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ツナが目を丸くして驚く中、舞は事の発端であろうビアンキに、じっと視線を這わせた。そんな舞の視線にビアンキも気づき舞に声を掛けた。


「貴方は?」
「…えっ、あたしは星野舞って言います!」


えっと、獄寺のお姉さんなんですか…?と首を傾げながら問うとビアンキは肯定するように頷いた。


「ええ、そうよ。私はビアンキ。よろしくね、舞」
「は、はいっ。よろしくお願いします…!」
「…?どうしたの。そんなにかしこまらなくてもいいわよ?」


舞は挙動不審になりながら疑念の視線をビアンキに向けていた。それをビアンキは不思議に思って口にすると舞は遠慮がちにおそるおそる重たい口を開いた。


「…ほ、本当にあの獄寺のお姉さん…なんですか…?」
「えっ?」


再度同じ質問を問う舞。だって…と言いながら舞は今度は開き直るようにしっかりとビアンキの瞳をとらえた。


「あの獄寺のお姉さんがこんな美人でまともな人なわけないよっ!あたし獄寺の家族は皆、核兵器持ってるような異端児の集まりだと思ってたもん!」
「!…えっ。舞ちゃんってそんな事考えてたの!!?(というよりビアンキもまともじゃないんだけど…)」
「うん!だってあの獄寺だよ…?一日中ダイナマイトぶっ飛ばさないと気がすまないような奴だよ!?」


普通の奴じゃない…!目をギラギラとさせ豪語する舞に最初は目を丸くしていたビアンキだったが舞の鬼気迫る形相にクスリと微笑んだ。


「ふふ。貴方面白いわ。隼人と仲が良いのね」
「いえ。獄寺とは全然…むしろ嫌われるっぽくて…」


あはは…と視線を落として力なく笑う舞にビアンキは、あらっと口元を手で押さえ、そして頬を緩ませた。


「それは違うわ。隼人とは素直じゃないだけできっと舞を気に入ってると思うわよ」
「…そうなんですかね。…って、それよりもあたしはビアンキさんと仲良くしたいですっ!」
「ふふ。私も貴方みたいな可愛らしい子と仲良くなりたいわ。今度一緒にお料理しましょう」


はいっ!とキラキラと眩しい笑顔で返事をする舞に2人の会話を聞いていたツナは顔を青ざめさせた。


「(うわっ、ビアンキと料理なんて死人が出るよ!)」


思わぬ形でどんどんと急スピードで仲を深める2人の殺人計画を知ってしまったツナは今後やってくるであろう未来を想像し思わず絶叫しかけたのであった。



▽ ▲ ▽



あの後、ビアンキとの会話に華を咲かせていた舞であったが何故か飛び出していった獄寺のことを思い出しツナと2人で獄寺の姿を探すこととなった。


「獄寺どこに行っちゃったんだろうね…?」
「ほんと。でも…獄寺君かなり切羽詰まってたみたいだったよね。…あ、いた!獄寺君…」


獄寺は神社の木に凭れ掛かり苦しそうに息を乱していた。そんな獄寺にツナ達は近寄り声を掛けた。


「あ…あの…ごめんね。せっかく、持って来てくれたスイカ…あんなことになっちゃって」


獄寺のことが、怖い…と内心震えながらも申し訳なそうに言うツナ。すると獄寺は青い顔をしながらポツリポツリとビアンキとの過去話を忌まわしそうに紡ぎ始めた。その声を舞達は黙って耳を傾けた。


「アネキとは8歳まで一緒に住んでました」


幼い獄寺の住む城ではよく盛大なパーティーが行われていたらしい。獄寺が6歳の時、初めて皆の前でピアノを披露することになった。


「(しっ、城〜〜っ!?獄寺君って実はお坊ちゃん!!?)」
「(不良がお坊ちゃん…不良がお坊ちゃん…アリエナイ)」


獄寺が当たり前のように言った“城”という単語にツナ達は驚いた。


そしてその時ビアンキが初めて獄寺のためにクッキーを焼いてくれたのが彼女のポイズンクッキング一号となったのだ。


「後でわかったんですが、アネキは作る料理がすべてポイズンクッキングになる才能の持ち主だったんです」
「どーなってんのソレ!!!」
「まずポイズンクッキングって何…?」
「勿論、当時クッキーを食べた俺は激しい目眩と吐き気に襲われピアノの演奏はこの世のものとは思えないものに…」


でもそれは獄寺にとって序章でしかなかった。獄寺の演奏を聴いた人達は、前衛的だ!素晴らしい!と高く評価してしまったのだ。そのことに気をよくした獄寺の父は発表会を増やしその度にビアンキにクッキーを作るように頼んだと言う。


「その恐怖が体に染み付いて今ではアネキを見るだけで腹痛が…」
「(悲劇だーーー!!)」
「獄寺も苦労したんだね。ごめん、今まで好き放題勝手に素直に思いのまま生きてると思ってて」
「ふざけんなチビ女っ!!いっぺん死ねっ!!つか果たす!!!」


舞の素直な意見に獄寺はギロッと舞を睨みつけた。


「うすうす感づいてたけど強烈なお姉さんだね」
「ええ、大嫌いです」
「………」


即答で“大嫌い”と言う部分を強調する獄寺にツナは気の毒すぎて何も言えなかった。舞は獄寺の話に飽きたのか空を仰ぐように見上げ雲が流れるのを見て気を紛らわせていた。



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