誤算、伝染中 | ナノ
08

今日の生徒会活動では座っていていいと言われたからお言葉に甘えて座りっぱなしだった。

なんかいろんな子に声かけられたけど、スルー。だってみんな足の事聞いてくるんだもん。痛いですか?とか捻挫ですか?とか。
足首に包帯巻いてて捻挫以外になんかあるかよ。

ただでさえ注目されてイライラが増してたのに、さらに俺をイライラさせる輩が現れた。

まさか生徒会室に来るとは思っていなかった、

小鳥遊。


「あは、涼さーん!朝以来ですね。一日に二回も会えるなんて俺とっても嬉しいです」


俺が座ってるのをいい事に、目の前に立ってペラペラ喋り始める金髪野郎。ニコニコと腹たつ笑顔を浮かべている


なんでおめーがここにいんだよ


「というか、捻挫しちゃったんですか?しかも怪我まで…せっかくの綺麗な足が勿体無いですね」

「ジロジロ見んなよ気持ち悪い」


俺の足を小鳥遊に見られんのはなんか不快だった。しかも言ってること千歳とほぼ同じなのになんでこうもウザさが出てくるんだろこいつ


「ねえ、今から全体で説明するんだから勝手に行動されると迷惑なんだけど」


真澄が俺と小鳥遊の間に割って入ってきた。さすが俺の親友。わかってんじゃん。


「あ、真澄先輩ちょうどいいところに!質問なんですけどこれって友達を割り込みさせてもいいですか?」


注意されてるっつーのに、気にした様子もなく真澄に質問する小鳥遊。俺の方に視線を送りヘラッと笑っている

と、友達…?
その言葉と視線にハッとした


「駄目に決まってるでしょ」
「ちなみに誰!!」


真澄の冷たい返答に即被せる。しかも気付いたら真澄を押しやり、小鳥遊に向かって身を乗り出してた


「ちょっと、涼…!」


だってだって!
こいつの友達といえば、非常に不愉快ではあるがただ1人しか思いつかない。

俺の愛しのあの子しか!

俺の反応に、ニンマリと満足げに笑った小鳥遊。こ、この顔は…!


「さすがお察しが早いですね、涼さん。侑介なら廊下にいますよ〜」


なんだと!!??

それを聞いていてもたってもいられなくなり怪我してるというのに、立ち上がってひょこひょこ歩き出す俺


「涼!」

「うるせー!あの侑くんが遊びきてくれたんだからこの機会を逃すかっての!!」


なんか室内がざわざわしてるけど、俺がやかましく騒いでるからだと思う。
真澄に止められそうになったが、無視して廊下に出た。

そして凄まじい軍勢。


「わっ住吉様!」
「書記様今日も麗しい…!」
「人形みたい…」


廊下が一斉にうるさくなる
ああもう!君たちはお呼びじゃないんだよ!!

いろんな子が押し寄せてくる前に、どうにかして侑くんを探す

しかしどうにも他が邪魔で見れない。くそ!ここでも身長による支障が!


「ちょっと、侑く…、侑介しらない?俺の弟!」


近くの子の肩を掴んで顔を伺いながら聞いた。途端にカァアアア!とこちらが見てもわかるくらい真っ赤になり始めたその子

いや、そういう反応求めてるんじゃなくて!

苛立ちがピークで違う子に聞こうとしたら、後ろから誰かに手首を掴まれた。
そのまま後ろに引っ張られて、相手の肩を掴んでいた手を離される

こ、この手は…


「なんか用」


後ろから耳元に呟かれた、低くてぶっきらぼうな声。後ろを振り向かなくても誰だかわかる


侑くん!!!!!


「うわーーい!侑くん!!なんでここにいるの!!!」


勢いよく振り向いて侑くんに抱きつく。もう慣れたもので、俺に抱きつかれても動じない侑くん


「小鳥遊に連れてこられたんだよ…つかなんでジャー…」


俺の服装に疑問を抱いた侑くん
俺を引き剥がしながら、足に視線をよこした時に俺の怪我が目に入ったらしく言葉が止まった


「おまえ、足…」

「えへへ、サッカーで転んだ」


侑くんの顔が険しくなった。
あれ、もしかして心配してくれてる感じ?


「そんなことより中入ってよ!もう説明始まってるかもしれないけど!」


正直俺の怪我なんてどうでもいい。侑くんに生徒会室入って貰おうとグイグイ腕を引っ張る


「いや、俺は…!」

「いいから!ね、お願い!」

「つか足怪我してんだからもっと安静にしてろよ!」


逆に俺の腕を掴まれ、体を支えてもらう羽目になった。
左の二の腕の脇下、を持ち上げられ左足に負担がかからないように気を遣われる

俺、侑くんのこういう、
ぶっきらぼうに見えてめちゃくちゃ優しいところ、本当に、本当に…


好きっっっ!!!



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bkm