「ねえ、ミヤのさ、好みって何。どんなヤツ?」

「はー?なんでまた。」

「なんか、知りたくなった。」


時折こいつは俺のことを質問してくる。
興味なさげに笑ってるのに、本心はわからない。


「……動物っぽい子かも。」

「へぇー、じゃあ、俺も一応入ってるね」


うん、とは言わない。
ただ曖昧に笑っておく。



「津田は?」


こんな話滅多にしたことない。
こいつはきっと質問されるの嫌いだろうから。
でもさっきああ言ってくれたんだから別にいいよね。


「俺を誰よりも理解してくれてる子。でも、もっと遠慮なくきて欲しいかな」


妙に具体的だな…。
というか、お前、グイグイ系嫌いなんじゃないのか。

津田を見てみると、なんだか優しい微笑み

このあまり見たことのない顔を見て、気付いてしまった



…これは、その子にたいしての笑顔なんだろうか。




「……それって好みじゃなくて好きな人じゃね?」


震えそうな声を隠しながら笑って茶化す
Noと言って欲しい、だってこいつは、気まぐれだし
固定の好きな人なんて作らない

そう思っていたのに。



「んー、そうかも。結構本気なのかもね。だから他の子がどうでもよく感じんのかも」


そう言って苦笑する津田を見て、あ、本気なんだ。と確信してしまった

言葉が出てこない

こう言うとき、親友はどう声をかけるんだろう。



「へー、よかったじゃん!やっとお前にもちゃんとした子が出来るのかー」



無理矢理だした言葉は、ありきたりな言葉だった
ポンポンと肩を叩いて、喜びの言葉をかける

嘘、本当はもう苦しくて息できない



「…ありがと。でも、俺に望みはあんまないみたい」


どこか切なそうに笑う津田
…そんな悲しい顔するなよ
でもどうせその顔はその子を思って出してる表情なんだろ


「お前なら、大丈夫だよ。きっと、OKをもらえるから」


もはや津田をみないでそう声をかけた

こんな男を女がフるわけない
そうだろ?


俺だったらお前にそんな顔させないよ
お前が他に目移りしたりしないように頑張るのに。



…つか、女に飽きたっていったの誰だよ
いや、あれは、俺の勘違いで生まれた期待か。


ジワ、と目が熱くなる
嘘だろ、泣くなって。

瞬きを数回するが、どんどんボヤけていく視界


ああ、もう、ダメだ



「ミヤ、あのさ、」



そんな時ギュと手を捕まれ、引っ張られた
反動で津田の顔を見上げそうになったが慌てて下を向く


握られた手を力ずくで振りほどいて、出口へと向かった



「ミヤ?なんで泣、」

「ごめん、ちょっと俺、用事思い出した」



他に言い訳を考える余裕なんてなかった。
とりあえずこの場から離れたくて。

泣いてんのバレたかな
でも、もう別にいいかも


もう一度絡まってきた指も、どうにかほどいてドアまで走る


さっきまで冷たく感じていた体育館倉庫は、今こんなにも熱い




「ミヤ、待って!」と声がしたが逃げ出した




ああ
こんな気まぐれ男、やっぱり惚れるんじゃなかった






「俺はお前が好きなのに」



お前は誰を思ってるの。




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