誤算、伝染中 | ナノ
03

「・・・おい、聞いてんのか」


返事もせずよろよろして歩く俺に苛立ちを見せる侑くん
侑くんが俺をこうさせたんだよ、そんな顔しないで!



「つかその顔どうにかなんねえの」

「えぇ〜?どの顔?」


このニヤけ顔かな。
嬉しすぎてニヤけが止まらないし、顔も熱い。
手をうちわ代わり仰ぐが、あまり効果がなかった


「もっかい頬引っ張ってくれたら直るかも…」


侑くんにすり寄りながら、侑君の手に触れる。
が、すぐ叩き落とされた。しかも舌打ち付き。

うーーん!そうだよね!
その冷めた目も可愛い!写真撮りたいな!


侑くんにメロメロになってる俺にお構いなく、どんどん先にいっちゃう侑くん
意外とこの時間にも学校に来てる生徒がいて、割とうざい視線を浴びることになる

しかもこのタイプの視線は・・・

このねっとりした感じの視線は


侑くんに危害が及ぶタイプの視線だ!!!!



「やっぱり侑くん狙われてるよ、見てよあいつらのねっとりした視線気持ち悪すぎるよ!危ないよ侑くん!!」


左斜め前に固まってるちょっとチャラめの集団
こっちを見てニタニタしてる。
なんつー目で侑くんを見てんだよ殺すぞてめーら!


「俺じゃねえよ!」


侑くんの袖を一生懸命引っ張りながら主張してたら侑くんにキレられた。
えぇっ!?それは本人が気づいてないだけだよ!!!


「あの視線を気づかないなんて相当鈍感だよ侑くん!もっと自分に危機感を持たなきゃ!!!」

「それそのまま涼に返すわ…。」


気づいたら侑くんがもう呆れかえってた。
なにその態度!
俺じゃなくて侑くんが危ないのに!!


えっ…どうしよう、俺本当に侑くん心配で死にそうになってきた・・・侑くん危機感足りなすぎでは…?


いくら身長が伸びて、顔が男前になろうが、ピアスをつけようが俺からしてみれば可愛い侑くんに変わりない。しかも不良受けとかいうジャンルも存在してるから余計。

あんな獣がうろつくこの危険な学校で侑くんを無事に卒業させることが出来るか…。いっそ留年して侑くんと同じ学年になればいいんじゃ?


そんな事を本気で考えていた時だった。
侑くんの近くに、俺の敵が現れたのは。


「あっ、侑介おはよー」

「・・・小鳥遊」

「!!!?」


小鳥遊!!だと!!

声の方向を見ると、金髪のイケメンが手を振りながらこちらに近づいてきていた。
中学のときから侑くんの金魚のフンやってる小鳥遊。俺は昔からこいつが気に食わない。

だいたい今俺が侑くんと二人でお喋りしてんだからくんじゃねーよ!!!


「涼さんもおはよーございます!」


キラキラとうぜえ笑顔を浮かべながら俺にも手を振る小鳥遊
馴れ馴れしい。なんだこいつ。


「今俺が侑くん占領してんだから、失せろクソガキ」

「あはは、相変わらずですねえ、そんな悲しいこと言わないでくださいよ〜」


ニコッと微笑まれた。
話す価値もないと思い、無視をして侑くんに笑顔を向ける


「侑くんいこっ」

「つっても俺らこっちだから」


いつの間に二年フロアと1年フロアの分岐点にいたらしい。
侑くんが右を指さし、あっさり終わりを告げる


な、
な、

なんてこった・・・!!!


ここでお別れなんて!!
嫌だよお侑君!!まだ侑くんとお喋りしてたいよおおふえええん!!


「じゃあな、涼」


そう言って俺に背を向けて、先に一年フロアへと向かってしまった侑くん。う、うわああ行かないでぇええ


「ま、また後でね侑くん!!気をつけてね!!背後に!背後に気をつけて!あと前方と右側と左側と…!とにかく気をつけてね!」


さっきのあのホモ集団が気になって仕方ないよ…!もう!本当に危機感持ってほしい!!

侑くんの後姿に泣きそうになりながら、写真を撮りまくる
後姿くらいしか撮らせてくれないからいいよね!


本気で盗撮活動に専念する俺に「いやぁ〜」と邪魔に入る輩が一人


「相変わらず涼さんは美人さんですね、朝から涼さんに会えて俺最高に嬉しいです」


まだ俺の隣にいたらしい小鳥遊。
空気読めよてめえ。


「お前侑くんに少しでも触れてみろよ、お前の指吹き飛ばすからな」

「侑介?何言ってるんすか、侑介には興味ないですよ〜。俺が好きなのは涼s「侑介とか名前で馴れ馴れしく呼ぶんじゃねえ。」


小鳥遊が俺になんか言ってきたが、小鳥遊をほっといて俺も自分のフロアへと向かう。後ろから「また今度〜」とか聞こえたけど、次なんてないから。

つか興味ないって返事どうなの?すっげー上から目線だけどお前にはそんな選べる権利とかないんだからな調子乗ってんじゃねえよ!侑君と同い年だからってよお!いつも隣にいるからって!くそ!羨ましい!うう!


あとなんつーの?
自分がイケメンだってのがわかってるからあいつあんな馴れ馴れしいんだろうな…俺ああいうタイプ本当無理・・・。うざくて仕方ない…。

千歳に比べたらイケメン枠なんて誰にも敵わねーからな。
なのに侑くんの友達面しやがって、しかも侑くんの隣に居続けやがって、本当、本当…

本当嫌いだわ!




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bkm