爆発に巻き込まれ、体が重く動かない。だが意識だけはどうにか保っていた。
「(痛い…体中が…痛いよぉ…もう…死ぬのかな……もういいよな…よくやったよな…みんなごめん…俺…ここまでだーー…)」
もうたくさんだった。こんなに痛いのもこんなに怖いめに遭うのも。虚ろげな瞳を緩慢に開くと目に映るのは冷たい床だけであった。
《んまあ、この服っ!!ツナったらまたちらかしたまま出掛けて〜〜っ。自分のことは自分でしなさいって言ってるのに〜!》
「(え…?か…母さん…?…夢なのか…?なんだよこれ?)」
《日直日誌に沢田のテスト紛れてんじゃん。しかも2点!!》
「(あ……国語のテストだ…)」
《あいつ、マジでダメツナだな〜〜っ。京子モノにしたいんならもーちょっとしっかりしろよ〜〜〜っ》
「つーか何で黒川の悪口が…?」
突如、聞こえてきた声。しかもその声は耳に聞こえるのではなく、頭に直接入ってくるような感じがするのだ。
《特殊弾の効果みてーだな》
「ん!?」
「(リボーン!!)」
《お前が感じてるのはリアルタイムで届く皆からお前への小言だ》
「(!?小言…!?な、なんでこんな時に…小言聞かされなきゃならないんだよ…最後の最後にまたダメツナって思い知らされるのかよ……)」
最早、自分でも呆れるしかなかった。それでもツナへの小言は次々に発せられる。
《はひーー!何やってるんですか?犯人のアジトに乗り込むなんて正気じゃありません!》
「(ゲっ、ハルだ…)」
《ガハハ。ハル泣いてるもんね!》
《な…泣いてません!ハルはマフィアのボスの妻になるんです。こんなことで泣きませんよ。ツナさん。頑張って下さい!》
「!」
《落ち着け、京子》
《だって…シャマル先生がツナ君達が乗り込んだって…》
《心配するな》
《…でも》
《あいつは俺が手合わせた中で最も強い男だ。負けて帰ってきたら俺が許さん》
《そうだよね…大丈夫だよね…ツナ君。元気で帰って来てね》
「………」
《俺と同じ過ちを繰り返すな。仲間を守れ…お前がその手でファミリーを守るんだ》
ランチアの小言を聞き、ツナはギリっと歯を食いしばる。
《ツナ君お願い…貴方なら…皆を助けられる。だって、貴方は誰よりも強く優しいから…》
数メートル先の舞の小言はしっかりとツナに聞こえた。いつものように柔らかく、ダメダメな自分の背中を後押ししてくれるような心地の良い声が。
「俺の小言は言うまでもねーな」
その瞬間、ツナは虚ろげな瞳ではなく決意を宿したような瞳へと変わった。
「ほう…この後に及んでそんな目をしますか。ですが、もう幕引きにしましょう。このまま死なれても困りますからね」
ビュっと千種が三叉槍をツナへ振りかざす。だがその刃先をツナは臆することなく掴んだ。その時、手袋が光に包まれたのだ。
「な………!!?」
手袋はグローブへと変化した。そして掴んでいた刃先がバキっと粉砕され、千種は慌てて三叉槍を引く。
「骸…お前を倒さなければ……」
ボッと額に死ぬ気の炎が灯る。
「死んでも死に切れねぇ」
▼