ブラッド・オブ・ボンゴレ
メラメラと燃え滾る死ぬ気の炎に体から漂うただならぬ闘志。橙の瞳は冷静に見えるが奥底にはキラリと輝く熱さが宿っていた。いつもとは違うツナの表情に舞は思わず釘付けになった。
「その頭部の闘気…なるほど…特殊弾が命中していたのですね。しかし、ランチアと戦っていた時にはもっと荒々しかったようですが…」
そう。いつもの死ぬ気弾だとツナは体中の熱が爆発するような死ぬ気の状態になれる。だけど今、撃たれた小言弾はツナの静なる闘志を引き出す、死ぬ気弾とは全く違う新しい力を秘めた弾なのだ。リボーンが説明をすれば骸はフッと笑った。
「僕には戦意喪失し意気消沈しているようにしか見えませんがね。どのみち僕の能力の前では君は敵ではない」
ツナの背後から犬が襲いかかる。しかしツナは振り返らずに犬の顔面を掴み裏手で勢いよくパンチをした。
「まだですよ」
次は千種による攻撃。2つのヨーヨーが飛び交い幾数の針がツナを襲う。しかしツナはわかっていた。目の前で攻撃をしている千種が幻覚であることに。ツナは在らぬ方向をキッと睨み、そこへ向かって走り出す。そして思い切り拳を振るうと隠れていた千種が吹っ飛んだ。
「なに!?」
「バカな…奴は地獄道の幻覚を見破れなかった筈……」
「すごい…ツナ君」
「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠るブラッド・オブ・ボンゴレが目覚めたんだ」
死ぬ気弾は危機によるプレッシャーで外部からリミッターを外すのに対し、小言弾は秘めたる意志に気づかせることにより内面から全身のリミッターを外す弾だ。
「そして同時に内面にある感覚のリミッターも解除するんだぞ。ツナの場合、それはここにきて時折見せるようになったボンゴレの血統特有の"見透かす力"」
ーー超直感だ。
「まだグローブの使い方なっちゃいねーがな」
ツナは獄寺とビアンキの傍へと歩き出す。
「おっと忘れてしまったわけじゃありませんよねぇ。これはお仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
先ほど膝をついて立つことができなかった獄寺であったが時間が経てば前のように動けるようになった。そして、右目を四の修羅道へと変える。
「クフフ」
「がっ」
獄寺はツナの顔面に肘鉄を決めた。それに続くようにビアンキも腹に蹴りを入れる。
「、ツナ君っ!」
2人によって何度も殴られ、蹴られるツナを見て舞は叫んだ。本当であればツナの元へと行きたい。しかし何故かさっき叫んだ後から息苦しく体に力が入らないのだ。思い通りにならない体を酷く恨めしく思った。
「クフフ。やはり手も足もでませんか」
「良いサウンドバックですね」
「ちげーぞ」
リボーンは言う。これほどの攻撃力であればガードして避けてもビアンキ達の体に負担がかかってしまう。だからツナは自分の体で攻撃をいなして2人の体を守っているのだと。ツナは獄寺の首に攻撃を与えた。打撃で神経を麻痺させる戦い方。これをツナは直感でやってのけたのだ。
「直感しただと?ふざけたことを!」
次はビアンキの首に打撃を与える。2人の体は麻痺で動かなくなり、前のめりで倒れそうになる。しかしそうなる前にツナはふわりと2人を受け止めた。
「待たせてごめん…」
ツナはリボーンに2人を任せ、ある一点を見つめた。
「出てこい骸。生きてるんだろ?」
「、え」
ツナの言葉により舞も霞む視界の中で同じ方向へと視線を移す。
「クフフ」
舞は目を見開いた。そこには、自身で頭を撃ち抜き倒れていた筈の骸が悠々とした笑みを浮かべながら佇んでいたのだから。
「フッ。戦闘センスが格段に向上していることは認めましょう。だがこの程度で図に乗ってもらっては困りますね」
骸は言う。骸が持つ6つの戦闘能力の内、まだ発動されていない能力があると。それは、人間道。今…生きているこの世界こそが人間道にあたるが、実は6つの冥界のなかで最も醜く危険な世界だと。
「だから僕はこの世界を嫌いこの能力を嫌う。できれば発動させたくなかったー…」
骸は自身の右目に手を伸ばした。
「この人間道は最も醜く…」
彼はその右目を抉るように指を入れた。グジュ、クジュ…と嫌な音がたち血が溢れるように流れていく。あまりに残酷な行動に舞は思わず目を背けたくなった。そして瞳に五の文字が浮かび上がる。
「最も危険な能力ですからね」
その瞬間、黒い闘気が骸を包み込んだ。体から吹き出す闘気の大きさはすなわち、その人物の強さを表す。骸がより強敵となったのは見て取れるほどであった。
「君と僕とでは力の差がありすぎる」
骸は三叉槍の柄の部分でツナに叩きつける。それを受け止めたツナであったが、あまりの力の強さに身が後ろへと押されてしまった。それを見た骸はツナの腹部に拳を思い切りぶつけた。
「がはっ」
ツナの体は宙を舞い壁に叩きつけられる。
「クハハハハ!脆いですね。ウォーミングアップのつもりだったのですが」
「で、なくっちゃな……」
噴煙の中で影が揺らめく。そしてツナの額の闘気がはじけ、先ほどよりも大きな炎が灯った。
「わかってきたみてーだな。グローブの意味が」
「お前の力がこんなものなら…拍子抜けだぜ」
額の炎をグローブに灯し、ツナは骸を睨みながら構えの形を取った。
「クフフフフ。全く君は楽しませてくれる」
Back
メラメラと燃え滾る死ぬ気の炎に体から漂うただならぬ闘志。橙の瞳は冷静に見えるが奥底にはキラリと輝く熱さが宿っていた。いつもとは違うツナの表情に舞は思わず釘付けになった。
「その頭部の闘気…なるほど…特殊弾が命中していたのですね。しかし、ランチアと戦っていた時にはもっと荒々しかったようですが…」
そう。いつもの死ぬ気弾だとツナは体中の熱が爆発するような死ぬ気の状態になれる。だけど今、撃たれた小言弾はツナの静なる闘志を引き出す、死ぬ気弾とは全く違う新しい力を秘めた弾なのだ。リボーンが説明をすれば骸はフッと笑った。
「僕には戦意喪失し意気消沈しているようにしか見えませんがね。どのみち僕の能力の前では君は敵ではない」
ツナの背後から犬が襲いかかる。しかしツナは振り返らずに犬の顔面を掴み裏手で勢いよくパンチをした。
「まだですよ」
次は千種による攻撃。2つのヨーヨーが飛び交い幾数の針がツナを襲う。しかしツナはわかっていた。目の前で攻撃をしている千種が幻覚であることに。ツナは在らぬ方向をキッと睨み、そこへ向かって走り出す。そして思い切り拳を振るうと隠れていた千種が吹っ飛んだ。
「なに!?」
「バカな…奴は地獄道の幻覚を見破れなかった筈……」
「すごい…ツナ君」
「これこそ小言弾の効果だぞ。ツナの内に眠るブラッド・オブ・ボンゴレが目覚めたんだ」
死ぬ気弾は危機によるプレッシャーで外部からリミッターを外すのに対し、小言弾は秘めたる意志に気づかせることにより内面から全身のリミッターを外す弾だ。
「そして同時に内面にある感覚のリミッターも解除するんだぞ。ツナの場合、それはここにきて時折見せるようになったボンゴレの血統特有の"見透かす力"」
ーー超直感だ。
「まだグローブの使い方なっちゃいねーがな」
ツナは獄寺とビアンキの傍へと歩き出す。
「おっと忘れてしまったわけじゃありませんよねぇ。これはお仲間の体ですよ。手をあげられるんですか?」
先ほど膝をついて立つことができなかった獄寺であったが時間が経てば前のように動けるようになった。そして、右目を四の修羅道へと変える。
「クフフ」
「がっ」
獄寺はツナの顔面に肘鉄を決めた。それに続くようにビアンキも腹に蹴りを入れる。
「、ツナ君っ!」
2人によって何度も殴られ、蹴られるツナを見て舞は叫んだ。本当であればツナの元へと行きたい。しかし何故かさっき叫んだ後から息苦しく体に力が入らないのだ。思い通りにならない体を酷く恨めしく思った。
「クフフ。やはり手も足もでませんか」
「良いサウンドバックですね」
「ちげーぞ」
リボーンは言う。これほどの攻撃力であればガードして避けてもビアンキ達の体に負担がかかってしまう。だからツナは自分の体で攻撃をいなして2人の体を守っているのだと。ツナは獄寺の首に攻撃を与えた。打撃で神経を麻痺させる戦い方。これをツナは直感でやってのけたのだ。
「直感しただと?ふざけたことを!」
次はビアンキの首に打撃を与える。2人の体は麻痺で動かなくなり、前のめりで倒れそうになる。しかしそうなる前にツナはふわりと2人を受け止めた。
「待たせてごめん…」
ツナはリボーンに2人を任せ、ある一点を見つめた。
「出てこい骸。生きてるんだろ?」
「、え」
ツナの言葉により舞も霞む視界の中で同じ方向へと視線を移す。
「クフフ」
舞は目を見開いた。そこには、自身で頭を撃ち抜き倒れていた筈の骸が悠々とした笑みを浮かべながら佇んでいたのだから。
「フッ。戦闘センスが格段に向上していることは認めましょう。だがこの程度で図に乗ってもらっては困りますね」
骸は言う。骸が持つ6つの戦闘能力の内、まだ発動されていない能力があると。それは、人間道。今…生きているこの世界こそが人間道にあたるが、実は6つの冥界のなかで最も醜く危険な世界だと。
「だから僕はこの世界を嫌いこの能力を嫌う。できれば発動させたくなかったー…」
骸は自身の右目に手を伸ばした。
「この人間道は最も醜く…」
彼はその右目を抉るように指を入れた。グジュ、クジュ…と嫌な音がたち血が溢れるように流れていく。あまりに残酷な行動に舞は思わず目を背けたくなった。そして瞳に五の文字が浮かび上がる。
「最も危険な能力ですからね」
その瞬間、黒い闘気が骸を包み込んだ。体から吹き出す闘気の大きさはすなわち、その人物の強さを表す。骸がより強敵となったのは見て取れるほどであった。
「君と僕とでは力の差がありすぎる」
骸は三叉槍の柄の部分でツナに叩きつける。それを受け止めたツナであったが、あまりの力の強さに身が後ろへと押されてしまった。それを見た骸はツナの腹部に拳を思い切りぶつけた。
「がはっ」
ツナの体は宙を舞い壁に叩きつけられる。
「クハハハハ!脆いですね。ウォーミングアップのつもりだったのですが」
「で、なくっちゃな……」
噴煙の中で影が揺らめく。そしてツナの額の闘気がはじけ、先ほどよりも大きな炎が灯った。
「わかってきたみてーだな。グローブの意味が」
「お前の力がこんなものなら…拍子抜けだぜ」
額の炎をグローブに灯し、ツナは骸を睨みながら構えの形を取った。
「クフフフフ。全く君は楽しませてくれる」
▼