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ハァハァと葛藤で息を乱すツナをビアンキは廊下からひっそりと覗いていた。


「(愛のためなら人は死ねるというのが私の持論よ。さあ、死になさい。ボンゴレ10代目。愛のためにーー…)」


そんなビアンキのツナへと向けられる僅かな殺気に舞は察知した。あの人誰だろう…?とツナ以外その女性の存在に気づく者はいなかったが舞だけは気づき横目でビアンキを見つめた。


「10代目が食わないんなら俺もらっちゃいますよ」
「そーだな獄寺」
「!」


ツナの気持ちなど他所に獄寺達はツナが食べないのであれば自分達が食べるとポイズンクッキングに手を伸ばそうとし、ツナは2人の行動に焦った。このまま食べてしまえば命の終わりを迎えてしまうから。


「ちょっ」
「いただくぜ」
「どうぞ」


ツナは京子の手前、それが毒入りだとは言えず途切れ途切れの言葉しか発することができなかった。京子は笑顔でおにぎりを渡し、獄寺と山本は口を大きく開け食べようとする。そんな2人の様子をツナは狼狽しながら見、ツナは何かを決意したようにギュっと目を瞑った。


「食べたら死ぬんだぞーーっ!!」


そう叫びツナは意を決してポイズンクッキングであるおにぎりを手ではたき落とした。そんなツナの不可解な行動にその場にいた獄寺、山本、京子そして舞は瞳を丸くした。


そんなツナの身体を張った行動を学校の遠くに聳え立つビルから観察していた人物がいた。キラーンと何かが反射して光る。


「よくファミリーを守ったな。それでこそボスだ」


ニッと笑いながらツナの家庭教師であるリボーンはツナのヘソへ向かって死ぬ気弾を撃ちはなった。


「死ぬ気でおにぎりを食う!!!」


死ぬ気弾を撃たれたツナは額に死ぬ気の炎を灯し衣服を破り捨て下着一枚となり、はたき落としたおにぎりを全てパクパクと食べた。


「うまい!」
「!!ポイズンクッキングが効かない!!?」


ビアンキはポイズンクッキングを普通に食べるツナに目を見開いて驚いた。何故、食べても大丈夫かというと死ぬ気弾をヘソに撃つことにより鉄の胃袋(アイアンストマック)となり何を食べても平気な身体となったかからだ。


しかし、ツナはビアンキのおにぎりを食べるだけでは満足はいかなかった。たりねー!!!と言いながら教室中にあったおにぎりを無差別に食べ始め、その事により教室には悲鳴と叫び声が響きわたった。



▽ ▲ ▽



はぁぁ…とツナは大きな溜息を吐きながらトボトボと帰路を獄寺達と共に歩いていた。


「ツナ君食べ足りなかったの?」
「そーなんすか10代目?」
「ツナはよく食うなぁ」
「へっ!?」


見当違いな舞の天然言葉に次々と便乗する獄寺と山本。そんなわけあるかっ…とツナは内心ツッコミを入れた。


「じゃあ、あたしがまた作るね」
「えっ」
「そりゃあいいな。俺にも作ってくれよ」
「もっちろん!」


緩やかに笑う舞に山本は賛同の言葉を口にした。しかし、獄寺はチビ女の料理なんか…とボソリ嫌みたらしく呟いた。それは舞の耳にも確かに聞こえ彼女は目くじらを立てた。


「(獄寺君はまた…なんでそういうこと言っちゃうかな)」
「(獄寺も素直じゃねぇのな)」


ツナと山本は獄寺の言動に舞がいつキレるのかとハラハラさせていた。普段怒らないタイプがキレると怖いと言うのはよく聞く話だ。そして舞はその部類の人間なのではないかとツナ達は考えていた。しかし、舞は一旦、目を伏せたと思ったら口元を緩め微笑み出した。


「…あたしね、一人暮らししてるから料理には自信があるの」
「えっ?舞ちゃん一人暮らしなの!?」
「うん。だからね…」


ツナの質問にも答えた舞は視線をゆっくりと獄寺に移し向かって指を差し不敵に笑った。


「絶っ対にあたしの料理食べて美味しいって思わせるから…!」


覚悟しといてよね…!と宣戦布告のように言葉を紡いだ。獄寺は、勝手にしろ…とまたも悪態をついたけれど舞は怒ることもなく、ふふっと柔らかな笑みを溢した。


そんな舞の様子を伺っていたツナは舞ちゃんって大人だな…と感嘆の声を心の中で洩らした。獄寺はすぐに相手を威嚇し自分の欲望に素直に生きているとツナは考えていた。そんな獄寺と言い合う事が多い舞だから獄寺と同じ子どもっぽさが抜けていないように思っていたが、やはりこの時期の女子というものは男子に対して幾分か大人なんだと実感をした。


しかし、舞はツナが感じているような大人な対応を意識した訳ではない。舞の奥底に眠る縛り付けられた感情を無意識のまま行動に移していただけだったのである。


一見すると何も考えていないような無邪気な彼女。しかし、誰もその本人も気づかない内に彼女は少しずつ少しずつ暗い闇に侵食されているのである。そう、まるで今目の前に広がる雲ひとつない大空と正反対のように。



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