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ダイゴさんが旅に出てから半年

トレーナーズスクールとピアノや茶道などの習い事と、同じような毎日が続くなか、時間があいたときはダイゴさんから貰った石の図鑑を眺める。

今頃彼はどこを旅しているのか。
ダンバルはもう進化したのか。

いつ会えるかもわからない婚約者に想いを馳せていれば、ティアが慌ただしく部屋に入って来て私に来客を知らせてきた。

「お、お嬢様…!お嬢様にお客様が…!!」

彼女がこんなに慌てるなんて珍しいと首を傾げて来客の名前を聞けば、慌てて立ち上がる。

「な、なぜムクゲ社長が私に…!?」

そう。来客というのは、婚約者であるダイゴさんの父親、ツワブキ・ムクゲ社長らしい。
ティアに急いで応接室へ通すように指示し、私は私で部屋着から来客用の洋服へと着替える。

しかし、なぜムクゲ社長が私に会いに来たのか、理由がとんとわからなかった。

あれか。ダイゴさんとの婚約を解消しろとかいう話か。だったら嫌だなあ。

一つの可能性が頭に浮かんで不安が募りつつも、急いでムクゲ社長が待っている部屋へ向かった。

そしてこの後、この心配は杞憂だったことを知る。






「…私に、ポケモンを?」

ムクゲ社長に会って挨拶し用件を尋ねれば、ムクゲ社長は一つのモンスターボールを私に差し出した。

「このポケモンは、とても珍しい種類でね。ダイゴの婚約者であるエリシアくんに、ぜひ貰ってほしい」

「…出してみてもよろしいですか?」

「もちろんだ」

優しい笑顔で頷いたムクゲ社長からモンスターボールを受け取り、部屋の中へ出してみれば、現れたのは彼の側にいることに見慣れていた、けれど少し色が違うポケモン、ダンバルだった。

「ダンバル…!?え、だってダンバルは…!しかも色違い…!?」

ムクゲ社長とダンバルを交互に見れば社長は笑い、私の頭を撫でた。

「ダンバルは、このホウエン地方に野生で存在はしていない。けれど、あのダイゴが惚れ込むほどの女性であれば、きっと気に入るだろうと思ったんだよ」

ダンバルを、貰ってはくれないだろうか。

頭を撫でられながら言われ、恐れ多いと恐縮しながらも何度も頷く。

「大切にします!大切に育てて、このダンバルと私のロコンと一緒に、ポケモンリーグへ挑戦します!」

私の宣言に社長は"頼もしい"と笑い、応援しているとの言葉を貰った。

その後に聞いたことだが、ダイゴさんは今ストーンバッジとナックルバッジを所持していて、次はキンセツシティのジムバッジを目指して旅を進めているようだ。
でもムロタウンに石の洞窟を見つけて、暫くはそこで探検するつもりらしい。

最後の洞窟に、なんともダイゴさんらしい行動で小さく笑ってしまった。

ダイゴさんの話が終わった後、改まって名前を呼ばれて真剣な表情になったムクゲ社長に、なんだろうと私を表情を引き締める。

「エリシアくんは、もしダイゴがデボン・コーポレーションの跡継ぎの座を辞退しても、ダイゴの隣にいてくれるかな?」

社長の言葉に、何を言われるだろうかと感じていた不安が一気に晴れ、もちろんだと頷く。

「私はダイゴさんがデボン・コーポレーションのご子息だからという理由だけで、彼との婚約を続けているわけではありません。私は、ダイゴさんだからこそ好きになって、婚約を続けています」

肩書きなんて関係ないと答えれば、社長は嬉しそうに顔を緩め、私にお礼を言った。

「ダイゴにエリシアくんを勧めて良かったよ。これからも、あの子をよろしく頼むよ」

「こちらこそ、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、よろしくお願いいたします」

お互い頭を下げ合って笑い、社長は帰って行った。

私も自室へ戻ってダンバルをボールから出して挨拶をすれば、ティアを呼んで街の外へ出る。

「お嬢様?何をなさるのですか?」

「何って、街の外へ出たらやることは一つじゃない」

ティアの質問に答えながら草むらに入り、大きく音を立てながら歩けば、野生のポケモンが襲いかかってきたため、私もボールからダンバルを取り出す。

「さあ、ダンバル育成のポケモンバトル開始よ!」

その日は日が暮れるまでダンバルを育てた。
ロコンも念のため連れてきていたが、彼はもうこの辺のポケモン相手ならば余裕で勝利してしまうため、最近はあまり野生のポケモン相手のバトルに出していない。

社長からダンバルを頂いたことにより、ダイゴさんとメタグロス対メタグロスのバトルが出来ると喜び、私はその日のためにダンバルを育てる。

すべては、チャンピオンの彼に挑む日を夢見て。

 

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