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ツナ達は屋上を後にし、ついにアジト候補である応接室に辿り着き山本が先頭を切って扉を開いた。


「へ〜。こんないい部屋があるとはねー。…!」
「君、誰?」


目の前でソファの縁に凭れ掛かる人物に山本は眉をひそめる。


「(こいつは…風紀委員長でありながら不良の頂点に君臨するヒバリこと雲雀恭弥……!)」
「なんだあいつ?」
「獄寺待て…」
「風紀委員長の前ではタバコ消してくれる?ま、どちらにせよただでは帰さないけど」


好戦的な目を向けられ黙っている獄寺ではない。山本の忠告を無視しタバコを加えたまま雲雀との距離を詰める。


「んだとテメェ!」
「消せ」


雲雀はトンファーで獄寺の咥えていたタバコを一瞬で吹き飛ばした。あまりの鮮やかな動きに獄寺は動けず頭が危険を察知する。


「なんだこいつ!!」


雲雀は気に入らない者がいると相手が誰であろうと仕込みトンファーでめった打ちにするという噂がある。それが本当だと山本は顔を青ざめさせながら理解した。


「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると…咬み殺したくなる」


その殺気立った瞳に獄寺と山本は思わず身震いをする。そのくらい彼が纏っているオーラは一般生徒とは違かったのだ。


「へー。初めて入るよ。応接室なんて」
「「!」」
「まてツナ!!」
「え?」
「1匹」


何も中の状況を把握していないツナがするっと応接室へと足を踏み入れた。山本が声をあげて止めるが時既に遅し。雲雀のトンファーがツナの頬にクリティカルヒットしたのだ。ツナの体は投げ飛ばされる。


「のやろぉ!ぶっ殺す!!」
「2匹」


獄寺が怒りに身を任せたまま拳を突きつけるが雲雀はするりと交わしトンファーで止めを刺した。


「てめぇ…!!」


普段は温厚な山本だが友達が傷つけられては話は別。トンファーを構える雲雀を思い切り睨みつける。持ち前の運動神経で振り回されるトンファーを避けるが不自然な交わし方に雲雀は気付いた。


「ケガでもしたのかい?右手を庇ってるな。それとも背負っている小動物のせい?」
「!」
「当たり」


山本の腹部を蹴り上げ山本も戦線離脱。ここにいる男子3人があっという間に彼1人でやられてしまった。


「3匹。……ん?」


そこで山本に背負われていた小動物が雲雀の目に入った。彼女は夏休み前に一度だけ会い自分の咄嗟の攻撃を交わした人物。そして群れることが嫌いな雲雀が会いたいと思っていた人。雲雀は妖しい笑みを浮かべ倒れている彼女の膝裏と背中に手を回し応接室にあるソファに横にならせた。


「ふーん。まさか君だとは思わなかったよ」


彼女も群れていたことには変わりないが会いたいと思っていた気持ちの部分の方が大きかったので咬み殺すことは止めにしといた。


「あー。いつつつ……!ごっ…獄寺君!!山本!!なっ、なんで!!?」


気を失っていたツナだがようやく意識を戻し起き上る。周りを見て一気に顔面蒼白してしまう。獄寺も山本も倒れていたからだ。


「起きないよ。2人にはそういう攻撃をしたからね」
「え"っ」
「ゆっくりしていきなよ。救急車は呼んであげるから」


その言葉の意味とは救急車に乗る程これからボコボコにされるということ。ただ皆で応接室に来ただけなのにどうしてこんなことになっているのか、とツナは震え上がった。そこでまたもタイミング良く現れたリボーンがツナに死ぬ気弾を。


「死ね」
「うおぉぉぉっ。死ぬ気でお前を倒す!!」
「何それ?ギャグ?」


ツナの攻撃を交わし顎にトンファーを直撃させる雲雀。ツナの体は地面に叩きつけられる。


「顎割れちゃったかな。さーて、後の2人も救急車に乗せてもらえるぐらいグチャグチャにしなくちゃね」
「まだまだぁ!!!」


倒れたと思ったツナは立ち上がり雲雀の頭部に攻撃を与えた。そして次にレオンが変化したスリッパで更に頭部を殴りつける。雲雀は頭を押さえながらフラフラと俯いている。トイレのスリッパで殴られたことがプライドに触ったのかその瞳は先程の殺気より明らかに増していた。


「ねぇ……殺していいい?」


“咬み”という言葉が失われた時点で雲雀の本気は伺えるだろう。


「そこまでだ。やっぱつえーな。お前」

「君が何者かは知らないけど僕、今イラついてるんだ。横になって待っててくれる」


赤ん坊でも容赦の無い当たりが最強と謳われる雲雀の由縁だろう。トンファーをリボーンに目掛けて振るう。でも流石、此方も最強の赤ん坊と言われるリボーンだ。トンファーを十手で受け止めたのだ。


「わお。素晴らしいね君」
「お開きだぞ」


そう言うリボーンの手には爆弾が。それには既に火がついていて当然のように大爆発をしたのだった。


「…んっ。……….っえ?何ここ!?」


大爆発の音とともに目覚めた舞が驚くのも無理は無い。応接室の窓は破壊されていて部屋も見るも無惨な光景となっていたのだ。


「遅い目覚めだね。星野舞」
「えっ!…貴方は、!」


舞も見覚えのある人物だった。前にぶつかってしまい何故かお仕置きでトンファーを振りかざした彼。忘れたくても忘れられないインパクト大の人物だ。


「雲雀恭弥。並盛中の風紀委員長」
「!貴方が…あの有名な風紀委員長なの!?」
「そんなことより…これ、いらないの?」
「あっ!」


雲雀が愉快そうに微笑みながらトンファーを回す。そのトンファーには舞が失くして探していたブレスレットが通っていた。ソファから飛び上がるように降りて雲雀に近づく。


「拾ってくれてたんですねっ!ずっと探してたの。ありがとうございます!」


笑顔でお礼を言う舞に対し雲雀はクスッと笑いながらトンファーを高く持ち上げた。背の小さな舞にはそれだといくら手を伸ばしても届かない。


「あのっ!返して下さい!!降ろしてっ」
「嫌」
「嫌って!?それあたしのなんですよ!」


グルル…と睨む舞だが雲雀はお構い無しな感じだ。


「小動物が睨んだって怖くなんかないよ。でもそうだな。交換条件を呑んでくれたら返してあげるよ」
「交換条件?」
「そう。僕の暇つぶしに付き合ってくれるだけ」
「…それって。闘うってことですか?」
「ものわかりの良い小動物は好きだよ。まぁ、条件を呑まなければこのブレスレットは校則違反だと捉え粉砕するけどね」


そんなの選択の余地なんて無いじゃない。舞はキラリと光るブレスレットを見つめる。あれは舞にとってお気に入りな物。壊されるなんて冗談じゃない。舞は、はぁ…息を吐き真っ直ぐ雲雀を見つめ頷き肯定の意を見せた。


「じゃあ、これは返すよ」
「えっ、ちょっ」


舞の返事に雲雀はニヤっと笑いブレスレットを投げ飛ばす。いきなりのことで慌てたがなんとかキャッチをし、やっと手元に帰ってきたブレスレットに頬を緩めた。


「それも返したし…行くよ」
「へ?もう!?」
「当たり前だよ。僕はムカつきが収まらないんだ」


それから荒れた応接室でトンファーとヌンチャクがぶつかる金属音が響き渡った。この先、何度も雲雀の暇つぶしに付き合わされる舞だがなんだかんだで運動好きな舞も雲雀との闘いを楽しむのであった。



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