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ビアンキ


「今日は家庭科実習でつくったおにぎりを男子にくれてやるーっ」
「「「オーーー!!」」」


今日は家庭科の実習で女子達はおにぎりを作った。そのおにぎりを男子にあげるのがここの伝統みたいだ。


「獄寺君食べてーーっ」
「山本君のために作ったの!」


クラスのカッコいいトップ2に女子達は思いのままおにぎりを差し出す。舞はあの2人ってすごいモテるんだなと他人事のように遠目で様子を見ていた。まあ、他人事なのだが。


「…2人ともすごいね」
「そうだね。あんなにモテるなんて知らなかった」
「はは」


ツナは思わず苦笑いをした。舞はともかくツナは気づいたのだ。周りの男共の視線に。あれは舞のおにぎりを狙う目だ。獄寺君達もすごいけど舞ちゃんもすごいモテるんだよなーっと周りの視線に気付かないフリをして舞を見つめた。


「そ、そういえば舞ちゃんはおにぎり作んなかったの?」
「え…あたしも一応作ったよ。授業だったし。食べる?」


はい…とツナの目の前に出したのはぴっちりと綺麗な三角形で型取られた美味しそうなおにぎりだ。


「え、いいの?」
「もちろん。ツナ君が食べてくれるならあたしも嬉しいよっ」


エヘっと笑う舞にツナは思わずキュンとした。そしてありがとうと言っておずおずとおにぎりに手を伸ばしパクッと口のなかへ入れた。


「ん!美味しいよっ」
「!…ありがとう」


舞はツナに作ったものを褒められ心底嬉しかった。そんな嬉しい気持ちも束の間ーー


「なんだかツナそれ美味そうだな」
「10代目。この女の作ったもんなんかわざわざ褒めなくてもいいですよ」
「フンっ。ツナ君は獄寺と違って優しいの!」
「獄寺もそんな突っかかんなくてもいいじゃねーか」
「うっせぇ!野球馬鹿!」
「武君はうるさくないよ!」


舞の怒鳴り声に獄寺は一層眉間の皺を寄せた。そして、なんだとと舞を睨んだ。


「そんなこと言うんだったら獄寺にはあげないからっ」
「お前のなんか別に食いたかねぇし。チビ女が作った奴が美味いもんなんて有り得ねぇ」
「あたしだって料理くらいできますーっ!」
「ケッ、どーだか」


そんな2人の言い合いをツナはオロオロと慌てながら見ていて山本は仲良いなーと暢気に笑っていた。犬猿の仲とでも言うのだろうか。ツナは困っていた。会う度に何かと口論になるこの2人。舞は普段は穏やかで優しいのだが獄寺の時となると別人だ。声を荒げ獄寺に対する悪口を言うのだ。


「バカ寺なんてハゲろ!」
「あ"あ"っ!?」
「坊主の方がもっとモテるかもよ?」
「うっせぇ!チビ!」


この2人の口論ってイマイチ子供じみてるんだよなー。トホホと溜息を吐きツナはそんな事を思っていながら、京子ちゃんは誰かにあげるのかな…?と視線をずらした。そしてツナはあるものを見つけ目をギョッとさせ、大きく見開いた。


「(あれは!ビアンキ!!)」


ビアンキというのはつい最近ツナの目の前に現れたリボーンの愛人の殺し屋。彼女はツナを殺すためにこの町へとやってきたのだ。そんな彼女が京子ちゃんの背後に忍び寄っている事にツナは不安を感じた。


「(なにーー!!?京子ちゃんのおにぎりをすりかえたのかーっ!?)」


ビアンキはすっと京子のおにぎりをポイズンクッキングにすりかえたのだ。その事に慌てたツナは大声をあげ京子に近寄った。


「ちょっ、まてよっ。何してんだおまえ!?」


しかし近寄った時には既に時遅し。ビアンキの姿はなくなっていた。あれ?どこいったんだ?と周囲をキョロキョロと見回していると愛しの京子が話しかけてくれた。


「ツナ君。食べる?」
「い"っ!!?」


京子が差し出したおにぎりはビアンキがすりかえたポイズンクッキングだ。そのおにぎりは毒々しい雰囲気が漂っており食べたら間違いなく死んでしまうだろう。それを理解しているツナはおにぎりを取る手を躊躇った。


「あ、シャケ嫌いだった?」
「いや…そ…そんなことはなくて…っ(そんな顔しないでよ京子ちゃん!!)」


差し出すおにぎりを取ってくれないツナに対し京子は悲しそうな表情を見せた。大好きな京子にそんな表情を見せられればツナは食べないわけにはいかない。しかし、食べたら死んでしまうとツナはどうしたらいいんだ!と葛藤に苦しんだ。



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