誤算、伝染中 | ナノ
07


そして、放課後。


今日は先に有岡さんがいて、相変わらずの格好をしながら俺の姿を見て笑った。


「なんでジャージぃ?だっさぁ」


長袖短パンの俺の姿を見てプププと小馬鹿にしたこの態度。そんな反応すると思ってたよ!


「足ちょっとやらかしたんです体育で!」

「体育ぅ?涼って本当運動出来ないよねぇ」


たぶん生徒会メンバーでぶっちぎって俺は運動が出来ない。ぶっちぎって。
去年の体育祭でもオリエンテーションでも酷い目にあった。今年もそれがあるのかと思うと憂鬱な気分になる

ちなみに全校生徒で行うオリエンテーションは来週ある。企画立案は生徒会がやるんだけど、今年も大分過激なやつを考えてるらしい。

まじで鬱


「なあ真澄、俺足これだし今日おやすみしちゃだめ?」


オリエンテーションのこと考えたら一気にいろんなこと嫌になっちゃったてへへ。このあと一年に説明会開くの嫌だよ。また質問攻めにあうんでしょ


「そんな上目遣いしたって駄目だから。そこに座ってな」


っち。
精一杯かわい子ぶってみたけど、サラリと躱された。まあ俺可愛くないし仕方ない。


「あ、紫乃ぉ」


椅子に座りかけたところで、有岡さんが紫乃さんの名前を呼んだ。有岡さんの視線の先には窓。

まるで大きな猫のように窓を開けてもらうのを待っている
…またか!


「もー!紫乃さん!」


どうして窓から来るんだこの人!
確かに今日もすごい人混みだけどさ!

椅子から立ち上がろうとしたら「いいよ、座ってて」と真澄に言われた。

…あれか、俺が足怪我してるからか。


真澄のお言葉に甘えて座り直す。
そんな俺らの様子をニヤニヤしながら見ていた有岡さん。

なんか嫌な顔。


「王子様に愛されてるねぇ」

「はあ?誰が王子様ですか」

「お前の旦那かつ母親のことだよぉ〜」


…真澄のことか。
母親以外全部違うんだけど。王子で旦那で母親ってどういうことだよ。

否定すると余計に面白がられそうだから、大人しく我慢しておく。でも真澄が旦那かぁ〜色々面倒くさそう


「真澄が旦那ってどう思いますー?」

「すっごく執着激しそうで無理ぃ〜軟禁されそぉ」

「あー、確かに」


怒らせるとやばいしなぁ
おでこ噛まれるだけじゃ済まなくなりそう…ぶち犯すとかいってたもんなやだー。

有岡さんの言葉にウンウン頷く。
執着しそうと言っても、俺真澄が他人にめっちゃ溺れてるってとこまだ見たことないんだよね。恋話とかも聞かないし…いっつも俺が隣にいるから恋人作れなかったり?だったら申し訳ねえ


「お疲れ様です〜」


真澄によって室内に入れてもらった紫乃さんに挨拶する。挨拶代わりにふわりと微笑んでくれた紫乃さん

うわぁ、マイナスイオンすげーな…


「どうしたの、足…捻挫?」


俺の足に視線を向けながら、紫乃さんが眉を下げた
俺の隣に腰掛けて左足をじっと見てる

そんなガン見されるとなんか困るな


「サッカーで転んで、ちょっと捻っちゃったんですよ。でもあんま痛くないです」


紫乃さんに笑いかけながらそう言う。怪我は割とする方だから、捻り癖がついてしまってるのかもしれない。


「…酷くないようなら良かった。早く治るといいね」

「ありがと、紫乃さん」


紫乃さんの優しい笑顔につられて俺もヘラリとだらしない笑顔がこぼれる

紫乃さんもこんなのほほんとしてるのに運動できるからなあ…しかもスポーツの時は割と活発に動く。めっちゃ笑顔で爽やかになるから、イケメン具合も倍増

なんでなんだよ…普段マイペースなのに運動できるって…
有岡さんはこう見えて空手有段者だし…いや、これはこれで納得が行くか。

俺も運動が出来ればな。
何かあれば侑くんのとこにダッシュでいけるし、侑くんのこと守ってあげられるのに。

いかんせん、俺には筋肉がなさすぎる。ほっせーし小さいし!体力ないし!

こんなんじゃ、侑くんのお兄ちゃん失格だよおおお!!なんで俺の身長はここで止まってんだよ!!164cmって!女かよ!!筋肉もねーからまじで女じゃん!


成長するように毎日ちゃんと朝昼晩って、食べてるのになあ…

もしかして運動出来ないのって筋肉がないせい?

そういうことなの?



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bkm