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沢田綱吉vs.偽骸


「降りて来い、ボンゴレ」


ギロリ、と“骸”はツナを睨み低い声を這わせ直ぐに視線を目の前のビアンキに向けた。


「女を殺して待つ」


鋼球を両手で弾き、ビアンキに攻撃を仕向ける。張り詰めたような重い雰囲気にツナ達はひゅっと息を呑んだ。


「死ぬ気になるのは今しかねーぞ。暴れてこい、ラスト一発だ」


ズガン、とリボーンがツナに目掛けて銃を放つ。その合間にもビアンキに鋼球が近づき凄まじい気流が襲いかかり、ピンク色の長い髪が激しく靡いた。しかし、ザザザ…と地面が擦れる音がしたと思うと、目の前の鋼球はピタリと止まった。


「ツナ…!」


ビアンキは驚愕したように目を見開きながら、彼の名を呼ぶ。“骸”は驚いた。先ほど山本を軽く吹っ飛ばした、暴蛇烈覇を止めたことに。


「復!活!!!(リ・ボーン!!!)」


ボッ。オレンジの炎が額に灯り、ツナの服が弾け飛んだ。


「六道骸…死ぬ気でお前を倒す!」
「最後の切り札だぞ。しっかりと骸と決着をつけてこい」
「半端な強さでは俺は倒せんぞ」
「こいっ」


2人の視線がバチバチとぶつかり合うと最初に動きを見せたのは“骸”だった。重い鋼球を頭上に浮かすと「剛蛇烈覇!!」とドンとツナに弾いた。しかしツナは鋼球の下をスッと潜り、“骸”との距離を詰め、顎に思い切り「おりゃあ!」と拳を振るった。


「あの子あんなに…」
「此処に来て急激に成長してるぞ」


それからわかるツナの成長ぶりは目を見張るものであった。ことごとく、“骸”の鋼球を止め、遂にツナは彼を後ろにと吹き飛ばした。これで並盛に帰れる、と喜ぶのも束の間…倒れたと思った“骸”は立ち上がったのだ。


「貴様になら全力を出せそうだ」


つまり、今までは全力ではないということ。ツナはハアハアと息を乱しながらゴクリと唾を呑んだ。


「俺が真に得意としているのは、肉弾戦」
「うがっ!」


いきなり間合いを詰められ、長い腕がツナの腹にめり込む。肉弾戦が強いというのは、ハッタリではないようだ。その後も“骸”の猛攻は続いた。何度も拳を振るわれ、ツナの身体は既に血塗れのボロボロであった。そしてとどめと言わんばかりに、鋼球をツナに振り下ろした。


「あ……ああ…」


目の前の惨劇にビアンキは顔を青ざめさせ、言葉にならない声を漏らす。


「貴様らの希望はついえた。次は誰だ…?」


ガラガラ、ドスン。不可思議な音が聞こえ、そちらを振り返ると“骸”は目を見開いて叫んだ。「なに!!!」と。動けない程に痛みつけたであろうツナが胡座をかいて、フーと息を吐いているのだ。瞳に宿る闘志は消えぬままで。


「馬鹿な…こいつは化け物か…?」
「あんたはそんな悪い人じゃない」


まだ闘おうとするツナのしぶとさに“骸”は思わず顔を引き攣らせるが、彼の言った言葉に反応したように鋭い瞳を見開かせた。


「貴様…何を言っている!」
「そんな弱い心では、死ぬ気の俺は倒せない」
「……心だと!俺のことをわかったような口を聞くな!!殺しは俺の本心だ!!!」
「嘘だ!」
「黙れ小童!!」
「死ぬ気で倒す!!」


どちらも物凄い気迫。自分の気持ちを吐き出すように言葉を紡ぎ、双方が相手を目掛けて走り出した。そして拳を構えた。想いを、気持ちを、感情を、全て込めて。すると、グッと1人の拳が相手の腹に命中した。攻撃された方はガバッと血を吐き、膝を着いた。


「うう…こ…この俺が負けただと…?」


敗北したのは、“骸”であった。男は信じられなかった。自分がこんな中学生の子供に負けるとは。そんな男にツナは言葉をかけた。勝負に勝ち、歓喜に舞う声ではなく、落ち着いた、でも力強い声で。


「攻撃する時、必ず目を閉じるのも鋼球を使わなくてはとどめをさせないのも、貴方の心の中に罪悪感……迷いがあるからだ」
「、な」


その瞬間、シュウウ…とツナの死ぬ気の炎が消えいった。


「貴方を最初見た時からおかしいと思ったんだ。まるで、うちにいる子供みたいにあったかくて怖い感じがしなかったから」
「(こいつ…一見して俺を見抜いたというのか)」


なるほど、これがボンゴレの血か。男はフッと口元を緩ませ身体を起こした。


「完敗だ。お前を六道骸が警戒するのも頷ける」
「え!?」


ツナは男の言葉に驚いた。まるで六道骸は自分ではないという口ぶりに。しかし男の言うことは本当なのだ。ツナ達が見た刑務所の写真はフェイクで男は骸の影武者だと言う。


「そして六道骸…あいつは…、俺の全てを奪った男だ!!」



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