10
10/62

カトレアちゃんとの約束の当日、ポケモンセンターを出てコンテスト会場へ向かえば、既に彼女と、その友人2人が待ってくれていた。

急いで駆け寄り、遅れたことを詫びる。

「遅くなってすみません、エリシアです。お忙しいなかありがとうございます」

今日はよろしくお願いします。と一礼すれば、カトレアちゃんや友人2人は笑った。

「相変わらず丁寧だね。そんなに畏まらなくていいのに」

紹介するね!との言葉に続き、友人2人を紹介してもらった。
1人は駆け出しのコーディネーターだというスミレちゃん。
もう1人はコーディネーター歴5年のベテランコーディネーター、ヒナタちゃん。

ちなみに、カトレアちゃんもコーディネーター歴5年らしい。

スミレちゃんとヒナタちゃんによろしくと挨拶を交わし、早速とコンテスト会場内のきのみブレンダーの前に移動する。

「スミレちゃんとエリシアちゃんは、コーディネーターとしてはお互い同期みたいなものだから、知り合っていて損はないと思ったんだ」

「私とカトレアも、同期みたいなもんだしね」

「そうそう!」

カトレアちゃんの言葉に、スミレちゃんと顔を見合わせて笑い合う。

「あ、でも私、コーディネーターっていうわけじゃなくて、ついこの間カトレアちゃんに、コンテストに招待されたというか…」

「あ、その放送観たよー。カトレアちゃんがあんなに興奮するなんて珍しいなって、印象的だったんだ」

スミレちゃんの言葉に照れて笑うカトレアちゃん。
かわいい。

「それに、専門のコーディネーターじゃなくても、コンテストに出場するなら同じだよ」

よろしくね、エリシアちゃん。と笑顔で言われ、私も笑顔になる。

「うん、よろしくね、スミレちゃん!」

「あ、スミレばっかりずるいー。私も私も。よろしくね、エリシアちゃん」

カトレアちゃんと話していたはずのヒナタちゃんが話に入ってきて、思わず笑ってしまう。

「よろしくね、ヒナタちゃん。いろいろ教えてね」

「まっかせてー!」

カトレアちゃんも話に交わり、4人で笑い合う。

なんかこう、すぐ友達になれるのっていいなぁ。


* * *


「つ、疲れた……」

「いや、もうちょっとさ、今日やめにしない…?」

「もう暫くきのみとポロックときのみブレンダーは見たくないかも…」

「流石に朝からぶっ通しでやるとしんどいねー」

きのみブレンダーの一角を4人で占領し、朝から日が暮れる今まで、お昼休憩以外ずっと回していれば、流石にみんなその場に座り込んで青ポロック大量生産は終わる。

上から私、ヒナタちゃん、スミレちゃん、カトレアちゃんと言葉を発し、今日はそのままお開きとなる。今日一日でだいぶ3人とも仲良くなり、お互い敬語や"ちゃん"付けが、いつの間にかなくなっていた。

みんな、"青ポロックは必要だけどこんなにはいらない"とのことだったので、余った分は私がすべて貰い、数個の紙袋いっぱいに青ポロックを抱える。

コンテスト会場を出て、今日のお礼にと3人を夕食に誘えば、みんな笑顔で頷いてくれた。

「今日はエリシアのために働いたからねー。好きなもの食べさせてもらおー」

「うんうん、好きなもの食べてー。お金ならあるよー」

私とヒナタの会話に、心配そうな顔のスミレにカトレアが笑う。

「エリシアはその辺のトレーナーより強いって話題だし、きっとバトルの賞金をいっぱい貰ってるよ」

「え、そうなの?」

きょとんとしたスミレちゃんに、私は頷く。

「もともと、私の専門はポケモンバトルなんだ。カトレアの言う"話題"はわからないけど、でもトレーナーを倒して賞金は貰ってる」

だから気にするなと言えば、ようやくスミレは笑顔で頷いてくれた。

「あ、エリシア!私あそこがいい!」

「いやそのレストラン、どう見ても高級なとこでしょ!遠慮なさすぎか!」

「ちぇー、やっぱダメかー」

「あ、エリシア、あそこは?」

「流石カトレア。普通のところを選んでくれてありがとう。もちろんいいよ」

このメンバーでいると、ヒナタがふざけるせいか、カトレアがまともな女の子に見える。初対面のあの印象が強すぎるからかな。

4人でファミリーレストランに入り、カトレアなら知っているかもと、婚約者のことを尋ねた。

「ねえカトレア、ポケモンバトルの話題でさ、"ダイゴ"っていう人の名前って挙がる?」

彼の名前を出した瞬間、カトレアは飲んでいたジュースを吹き出して私に食いついた。
いやせめて口の周りのジュースは拭いてよアイドル。

「だ、ダイゴって、あのダイゴさんでしょ!?」

「どのダイゴさんかはわからないけど、たぶんそのダイゴさん」

「いや、そこは詳細に聞こうよ」

「でも、私もダイゴさんって知ってる。最近、ホウエン地方の新しいチャンピオンになった人でしょ?」

スミレの言葉に今度は私がジュースを吹き出し、カトレアはそれだけじゃないと興奮し身を乗り出して話す。

「ダイゴさんといったらチャンピオンだけじゃなくて、実家があのデボン・コーポレーションよ!父親が社長で、御曹司なのよ御曹司!!」

カトレアが息巻いてヒナタとスミレに話している横で、私は頭を抱える。

そうだったのか。もう彼はチャンピオンになっていたのか。あれ、私まだジムバッジ2つしか持ってないんだけど、ペース的に大丈夫なのかこれ。旅に出るの遅すぎたかな。

などなど、頭の中で旅のスケジュールを立て直していれば、一通り説明が終わったらしいカトレアが私に不思議そうに首を傾げた。

「で、そのダイゴさんがどうしたの?なんかニュース見てないところからして、特に彼のファンでも無さそうだし」

「あぁ、実はさ、」

私の生まれもそこそこ良い家であること、
彼と婚約者であること、
そして彼が旅に出て、かれこれ数年は会っていないことを説明すれば、3人はレストラン中に響き渡るほど叫んだ。

「ちょ、声落として!!お店に迷惑!!」

私の注意に3人は口に手を当てて顔を見合わせ、普通の声量で口を開く。

「びっくりしたよー。たしかに、数日でポケナビを準備できるとことか、初対面の丁寧さとか、良いとこのお嬢様って感じだね」

カトレアの言葉にヒナタもスミレも頷く。

「でも、もう数年も会ってなくて、不安じゃないの?」

「たしかに不安だけど、婚約を続けるも解消するも、私の家からは何も言えないから」

ツワブキの家に全ての決定権があることを伝えれば、3人は複雑そうに顔を歪めた。

「金持ちも大変だねー。これでそのダイゴさんが変な奴だったら、私怒りそう」

エリシアは大事な友達だもん。とのヒナタの言葉に嬉しくなり顔が緩む。

「ありがとう。ヒナタもスミレもカトレアも、私の大事な友達だよ」

私の言葉に3人とも笑って頷き、ヒナタとスミレともポケナビの番号を交換した。

その後ご飯を食べてお開きとなり、ポケモンセンターの部屋に戻ってロコンとメタング、ヒンバスを出し、ヒンバスに今日一日かけて大量生産した青ポロックを差し出す。

「お腹いっぱいになるまで食べてね。嫌いな味だったらごめん」

試しに1つポロックをあげたが、特に好きでも嫌いでもなさそうだったため、とりあえず安心して大量に食べさせる。
ポロックのレベルとか滑らかさとかはわからないから、とりあえず色や形が綺麗なものを厳選して食べさせてはいるが、果たしてうつくしさが一定の値以上になるかが心配だ。
下手すれば、お腹はいっぱいだけど進化しない、なんてことも起こり得る。

もぐもぐと食べているヒンバスを横目に、3匹に明日から旅を再開することを伝える。

「青ポロックは大量生産出来たし、もし足りなかったとしても、この先のコンテスト会場で青ポロック作っていればヒンバスは進化できると思う。次のジムは電気だから出番は無さそうだし、ゆっくり成長していこうね」

最後はヒンバスを撫でながら言えば、彼女は喜ぶ。
ロコンとメタングも、ヒンバスが進化できそうなことに喜んでいるし、仲が良さそうで良かった。

寝る準備も終わらせてベッドに潜り込み、息を吐く。
今日は素敵な出会いがあったし、ダイゴさんの情報も聞けた。
…もうチャンピオンになったのはびっくりしたけど。

「…バトルもして、息抜きにコンテストにも出場しよう」

それにはロコンやメタングにもポロックをあげて魅力をあげなくては、と考えていれば、ロコンがベッドの中に入ってきてすり寄ってきた。

「どうしたの」

「きゅう」

もう休めと言われているようで、ロコンは一度鳴いた後、私を見ることなく小さく丸まって寝る態勢に入った。
そんな彼に顔が緩み、頭を撫でて私も寝ることにする。

「おやすみ、ロコン」

「きゅう」

明日も頑張ろう。

 

  back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -