鳥遊」

「そこうるさいです」


小声で喋ってたのに真澄に注意された。こっちの視線がチラチラ集まり心の中で舌打ちする。
なんだよー、もうケチくさいなあ。


「涼さん、座ります?」


小鳥遊の声に後ろを見ると、いつの間に椅子が用意されてた。しかも俺がさっき使ってたやつ。

おっ、おぉ…?


「あ、う、うん…」

「立ちっぱなしはつらいでしょうからね」


まさかの小鳥遊からのナイス気遣いにビビる。座った俺に笑顔を零す小鳥遊。

いや、そんなんじゃ俺は懐柔されねーからな…お前ただでさえ侑くんの友達ポジっつーやばいところにいるんだから…絶対お前だけは許さない…!

チラリと小鳥遊を見上げる。
侑くんとほぼ同じの身長。
金髪美形。人懐っこい性格。侑くんと中1から友達。俺と真澄みたいな関係。侑くんとクラスもずっと一緒。

…やっぱ無理
羨ましすぎて無理

だって、授業中の居眠りしてる時の侑くんの顔見れたりすんだろ?しかも体育してる侑くんだって、板書とってる侑くんだって、『やべ〜課題忘れた。見せてくんね?』『仕方ねーな』とかそういうやりとりを侑くんとできるんでしょ?

俺には一生できないこと。
やっぱ俺留年するしか…!


「ーー以上ですが何か質問はありますか」


悶々と嫉妬に駆られていたら真澄の説明タイムが終わった。恒例の質問タイムへと移る

げぇー…
本日二度目。
一斉に手を上げ始める一年生たちにドン引きしながら椅子を少し移動させる

本当は侑くんの隣にいたいけど…!
被害を受けたくないから!


「はーい」


そんな中、小鳥遊も手を上げた。
え、お前何を質問するの。

驚いたのは俺だけでなく侑くんもらしく「はあ?」と声をかけている

それに気づいた真澄。
けれど特に贔屓することなく前の方から順に指名していくとこが真澄らしい


「えー?もしかしてこれ、なかなか質問できない感じですか?」


俺に聞くなよ。
でもそうなんだろうな。


「ねえ、小鳥遊。お前何しにここ来たの?」


思っていたことを直接聞く。
侑くん連れてきたのは超ナイスだけど。それに関してだけは褒めよう。

俺の質問にニコ、と笑う小鳥遊


「そんなの涼さんに会うためn「そういうのいいから」


ぶっ飛ばすぞ。
侑くんが見てないところで睨みを利かす。なんでこいつはすぐこういう事を言うんだ。


「えぇ?本気なんですけど…」

「生徒会に入るつもりなの?」


いやいや無理無理。
ただでさえ見かけただけで腹立つのに、毎日顔合わせるなんて俺ストレスで爆発するんじゃないかな。


「そう考えてます」

「マジで言ってんの?」


俺より先に侑くんがギョッとしたように小鳥遊に訊ねた
本当その通りだよね侑くん!!マジで言ってんのこいつ!新手の嫌がらせか!!


けれど、この言葉以上に驚くことを小鳥遊が俺に告げた。


「ついでに侑介も」

「はあ!?」


目を見開いた侑くん
俺も一緒になって驚く


「えぇえぇええっ!!?本当に!!!!?」


ゆ、侑くんが、
せ、せせせせせ生徒会に!!!?

嘘!!
そんな!!

そんなことってあるの!!?


「そうなの!?侑くん!」

「んなわけねーだろ、小鳥遊が勝手に言ってるだけで…」


えっ、待って、もし侑くんが生徒会に入ったら放課後は一緒に居れるってことだよね?一緒にお喋りだって、お菓子だって、ゲームだって出来たりしちゃうの?


なにそれ!!!天国!?


「ちなみに申請のプリントも書いといたよ、侑介の分も」


小鳥遊の手には二枚のプリント。
しっかりと記述してあって、侑くんの名前も書いてある。

優秀すぎないかこいつ。


「た、小鳥遊!!俺初めてお前を見直した!!」


小鳥遊の両手首を握って、小鳥遊に近寄りながら褒めた
目の前には目を見開いてる小鳥遊。考えてみれば初めてこいつに笑顔を向けたかもしれない。
いや、でも実際ナイス。


「り、涼さん・・・」


頬をうっすら染めてる小鳥遊。キラキラとなんかよくわかんないビームが目から出てる。

うーん?なんか顔近いな…。鼻がつきそう。気のせい?

そんなことを思っていたら、侑くんに手を離されて椅子に戻された。

「あっ!」と声をあげる小鳥遊に鋭い目を向ける侑くん


「俺は入るなんて一言も言ってねーぞ」


そ、そんな・・・!
ガーン、とショックで言葉を失う俺。


「・・・嫌なの?」

「だりーだろ、ぜってー嫌だわ」


えー、嘘・・・。
俺侑くんと一緒に生徒会やりたいのに…。

悲しくてしょぼんとしながら侑くんを見上げる。
目が合ったと思ったら舌打ちをされた。えっ、傷つく!!


「入りたいなら小鳥遊一人で入れよ」

「そんな悲しい事言う?俺らの仲じゃーん」


そう言って、侑くんの肩に腕を回した小鳥遊。おい、何やってんだお前。
侑くんの肩に腕を回すとか!!ふざけんなよ!!!


「小鳥遊お前調子にのるな!!」

「涼」


二人の様子を眺めて小鳥遊に怒鳴ったら名前を呼ばれた。
声の方を見ると、真澄がいて。
今小鳥遊に怒ってるところだったのに!!


「なに!?」

「いつまで二人に構ってるつもり?」

「だって今質問時間じゃん。嫌だよ俺」

「そんな我儘言うなよ…。」


今は千歳が色々対応してるらしく、一年生がキャアキャア騒いでる。
うーん、うるさい。
そもそも一年<侑くんに決まってるでしょうが。

そんな時、


「・・・真澄」


と、侑くんが真澄の名前を呼んだ。
その光景にギョッとする。

えっ、ゆ、侑くんが真澄に話しかけるってなに!?


さすがの真澄も驚いたらしく、真澄が瞬きをして侑くんに視線をずらした


「さんか先輩をつけろよ、侑介」


まさかの一言
淡々とした声で侑くんにそう言った真澄にビビる

ゆ、侑くんになんて事を言ってるんだ真澄!!!どうでもいいだろそんくらい!
俺の可愛い侑くんなんだから!!!


「・・・。」


憤る俺とは違って、何も言わない侑君。
ただ無言のままジッ、と真澄を見ている。

え、えぇ・・・?なになに?なんなの?

その視線からは何を考えてるのかわからないけれど、俺を見て何かを察したらしい真澄がため息をついた。


「侑介、話があるんなら聞いてやろうか」

「・・・いや、いいです。」


そう言って、今度は俺に視線を落とした侑君。
座ってる俺の前髪を触れて、なにやら思案顔。おでこに親指を這わしている

えっ、えっ、なになになに!!
なんで俺のおでこ触ってるの!!!!これまたご褒美!!?

こんなみんながいる前でそんなっっ


「俺もう行くわ」


カァアッと恥ずかしくなってる俺を置いて、突然侑くんが踵を返した

え、えぇえ!?
そんな突然帰るの!!?


「侑介!真澄さんになんか言いたかったんじゃないの?」


小鳥遊も慌てて侑君を追いかけた。
ポカーンとする俺。

侑くんに話しかけられた真澄を見上げてみたら、真澄もまた侑介をジッと見ていた。

なんだよ二人して…
侑くんも真澄に話しかけるって、なんかあったんだろうか。

やめてよ二人の間になんか芽生えるとかそういうの!!
真澄でもぶち殺すからな!!!


すると、数秒して小鳥遊だけ戻ってきた。なんか苦笑を浮かべている。


「どうしたの」


俺の代わりに声をかけた真澄。
小鳥遊じゃなくて侑くんに戻ってきてほしかったんだけど。


「いや、俺もよくわからないんですけど…。」


小鳥遊が笑いながら、プリントを渡してきた。
しかも二枚。

・・・ん?

二枚?


え?


期待と混乱で小鳥遊を見上げる
そんな俺の顔をみて笑う小鳥遊。


「侑介、生徒会に入る気みたいですよ」

「・・・・え?」


小鳥遊の言葉に、叫びそうになった。




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