×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
笹川了平


長いようで短く感じられた夏休みも終わりを告げ今日は始業式。朝があまり強くない舞は久しぶりの学校でいつもの時間に間に合わずツナのお迎えに行けないでいた。


「(…眠い。夏休みが終わるの早すぎだよ)」


目がショボショボする中、小さな欠伸を口から洩らす。欠伸の所為で少し潤んだ瞳を手の甲で拭い視界をはっきりとさせると目の前に護衛すべき存在のツナがいつもは見かけない男子生徒と愛戯れていた。そして、友達である京子の姿も目にとらえる。


「ツナ君と京子ちゃん。おはよっ!」
「あ…舞ちゃん。おはよ!」
「…おはよう、舞ちゃん…」


明らかに元気が無く何故か上半身に何も纏っていないツナを見て舞は首を傾げ顔を覗き込んだ。


「どうしたの?ツナ君。なんか元気ないよ」
「…はは。朝から色々合って…」


乾いた笑みを浮かべながら完全に疲れきっている。きっとリボーンの仕業だな…と舞は彼の家庭教師である小さな赤ん坊を頭に思い描いた。そこで、見覚えの無い男子生徒とバチっと目が合った。舞は、一応ペコリと頭を下げ会釈を交わす。そして誰…?と問いかけるように京子に視線を向けた。


「あ、この人は私のお兄ちゃんなの。お兄ちゃん、この子は星野舞ちゃん。私と同じクラスの友達なんだ!」
「えっと、よろしくお願いします」
「ああ!極限によろしくなっ!俺はボクシング部主将の笹川了平だ!!これからも京子をよろしく頼むぞっ!」
「もぉ、お兄ちゃんったら!」


仲睦まじく言い合う笹川兄弟に舞は口元は弧を描いていたが瞳は切なげに揺らいだ。家族がいない彼女にとってこの光景は実に羨ましく憧れるものであったのだ。


「では放課後にジムで待つ!」
「あ、ちょっ!やっぱり僕…」


もう時間もギリギリとなって来たので了平は白い歯を見せながら颯爽とこの場から去った。ツナの引き留めも無視して。


「…?ツナ君ボクシング部に入るの?」
「え、いや…」


舞の問いかけにツナは答えを濁した。内心は絶対に入りたくはないが妹である京子が入る手前に断りにくいのだ。だからといって、ボクシングもできるわけがない。また面倒ごとに巻き込まれたとツナは頭を抱えた。



▽ ▲ ▽



「ツナ君頑張って」
「負けんなよ」
「10代目〜!」
「ファイトだよ!ツナ君」


ツナが嫌だ嫌だと思いつつも時は放課後になってしまい渋々ボクシング部へ訪れた。そこにはタイからのムエタイの長老であるパオパオ老師まで駆け付けていた。その正体はリボーンであるが何故かツナ以外は気づかない。他の皆もツナの応援にやって来ており本人以上にノリノリであった。


「ゆくぞ。沢田ツナ!!加減などせんからな!!」
「(俺なにやってんだーー!!?)」


いつの間にかツナは流されるままに了平とリングで対峙をしていた。怖い、と顔は真っ青になるばかり。カーンと始まりの音が鳴り響いたと同時ーーツナの頬に了平の拳が打ち込まれた。その衝撃でツナの体は床に叩きつけられてしまう。


「油断するな沢田!」
「(ちがうよ。実力だよーー。もー帰りてーよー…)」


泣きながら内心命乞いするツナの双眸には拳銃を手に持つリボーンの姿。死ぬ気弾を撃ってはダメだとジェスチャーで必死に伝える。


「ならこうだ」


そう言いながらリボーンは1発撃ち放った。しかしツナにではない。闘志をギンギンに燃やしていた了平に撃ち込んだのだ。了平はツナに凭れ掛かるように倒れ意識を飛ばす。


「ええ"ーー!お兄さんに死ぬ気弾撃ったのー!!?」
「2人に撃てばあいこだろ?」
「(そんなー!熱血兄さんに死ぬ気弾なんか撃ったら〜〜!)」
「(今、お兄さん死ぬ気弾撃たれたよね…?)」


今更だがパオパオ老師がリボーンだと気付いた舞。ツナ以外に死ぬ気弾が撃たれた所を見たことがない舞はこれからどうなるだろうか、と目をパチクリさせた。そんな中、額に死ぬ気の炎を灯した了平がムクムクと立ち上がりツナを見下ろす。これからやって来るだろう未来にツナの恐怖心が全身に巡った。


「(こ、殺される!!瞬殺されるーー!!)」
「どーした沢田。立てんのか?」
「え?」


しかしツナの考えは杞憂だった。死ぬ気弾を撃たれのにもかかわらず了平は以前と変わらない。そのことにツナも舞も仰天したがリボーンだけはニヤっとほくそ笑んだ。そこで2人にある考えが頭をよぎる。死ぬ気弾を撃っても普段と変わらない。それはつまり了平が常に死ぬ気で生きているということを表していた。


「笹川了平。たいした奴だな。次はツナだぞ」


最終的にツナにもちゃんと撃つ姿は流石としかいえない。と舞は苦笑しながら死ぬ気になったツナを眺めた。


「死ぬ気でボクシング部を断る!!」
「ほーう…俺は細かい詮索などせんぞ。なぜなら男同士、拳で全て語り合えると信じているからな」


了平は拳を構え不敵な笑みをツナに浮かべた。そして、死ぬ気同士の闘いが遂に始まる。入部しろ…!と極限ラッシュを繰り出す了平だがツナはそれを全て見切り交わした。入れ入れ、やだやだと熱い攻防は何度か繰り返され周りも自然と熱く盛り上がっていた。そして最後、守りを貫いていたツナのストレートが了平の頬に綺麗に決まり了平の体はリングから吹っ飛んだのだった。


「(やっべー!!結局やっちまったー!)」


死ぬ気が解け後悔しても既に後の祭り。もう京子と口を聞いてもらえない、と嘆き悲しんだ。しかし常に死ぬ気男である了平はとても熱く思考が人の斜め上をいく。


「ますます気に入ったぞ沢田!お前のボクシングセンスはプラチナムだ!!必ず迎えにいくからな!」
「(なにーー!!?むしろ好かれたー!!)」
「俺も気に入ったぞ。笹川了平。お前ファミリーに入らねーか」
「こ、コラー!逆スカウトすんなよーー!」


ツナにとってやはり一番厄介で面倒なことにすぐ巻き込むのは闘った了平ではなく家庭教師であるリボーンと今日改めて実感したのだった。



Back