2020/62
ミナモシティに辿り着いた。
ここにはジムは無く、コンテストのみらしい。
それはミナモシティに来る前からわかっていたため、ミナモデパートで不足している道具を買い足して早々にトクサネシティへ向かうべく、足を海の方へ向けた。
その時に見た景色を、私は生涯忘れることはないと思う。
「………きれい」
海が太陽の光を反射して、きらきらと輝いていた。
そのきらきらはどこまでも続き、木々は心地よい風に揺れていた。
なんて綺麗なんだろう。
ミナモシティは海に面しているため、港や砂浜、潮風もあって居心地が良い。
同じく海に面しているカイナシティは活気があって楽しかったが、ミナモシティは落ち着いていて、ずっといたくなるような、そんな街だった。
「…旅が終わったら、ミナモシティに住むのもいいかもね」
「キュウ」
「ぴかっ!」
1人呟けば、それは良い考えだと同調するように、キュウコンとピカチュウは楽しそうに頷いた。
…ミナモシティ、前向きに考えておこう。
ゆっくり観光するのはトクサネジムを突破してからだと自身に言い聞かせ、パン屋でパンを数個買ってトクサネシティ方面の海にミロカロスを放った。
「ミロカロス、なみのりだよ。トクサネシティまで行こう」
「ふわぁぁぁぁお」
ミロカロスは上機嫌に歌いながら、時々挑まれるバトルはチルットで応戦しながら、なんとかトクサネシティにたどり着く。
思ったんだが、ゲームではどうやってポケモンバトルしていたんだろう。水ポケモン以外。
今回は空を飛べるチルットで応戦したが、キュウコンやピカチュウは………、いや、考えるのはやめよう。
「長距離ありがとう、ミロカロス。休んでてね」
トクサネシティの砂浜に降り立ち、ミロカロスをボールに戻して、とりあえずとポケモンセンターに連れて行き、みんなを休ませる。
時間も夕方だし、このままトクサネシティで一泊するのも悪くないかと思っていれば、ポケナビに知らない番号から着信が入る。
「………? はい、エリシアです」
首を傾げて応答すれば、ポケナビを落としそうになるほど、電話の向こうからの声に驚いた。
「あ、エリシア?良かった。番号、ちゃんと合ってたんだね」
「………だ、ダイゴ、さん?」
そう。電話の相手は、番号を教えたはずのない、ダイゴさんだった。というか私がポケナビを持っていることすら知らないはずなのに。
呆然としていると、ダイゴさんは私の様子に楽しそうに笑った。
「エリシアのご両親に、ポケナビの番号を教えてもらってね。そろそろジム巡りも終盤かなと思って電話してみたんだ」
番号入手の経路を聞いて納得し、次に彼の読みに感心する。
事実、本当にジム巡りはあとトクサネジムとルネジムの2つのみだからだ。
「そうですね。あとトクサネジムとルネジムを突破すれば、次はポケモンリーグです」
それで今トクサネシティにいるのだと伝えれば、ダイゴさんが何故か食いついてきた。
「いまトクサネシティにいる!?本当かい!?」
「え、ええ、はい。トクサネジムの挑戦が終わっても夜になりそうですし、今日はこのまま、ポケモンセンターで一泊しようかと思ってました」
彼の勢いに若干引きつつ答えれば、そのままポケモンセンターにいてくれとお願いされ、電話を切られた。
なんだなんだと首を傾げていれば、ゲームを思い出して納得した。
ここ、ダイゴさんが一人暮らししている街じゃないか。
だからあんなに食いついてきたのかと頷き、ジョーイさんからみんなが入ったモンスターボールを受け取る。
「どうされます?もう夕方ですし、このまま部屋をとっていかれますか?」
彼女からの提案に悩み、首を横に振った。
「この街、知り合いが住んでいるみたいなので、今日はそっちに泊まろうと思います。断られたら、その時部屋をとらせてください」
「わかりました。お待ちしてますね」
ジョーイさんに一礼し、センター内に設置してある椅子に座って雑誌を読む。
………あ、カトレア、またコンテストで優勝してる。すごいなあ。
…あ、スミレとヒナタもだ。みんな、コンテスト専門だもんね。頑張ってるんだ。
「……私も、頑張らないと」
私も、もうすぐでポケモンリーグに挑戦する権利を得ることができる。
四天王を倒して、そして………
「やあエリシア!お待たせ。久しぶりだね」
「……ダイゴさん」
…そして、目の前の彼、ツワブキダイゴに勝ちたい。
いや、勝つんだ。私のポケモンたちと一緒に。
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