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その男から滲み出る只ならぬ狂気と見てわかるほどに憎悪に溢れた瞳。そして今、言われた言葉。それらが気になり、リボーンは「何があったか話せ」と話すように男に促した。そして、男は語り始めた。自分の過去を。六道骸が自分に何をしたかを。


ーー5年前、男は北イタリアにあるマフィアの一員であった。孤児だった自分を育ててくれたボスとファミリーの恩は計り知れなく、その恩を報いる為に男はファミリーの用心棒となりエリア最強とまで言われるようになっていった。そんな時に、ボスがある男の子を拾ってきた。男はその子の教育係りとなり、本当の家族のように愛情を注いだ。


しかし、事件は起きた。男がその日、アジトへ戻るとファミリーの全員が殺されていたのだ。男は犯人への怒りを燃え滾らせた。だが真実は皮肉なものだった。調査の結果、ファミリーを殲滅させたのは他の誰でもない、男自身であることが判明したのだ。それから目を覚ます度に身に覚えの無い屍の前に何度も立ち、頭が狂いそうになった。自分がおかしいと自殺までしようとしたが、それもできなかった。そう。全ては操られていたのだ。


ーー六道骸に。


男はいつしか名も心も奪われ、影武者として生きるようになっていた。そして何かも全てに絶望し、殺人マシーンと化したのだ。


「なんて奴だ、六道骸…人間のすることじゃない…」


ツナは顔を青ざめさせた。まるで作り話のような恐ろしい話に、ぶるりと背筋が震えた。


「ぶっ倒しましょう10代目!!」
「獄寺君!!大丈夫なの!?」
「ご心配おかけしました!もう平気っス!」


副作用の発作で倒れていた獄寺であったが、どうやら発作がひいたようだ。元気になった弟の姿を見て、ビアンキは安心したようにホッと息を吐いた。


「ボンゴレ…お前ならできるかもしれない。いいか、よく聞けボンゴレ…骸の本当の目的は…」


その時、男がいきなり話を止め「どけっ!」と勢いよくツナを押した。ツナは何が起こったのか、と目を見開いたが視線に入ってきたのは、複数の針が刺さり倒れた男の姿であった。


「眼鏡ヤローだ!」
「一撃…離脱か…」
「山本武は無事よ!」
「目的は口封じだな」
「そんな!大丈夫ですか!?」


ツナは心配したように、男の傍へと寄り添い「しっかりして下さい!」と夢中で叫んだ。死んで欲しくない、と思った。操られていた悲しくも優しい人に。男は言い捨てるように言った。「散々な人生だったぜ」と。まるでこの世に別れを告げるように。


「そんな……あっ。貴方の本当の名前は?六道骸じゃない、ちゃんとした名前があるでしょ!?」
「………オレ…は…ランチア…」


ランチア。それが本当の彼の名前。


「しっかりして下さい、ランチアさん!」
「その名で呼ばれると…思い出すぜ…昔の…オレの…ファミリー…。これで、皆の元へいける…な…」



そう言うとランチアは薄く笑い、ゆっくりと目を閉じた。そして涙がスっと頬を伝った。



「そんなー!ランチアさーーん!」
「散々利用しといて不要になった途端…クソッ。これがあいつらのやり方かよ!」
「人を何だと思ってるの?六道骸」



沸々とそれぞれが六道骸に対しての怒りを募らせた。人間を人間と思わない卑劣なやり方が許せなかった。ツナはスッと立ち上がって、自分の目元に溜まっていた涙を拭った。それは今までとは違う、覚悟を決めた強い者の表情だった。


「やっぱりあいつムカつくよ。行こう、骸のところへ」
「だが最後の切り札は使っちまったぞ」
「わかってる……だけど、でも…」


ーー六道骸だけは何とかしないと。


大切な人を傷つけられた。

大切な人を泣かされた。

何の罪もない人をここまで傷つけた。

許せないと、倒さなければならない、と思うには十分なことを彼等はやった。

だから闘うのだ。怖くても、辛くても、絶対に彼等を許してはいけないから。



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