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- ナノ -
こうして育っていく心の溝


ツナとリボーンと別れた舞はディーノと共に雲の守護者に会うため並盛中へと向かっていた。本来であれば授業を受けなくてはならないのだが今の状況では勉強などする気になれない。先生には見つからないようにしよう、と舞が道中思っているとサラリと金色の髪を揺らしながら隣にいるディーノが声をかけた。


「なぁ、舞」
「ん?」


道端でディーノが歩みを止めたので、舞は不思議そうにしながらも同じようにその場で止まった。なんだか重い空気。二人の間にはソレが流れているように舞は思えた。


「お前は…ボンゴレリングを貰ってねぇんだよな?」


真剣味を帯びた瞳をしている彼。そんな彼の様子に舞は少し目を見開かせるが、直ぐにニコっと口元に弧を描いた。


「ディーノはあのボックスのリングが誰に配られているか知ってるんでしょ?」
「ああ。そうなんだけどさ、」


遠回しに自分は持っていないと言えば、何だか歯切れの悪い返事。だが舞は先程の言葉で気づいていた。ディーノが何を言いたいのかを。その髪色と同じ金色の瞳で見つめられ、何故か胸がチクリと痛んだ。でもその痛みには気づかないフリをしてまた笑みを溢した。


「ディーノは最後のリングをあたしが持っているかを知りたいんだよね?」
「……!」
「ごめん。さっき嘘付いた。ほんとは持ってるんだ」


そう言って舞は制服の中に隠していたネックレスを取り出した。その中心に輝くのは星の刻印が描かれているシルバーリング。"星空のリング"だ。


「それは…!」
「そう。あたしが選ばれたみたいなの。そんな大した器じゃないんだけどね」


指輪を持って間近でソレを見る。世界の至宝と呼ばれるリングが自分の手の中で光り輝いていることが不思議に思えた。


「舞…」
「……」
「そのリングを持つ意味がわかってるか?」


その時、木枯らしが吹き荒れる。二人の髪が風によって靡き、ディーノは髪を抑えながら目を細めた。何故か目を閉じるのが怖く感じた。風と共に、舞が消えてしまうような気がして。だから早く風がおさまってくれることを願う。風が止み瞳をしっかりと開くと柔和に微笑む舞の姿があってホッと息を吐き、そして言葉を続けた。


「俺達は裏の世界に生きてるから普通の生活とまではいかねぇ。だが、そのリングを持てばお前は確実にマフィアの渦中に巻き込まれることになる。ーーもう穏やかな生活には戻れねぇぜ」


「わかってる。運命を変えてしまう程の凄いリングだってこと」


それでも、と舞は長い睫毛を伏せた。


「あたしには叶えたい願いがあるの」


ツナの力になりたい。舞の願いはソレだ。それとあともう一つ。このリングが必要な絶対の理由がある。だからどんな運命に巻き込まれようと、これからどんな運命が待ち受けていようとも手放す訳にいかないのだ。心配そうに瞳を揺らすディーノに舞はやはり笑みを見せた。


「あたしは"大丈夫"だから」
「……っ」


ディーノはギリっと奥歯を噛み締めた。だが諦めたかのように視線を落とし「そうか…」と言って再び歩き出した。その背中を追うように舞も着いて行く。二人の間には僅かな距離があった。でもそれは単純に距離が開いているだけではない。昔から二人の間には埋まることのなかった深い溝があったのだった。



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