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バースデー


日も段々と短くなり放課後には既に優しい色の夕焼けが空を染めてあげていく。並盛の商店街は今日も多くの人が行き交っている。その中の1人として舞はいた。


「(良い物見つかるといいな〜)」


明日はリボーンの誕生日。更にその次の日はツナの誕生日でもあるため舞はプレゼントを買い求めこの商店街へ来ていた。並森の商店街はお店も多く品数も多い。2人が喜ぶ物をと舞は店を一軒ずつ見回っていた。


「(んー。リボーンはさっき見たアレでいいとして…問題はツナ君だな、)」


幾つか候補は決まっているが同い年の男の子にプレゼントをしたことがない舞はツナへのプレゼント選びに困っていた。どうしよう…と候補の物を見比べ大きな溜息を吐く。どうせあげるならツナが欲しがるような物をあげたい。だが女の子の考える欲しい物と男の子はやっぱり違う物で、考えれば考えるほど頭を悩ませた。


「(明後日が誕生日なのにな………ん?)」


ショウウィンドウを挟んで舞が見つけたのは銀髪の髪の少年。舞の周りで銀髪の髪をしているのは、あの人だけだ。舞は急いで店から飛び出しその人を追いかけ、彼の名を呼んだ。


「獄寺っ!」
「あ?」


獄寺はタバコをふかしながら名前を呼ばれた方へと振り向く。そこには目をキラキラと輝かせ何故か待望をしているのかの表情で自分を見上げている舞の姿が目に入った。


「んだよ?」
「あのね、あたし困ってるの!だからお願いっ!力を貸してっ!!」
「ハァ!?なんで俺がチビ女なんかに手を貸さなきゃいけないんだよ!」


ぜってーやだ、と両手をポッケに入れながら獄寺は目線を逸らす。そんな彼を見て舞は内心、ケチだなと思ったがそれを言ってしまえば確実に獄寺は手伝ってくれないと理解し舞は新たな作戦へ出ることにした。


「そっか。やっぱダメか…」


はぁ…と溜息を吐き落ち込んでいるような声を出す舞を獄寺はチラリと横目で見た。その時点でほぼ作戦の半分は成功だと彼女は心の中でニヤリとする。


「ツナ君の“右腕”である獄寺なら、ツナ君の事なーんでも知ってると思って相談したのに残念だなぁ」
「な!」
「ごめんね。引き止めちゃって。もう大丈夫だから」


獄寺はツナの忠犬だ。10代目の“右腕”と言われてしまえば獄寺は断れないだろう。そんな忠犬の性質を利用してごめんなさい。舞はひそかに謝ったが獄寺の前では眉を下げて笑い踵を返す。


「じゃあ、またね」
「…待てよ」
「ん?」
「付き合ってやる」


その瞬間、舞は内心ガッツポーズをした。しかし、その気持ちをなんとか抑え込む。


「え、いいの?」
「しょうがねぇから付き合ってやるって言ってんだよ。俺は右腕だからな!」
「ありがとう!」


それから舞と獄寺はツナへの誕生日プレゼントを選びにお店に入った。そこでも2人の口論は絶えなかった。狭い空間の中、迷惑にも獄寺達の声が響き渡る。


「テメェはバカか!なんで10代目にピンクでソレなんだよ!」
「だ、だってピンクの方が可愛いし…あたしも好きなんだもん!」
「買うのは10代目のプレゼントだろーが!!テメェの好き嫌いなんてどうでもいいんだよ!」


まるで恋人のように仲が良く見える2人。だがそんな関係では決してない。そのような想いも微塵も無い。ただ彼等を繋ぐのは2人が慕っている10代目であるツナの存在だけだ。



▽ ▲ ▽



辺りはすっかり真っ暗。月の光が暗闇を割き、耳触りの良い高い音を鈴虫が奏でる。お互いの姿を照らすのも月と街灯だけ。そんな遅い時間になるまで付き合ってくれた獄寺に舞は感謝の気持ちで溢れていた。


「本当にありがとう。おかげで良い物買えたよ」
「チッ。言っとくけどオメェのためじゃねぇからな。あんなものを渡される10代目が気の毒だから付き合ってやったんだ」
「あれそんなにダメなわけ…?」
「オメェはバカか!どこの男が真っピンクの馬鹿でかい熊のぬいぐるみもらって喜ぶんだよ!少しは無ぇ脳みそで考えやがれ」
「まぁまぁ。結果買わなかったんだから大丈夫だって!」


初めの方に舞が候補として選んでいたのは大きな熊のぬいぐるみとこれまた大きなうさぎのぬいぐるみであった。それを聞かされた獄寺は絶叫し、なんとか買うのを全力で止めさせたのだ。


「ったく、2度と無ぇからな」
「はいはい。それじゃ、これ!」
「あ?」
「今日付き合って貰ったお礼だよ!」


そう告げて舞が渡したのはストラップ。プレゼントを選んでいる合間に買っておいたのだ。だが、獄寺はそれを受け取っても嬉しがるどころか眉を思い切りひそめるばかり。


「これ見たら獄寺だってピンと来たの!ちなみに…あたしのはこれ!2つ買ったんだ!」
「……テメェ。これ俺が貰って喜ぶと思ってんのか!?」
「だ、だってその子…獄寺にそっくりだったし」
「んだと!!?喧嘩売ってんのか!!?」
「じゃ、じゃあ今日はありがとう。あたし帰らなくっちゃ!ではーーさよならっ!」
「あ、おい!!」


獄寺の雲行きが段々と怪しくなって来たことを察知した舞はこの場合逃げるのが得策だと考え一目散に獄寺を置いて逃げた。1人ポツンと闇夜に取り残された獄寺は貰ったばかりのストラップを見つめた。


「………チッ」


舌打ちをするとそのストラップを握り締め無造作にポケットへと突っ込み獄寺は帰路を辿った。ポケットにあるのは柴犬のストラップ。完全に舞の中で獄寺=忠犬と方程式が立っており、これを見た瞬間に買わずにはいられなかったのだ。ちなみに舞のはチワワのストラップでこれは単に可愛いから買い求めた物だ。柴犬は主人に忠実であり、チワワは愛くるしい瞳で主人を癒す。このツナへの忠誠心が強い2人はきっとこれから主人に寄り添い如何なる状況でも信じて共に歩いていくのだろう。たぶん。



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