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「……よし」

さっきは予想外の出費があったが、気を取り直してジム挑戦だ。

「ここはヒワマキジム。ここのジムトレーナー、ジムリーダーは飛行タイプを使ってくるぞ!仕掛けもぐるぐると回るから、目を回さないようにな!」

きばってこい!と背中を押され、いつもジム入口にいる男性と別れを告げ、ジムの奥へと進む。
今回は飛行タイプで、みんなタイプ一致の技を持っていないため、先攻はキュウコン、メタグロス、ミロカロス、サーナイト、チルットでいこうと思う。

「僕の美しい飛行タイプを見ろ!」

「飛行タイプは電気に弱いという印象をつけやがって!!」

途中、ジムトレーナーと戦いながらも(1人は電気タイプに向かって文句言ってたけど)、ジムリーダーのところまで到着した。

ジムリーダーは若い男性で、足首まであるコートを風に靡かせていた。

「僕の名前はソニア。このヒワマキジムのジムリーダーだ」

「エリシアです。よろしくお願いします」

一礼し、早速モンスターボールに手をかければ、ソニアさんが私の名前を聞いて驚き、次いで笑った。

「そうか、キミがエリシアさんか。待っていたよ」

彼の反応を見て、遠い目をしてしまったのは許してほしい。

「ダイゴさんですね……」

私の問いかけに頷いたソニアさんは、くつくつと笑いながら自身のモンスターボールに手をかけ、空高く放り投げた。

「ご名答!さあオオスバメ、キミのステージだ!」

「キュウコン!すべてを燃やしつくして!」

私も負けじと空高くモンスターボールを放り投げ、ポケモンバトルを開始する。

「ダイゴは、それはもう婚約者にぞっこんのようでね。彼の周りに寄る、リーグ本部の女性たちには見向きもしてなかったよ」

「…っ!バトルに集中してくださいよ!!キュウコン、だいもんじ!」

バトルの最中、隙あればダイゴさんのことを話す彼に苛立ちを覚え、途中途中指示を間違えたり遅かったりしたことが、また私自身を苛立たせた。

「っ…!キュウコン!」

「ほらほら、どうしたんだい?キミの力はその程度かな」

「……っ、ぜっっったい勝つから!!!メタグロス、
しねんのずつき!」

この男、人を苛つかせるのに定評があるのかと思うほどに、終始こちらの調子が狂わされた。

***

「…あれ、もう終わりか」

ソニアさんの最後のポケモンが倒れ、審判が私の勝利を告げると、彼は今気付いたとばかりに首を傾げ、私にヒワマキジムのジムバッジ、フェザーバッジを差し出した。

「どうぞ、これがフェザーバッジだよ」

「………ありがとうございます」

「そんなに睨まないでよ。本当のことしか喋ってないし」

「バッジありがとうございました!失礼します!」

バッジを彼の手からひったくるように奪い取り、背を向けて足早に出口に向かって歩いていれば呼び止められ、番号を書いた紙と1つの技マシンをもらう。

「これ、僕のポケナビの番号。再戦したいときとか連絡して。いつでも相手になるよ。あとこの技マシン、中身は"そらをとぶ"ね。一度行った場所なら、この技で行けるようになる。もちろん、覚えられるのは飛行タイプのみだ」

「……ありがとうございます」

不貞腐れながらも紙と技マシンを受け取り、早々とジムを出る。

とりあえずポケモンセンターでみんなを回復してもらい、時間も夕方だしとそのまま部屋をとる。

ヒワマキシティは秘密基地のグッズが売っていることから人気の町らしく、1人部屋が最後の一部屋だったようだ。運が良い。

部屋に行ってみんなをボールから出し(ミロカロスとメタグロスは大きいためボールの中。ごめんね)、ご飯をあげる。
今日はジムでみんな頑張ってくれたからちょっと奮発して良いご飯だよ。

みんなご飯を食べ終えたら、ブラッシング出来る子はブラッシングする。
それを終えたらポケモンセンターから出て少し離れた場所でミロカロスとメタグロスをボールから出し、みんなと同じようにご飯を与える。
その後はミロカロスをブラッシングし、メタグロスはシルクの布で体を磨く。

「……あ、そうだ」

メタグロスを磨きあげたらボールに戻し、ミロカロスに道中細々と作っていた虹色ポロックを与える。
うつくしさは最高値まで上がっている(はず)だし、ほかのコンディションを整えればこの先のコンテストでも通用するだろうと考える。

「次のジムで余裕があったら、技の構成とか精度とか見直して、コンテスト出てみようか」

「〜♪」

コンテストの単語で嬉しそうに笑ったミロカロスに私も笑い、ボールに戻して部屋に戻り、私もご飯を食べて就寝準備をする。

あとは布団に入るだけ、というところでホウエン地方のマップを机に広げ、これからを考える。

「とりあえずはミナモシティからトクサネシティへ向かってジムに挑戦。そこで余裕があればコンテストにも出て、その後はルネジムに挑戦。チャンピオンロードを抜けたら、そのままリーグに挑戦しよう。レベル上げの必要があれば適宜レベル上げ。コンテストはトクサネジムの後出場して、その後は旅がひと段落するまでお休みしよう」

うん、なんかいけそうな気がする。

そらをとぶ技マシンも貰えたし、トクサネジムの挑戦が終わったらミナモシティまで飛ぼう。

あれこれ考えをまとめていればキュウコンがすり寄って来た。この子の場合は甘えているのではなく、"早く寝ろ"と言っているのだろう。

「わかったよ。もう寝るから」

「キュゥ」

わかればいいと1つ頷き、彼は床に丸くなって寝る体制に入った。サーナイトとチルットはモンスターボールの中へ入っていった。

みんなを見届けて、私も広げていたマップを鞄にしまって布団に入る。

「……あと2つ」

あと2つバッジが揃えば、ようやく彼に挑む権利を掴める。

拳をぎゅっと握り、目を閉じてそのまま意識を飛ばす。





急がないと。
そうしないと、彼はどんどん先へ行ってしまう。
私は彼に置いていかれないよう、必死にもがいて走り続ける。
彼に追いついて隣に並べる日は、果たしてくるのだろうか。

 

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